第4話 乗り越えられると思ったんだ、君がいてくれるなら その10
できるなら、こんな俺の過去は、優花には知られずにいたかった。俺の過去を知られる事は、俺の不完全さや醜さを知られる事と同じだから。
だけど、もう、ここまで来てしまった。
機内の窓からうっすら見えるエメラルドグリーンの海が、間も無く目的地に着くことを教えてくれる。周囲の乗客のほとんどは目が覚めているのか、各々の朝支度を始めている。
そんな中で、優花はまだぐっすりと夢の中。俺の方を向いて、幸せそうな笑みを浮かべていた。
本当なら、このまま眠っていて欲しい。だけど、そんな事は許されない。
いつか、必ず時が来る。目覚めさせなくてはいけない時間が。
選択を、受け入れなくてはいけない時間が。
ねえ、優花。もしも、もしも……。真実を君が知って、その上でもし俺を選んでくれるなら……。俺はきっと、乗り越えられると思ったんだ。過去を。
だから、1度は、ちゃんと覚悟をしたんだ。
情けない男だと、呆れるだろうか。嫌いになって、しまうだろうか。
それでもし、君が、こんなダメな俺を受け入れてくれるなら。
選んでくれるなら。君がいてくれるなら。
俺は……ちゃんと、この世界で今度こそ……生きていける気がするんだ。
そんな情けないことを思いながら、刻々と迫り来る着陸のために、優花を起こした。
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