第3巻 第13章 (怒るなかれ)(一時的な断食は有益である)(旅について)

XIII

第3巻 第13章 (怒るなかれ)(劣悪な人は無作法に陥りやすい)(一時的な断食は有益である)(気難しい、うるさい人に成るなかれ)(他人を反面教師にして自身を反省しなさい)(旅について)



Once when some one was in a fury of indignation because he had bidden a passer-by good-day and the salutation was not returned, Socrates said:

かつて、ある人が、通りがかりの人に挨拶しても、挨拶し返してもらえなかったので、(偽の)義憤で怒った時に、次のようにソクラテスは話した。

"

It is enough to make one laugh!

あなたは、十分に、他人に笑いものにされてしまう!

If you met a man in a wretched condition of body, you would not fall into a rage;

あなたは、肉体が劣悪な状態の人に会っても、怒りに陥ったりしないだろう。

but because you stumble upon a poor soul somewhat boorishly disposed, you feel annoyed.

それにもかかわらず、あなたは、無作法に多少陥りやすい劣悪な魂の人に会うと、怒りを感じるというのだから。

"



To the remark of another who complained that he did not take his food with pleasure, he said:

別の、ある人が、「食事を取っても(味覚の)快楽を感じない」と訴えたのに対して、次のようにソクラテスは話した。

"Acumenus has a good prescription for that."

「(医者)アクメノスは、それに対する良い指導を知っています」

And when the other asked: "And what may that be?"

すると、他の人が「それは、どういった物ですか?」と尋ねたので、

"To stop eating," he said.

ソクラテスは「(一時的に一定期間、)食事をやめるのです」と話した。

"On the score of pleasure, economy, and health, total abstinence has much in its favour."

(次のようにソクラテスは話した。)「快楽、節約、健康という理由からの、(一時的な)完全な断食は、大いに有益である」



And when some one else lamented that "the drinking-water in his house was hot,"

また、他の、ある人が「私の家の飲用水は熱い」と嘆いた時に、

he replied:

次のようにソクラテスは応えた。

"Then when you want a warm bath you will not have to wait."

「それならば、あなたは、あたたかい湯が欲しい時に、(湯が沸くのを)待つ必要が無いだろう」

The Other.

次のように、その人は話した。

But for bathing purposes it is cold.

「入浴目的には、私の家の飲用水は冷たいのです」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Do you find that your domestics seem to mind drinking it or washing in it?

「あなたの家の者達は、あなたの家の飲用水を飲んだり、あなたの家の飲用水で(体を)洗ったりする事を嫌だと思っているように見受けられますか? あなたは分かりますか?」

The Other.

次のように、その人は話した。

Quite the reverse;

「全く逆なのです」

it is a constant marvel to me how contentedly they use it for either purpose.

「私の家の者達が、私の家の飲用水を、飲用と入浴用の両方の目的に、何とも満足そうに利用するのを、私は、いつも驚いて不思議に思います」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Which is hotter to the taste-- the water in your house or the hot spring in the temple of Asclepius?

「あなたの家の水と、医神アスクレピオスの神殿の温泉の、どちらが、口にするには、より熱いですか?」

The Other.

次のように、その人は話した。

The water in the temple of Asclepius.

「医神アスクレピオスの神殿の水のほうが、口にするには、より熱いです」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

And which is colder for bathing-- yours or the cold spring in the cave of Amphiaraus?

「では、あなたの家の水と、アムピアラオスの洞窟の冷泉の、どちらが、入浴するには、より冷たいですか?」

The Other.

次のように、その人は話した。

The water in the cave of Amphiaraus.

「アムピアラオスの洞窟の冷泉のほうが、入浴するには、より冷たいです」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Then please to observe:

「では、どうか、次の事に、注意して気づいて認めてください」

if you do not take care, they will set you down as harder to please than a domestic servant or an invalid.

「あなたは、気をつけないと、あなたの家の者達に『家の使用人よりも、また、病人よりも、気難しくて、うるさい』と非難されるだろう」



A man had administered a severe whipping to the slave in attendance on him, and when Socrates asked:

ある人が、自分に付き添っていた奴隷を、激しくムチで打っていたので、次のようにソクラテスは尋ねた。

"Why he was so wroth with his own serving-man?"

「なぜ、あの人は、自分の召し使いに、とても怒っているのですか?」

excused himself on the ground that "the fellow was a lazy, gourmandising, good-for-nothing dolt-- fonder of money than of work."

