ついてきた何かと半泣きドライブ

 夏のお盆の後ぐらいだったと思う。


 所要で病院に寄ってから、岐阜にある菩提寺で墓参りをして、奥美濃か奥飛騨を掠めるような山道ドライブを楽しんで帰る予定を立てていた。


 病院を出て、当時ドはまりしていたTWO-MIXのCDをかけて走り出したが、大通りに向かう狭い路地を走行中に、突然CDの音量が小さくなった。


 何か調子が悪いのだろうか?


 ボリュームを操作するが反応が無い。路肩に止めてエンジンをON-OFFすると、CDは再生を始める。


 一時的な不具合だろう。そう思って気にせず走り出すと、また音量が小さく……いや消えた。その代わり、ガーガーピーピーとした、耳障りなノイズが入る。


「なんだ……これ……」


 オーディオとエンジンON-OFFを数回繰り返す。


 CDの入れ替えもしたが何も変わらない。楽曲の音が聞こえたり聞こえなかったり、不自然なスピーカーノイズは酷いままだ。


 もちろんカーラジオも試した。結果は何も変わらなかった。


 車の調子が悪いのか、オーディオの不具合か、それとも別の要因なのか。


 スピーカー以外、クルマが走る事についてはなんの障害も無さそうなので、そのまま走り続けた。


 不安定な音量。接触不良や違法電波とかではない、謎のノイズ。


 もしかして、何か連れてきてしまったのか? と思い至った頃には、交通量の多い市内の41号線を北上している時だった。


 もしそうだとしても、私はなにもできない。


 もしもだったら、突然ブレーキが効かなくなるとか、アクセルが戻らないとか起きるかもしれない。


 創造力が不安を煽り、心の中は半泣き状態で、いつも以上に安全運転を心がけながら庄内川を超えたその時、突然ノイズが消えてCDの音楽が大音量で鳴りだした。

 

 あまりにも突然の事で、私は心臓が止まるかと思った。


 ボリュームを操作して適当な音量に調整する。


 その時にはもう、煩いノイズは跡形もなく消え去り、高山みなみの歌声以外は何も聞こえなかった。


 あれは一体、なんだったのだろう・・・


 私は本当に、病院からを連れてきてしまったのだろうか?


 川を越えるって、アレ的に何か意味があるのだろうか?


 その後も何度か見舞いで病院を訪れていたが、この現象はそれっきりで、妹にクルマを譲ったその後も、同じ現象は一度も起きてはいない。



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