第32話 根源を断つ

 どうしたらいいのか聞くが、反応が無い変わりに痛みと共に両手が熱くなっていた。

 ブラウズの斬撃から逃れた紫色の小鬼ゴブリンが君に毒を吐く。

 とっさに手で庇うと触れた毒が砂のように崩れて消えた。


 君はそれを見て鎮めるという言葉を理解する。

 少し怯んだ紫色の小鬼ゴブリンに対して、軽く触れた。

 すると触れた部分から砂化が広まって消えていった。


「ッ!? 小鬼ゴブリンは任せておけ! だから……」


 ブラウズが言い終える前に、白い渦から次々に湧いて出てくる紫色の小鬼ゴブリンに触れならがら君は走る。1体また1体と消えていく敵を見て、心が躍りそうになるのを必死に押し殺す。

 君は流れるように走り、砂の尾を引く流星のように白い渦へと向かう。


 そして、白い渦に辿り着いた君は片手を置いた。

 だが、耳鳴りのような甲高い音が抵抗するかのように白い渦が反発する。


「それでダメならここから逃げるぞ!」


 耳を塞ぎたくなる音に耐え、君は両手で渦の中に手を突き入れる。

 両腕に力を込めて、中央から引き裂くように引っ張った。

 白い渦は、音もなく消えた。


「よくやった! 後は俺が片付けておく!」


 ほどなくして残りの小鬼ゴブリンを斬り終えるとブラウズが感謝を伝えてきた。


「ありがとう。助かったよ、アッシュ。しかし、あの力は何だったんだ? 紫色の小鬼ゴブリンもよく分からないし、何より死体が残らない。一体どうなっているんだ」


 ブラウズは次々に疑問を口にするが、君は先程使った力のせいで立っているのがやっとだった。力を使い果たして動けない事を伝えると、ブラウズは無言で君を背負った。


「そうだな、疲れたよな。家に戻って休んだ後に話を聞かせてくれないか?」


 君は頷くと、ブラウズの大きな背中の中で静かに目を閉じる。

 本当の父親のような大きな背中に安心した君は眠りに付いた。

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