その人は「この奴隷の奴は、怠惰であるし、大食いであるし、何の役にも立たない馬鹿であるし、仕事よりも金銭が大好きである」という口実で自分の言い訳をした。

To which Socrates:

その言葉に対して、次のようにソクラテスは話した。

"Did it ever strike you to consider which of the two in that case the more deserves a whipping-- the master or the man?"

「そういう理由の場合、『主人である、あなたと、その召使いの人の、二人のうち、どちらがムチで打たれるのに、よりふさわしいか?』という考えが、今まで、あなたを襲いませんでしたか?」



When some one was apprehending the journey to Olympia, "Why are you afraid of the long distance?" he asked.

また、ある人がオリュンピアへの旅について心配していると、次のようにソクラテスは尋ねた。「なぜ距離が長いのを心配しているのですか?」

"

Here at home you spend nearly all your day in taking walks.

ここに居ても、家に居ても、あなたは、一日中、歩くのに近い、過ごし方をします。

Well, on your road to Olympia you will take a walk and breakfast, and then you will take another walk and dine, and go to bed.

ええ、オリュンピアへの途中、あなたは、歩き、その日の初めての食事を取り、さらに歩き、食事を取り、寝るでしょう。

Do you not see, if you take and tack together five or six days' length of walks, and stretch them out in one long line, it will soon reach from Athens to Olympia?

『5日間か6日間の歩行距離を結合して1つの長い線として伸ばせば、すぐにアテナイからオリュンピアへ到達するだろう』と思いませんか?

I would recommend you, however, to set off a day too soon rather than a day too late.

私ソクラテスは、あなたに、どの方法でも、1日でも出発が遅過ぎるよりも、むしろ、1日でも余分に早く出発する事を勧めます。

To be forced to lengthen the day's journey beyond a reasonable amount may well be a nuisance;

適正な量よりも1日の行程を無理に長くする必要が有るのは、(旅の)妨げに十分に成ってしまうかもしれません。

but to take one day's journey beyond what is necessary is pure relaxation.

けれども、必要(な日数)よりも1日の行程が(多く余分に)かかっても、(旅の日数の制限が)全く緩和するだけです。

Make haste to start, I say, and not while on the road.

実に、急いで出発しなさい。また、途中で、急ぐなかれ。

"



When some one else remarked "he was utterly prostrated after a long journey,"

また、他の、ある人が、「私は、長旅の後で完全に疲れ果てています」と話すと、

Socrates asked him:

次のように、ソクラテスは、その人に尋ねた。

"Had he had any baggage to carry?"

「あなたには、運ぶ必要が有る手荷物が有ったのですか?」

"Not I," replied the complainer; "only my cloak."

次のように、その愚痴をこぼした人は応えた。「いいえ」「自分のマントだけです」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Were you travelling alone, or was your man-servant with you?

「あなたは独りで旅をしたのですか? それとも、あなたと共に男性の使用人もいましたか?」

He.

次のように、その人は話した。

Yes, I had my man.

「はい。私には、男性の使用人がいました」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Empty-handed, or had he something to carry?

「男性の使用人は手ぶらでしたか? それとも、男性の使用人は運ぶ必要が有る何かを持っていましたか?」

He.

次のように、その人は話した。

Of course;

「もちろん」

carrying my rugs and other baggage.

「男性の使用人は、私の上掛けと、他の手荷物を持っていました」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

And how did he come off on the journey?

「では、男性の使用人は、旅によって、結果として、どのような様子に成りましたか?」

He.

次のように、その人は話した。

Better than I did myself, I take it.

「私が思うに、私よりも、男性の使用人は、より元気でした」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Well, but now suppose you had had to carry his baggage, what would your condition have been like?

「ええ、では、仮に、あなたが、(実際は男性の使用人が運んだ)自分の手荷物を運ぶ必要が有ったら、あなたの様子は、どのように成ったであろうか?」

He.

次のように、その人は話した。

Sorry enough, I can tell you;

「『とても大変であっただろう』と言えます」

or rather, I could not have carried it at all.

「と言うよりは、私では全く手荷物を運ぶ事ができなかったであろう」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

What a confession!

「何て自認だ!」

Fancy being capable of so much less toil than a poor slave boy!

「まさか、貧弱な奴隷の少年には、とても言うにも及ばず、『あなたは労苦して歩く事ができない』だって!」

Does that sound like the perfection of athletic training?

「あなたの、その発言は、競技選手にふさわしい鍛錬による完全な人の発言として適いますか? いいえ! あなたは、競技選手にふさわしい鍛錬による完全な人ではない!」

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