第3話 私の役目

「勇者達が暴走した際に止めてもらいたい」

「勇者達が暴走?」

「スムースは勇者に過剰なスキルと本来与えるべきでないサブスキルを与えてしまいました」

スキルにサブスキルねぇ…


「スキルは我々が与えられる力で主に魔法と呼ばれるもの、サブスキルは本来生まれ持つ力で戦闘に役立つものが多い。他にも対象の詳細情報を知る鑑定や召喚者に送る言語に関する翻訳と言ったユニークスキルもある」

思考した物を勝手に補足してくれるのはある意味楽だ


「我々の管理する世界に勇者召喚する際、神々のギフトとして与えるのは2属性の魔法スキル、翻訳、勇者の称号、サブスキルとして肉体強化と精神耐性だが、今回スムースが与えたのは4属性の魔法スキル、翻訳、勇者の称号、サブスキルとして肉体強化と魔力強化、精神耐性、状態異常耐性、狂戦士、傲慢だ」

傲慢って…そんなスキル何で作ったのよ?

思わず突っ込んでいた


「勇者の称号を持つ者は体力を表すHPと魔力を表すMPの上限が通常であれば500に引き上げられるが、今回は1000まで引き上げられている」

「一般人の上限はいずれも100なのにね」

10倍?ありえない

「そう。あり得ない力だ。スムースは召喚が失敗して動揺したために与えてしまったと言っていた。そして…」

なぜかそこで言葉を濁した


「3人の女性がミリア殿の召喚に失敗したと知った途端、腹を抱えて笑ったそうだ」

あ~あの子たちならそうなるわね

弱者を見つけて痛めつけるのが楽しみな最低人間だもの

「そのようだね。その時になって初めてスムースは恐ろしくなった。元々心根の歪んだ3人に勇者として特別な力を与え、その中に歪んだ心を増長する狂戦士と傲慢のサブスキルがある。その結果がどうなるか想像するのは容易い」

「なるほど?そうなって初めて自分が召喚に失敗したと報告して私は破滅の世界からここに回収されたってこと?」

ようやく時系列で背景がつかめた


この状態で対策を打つならあぶれた魂である私をストッパーとして放り込むしかないってことね

そのために7人の愛し子として、勇者以上のスキルやなんやらを詰め込んでやろうってあたりか

「…そう言われると反論の余地もない。実際その通りの事を我々は考えている」

心底申し訳なさそうな顔に苦笑する


「分かりました。どこまでできるかは分からないけど引き受けます」

「本当か?」

「本当にいいの?」

「どうせ元の世界に家族や親戚がいるわけでもないし…その代わりパルシノンに関する知識はきちんと刷り込んで」

「勿論だ」

「生活に困らないだけのものは当然として、他にも我々の与えられるものは全て与えよう」

「そうね。倉庫にあるアイテムなんかも渡しておくわ」

それは過剰すぎるのでは?

そう思うも神々は止まらない


「パルシノンに送ってしばらくは我々も側にいるとしよう。スキルの使い方なども教えられるだろう」

「容姿に希望はある?」

「別に。パルシノンに溶け込める容姿ならそれでいいわ。勇者に私だとわからなければいいだけだから」

パルシノンの人々の容姿がどんなものかさえ分からないのでお任せすることにする


聞きたいことはいっぱいあるけど暫く側にいてくれるならその時に聞けばいいか

そう思っていると急激な眠気が襲ってきた

真っ白な何もない世界に溺れる様に意識を手放した

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