真面目クールな顔で性的発言を続ける義理のお姉ちゃん

「どうして触ってこないの。私何か変なことした?」

 大真面目な顔でそう問いかけてくるのは、三カ月前に親の再婚で家にやってきた義理の姉。学校では誰とも一言も口を利かない孤高の一匹狼として有名だ。コミュニケーション以外は何でもできるとされ、芸術にも武道にも勉強にも超一流の成績を収めているらしい。顔もとっても可愛らしい。滅多に聞けないその声も透き通るように美しいのだ。僕も学校ではそもそも話しかけることすら困難だったのだけど。


 今、その義姉は全裸のまま僕のベッドの上で横になっている。


「……変なことは、してると思う、思います」

 混乱したまま、僕はそう答えた。眼前の少女の、ありとあらゆる隠されるべき場所が惜しげもなく晒されている。これがそういう漫画とか動画とかであれば謎の光なりモザイクなりが仕事をするのかもしれないけど、現実にはそんな都合のいいものはない。

「そう。でも別に大丈夫。ここには私と君しかいない。だから私の意見が50%を占める。四捨五入すれば100%。満場一致」

 本当に自分の発言に疑いを持っていない様子で首をかしげている義姉。少し寒いのか、僕の毛布を抱き枕のようにして抱きしめている。身体のありとあらゆる部位が毛布に触れている。僕は今後この毛布を洗濯しないことをひっそりと誓った。

「そもそも、君は私の身体に興味があるはず。以前から視線は感じていた」

「……え」

「違った?胸のサイズを話していたと記憶している。ちなみに君が予想していたDカップというのは間違い。正解はC。期待に沿えなかったのなら申し訳ない」

 唇を少し尖らせて視線を逸らす。

 この人が拗ねてるの初めて見た。

「すみませんでした、そういうの本当に失礼ですよねごめんなさい」

「謝る必要はない。私も、君の服の下の想像はよくしていた。今もしている」

「……???」

「だから、仲間。おかしなことではない。私も、君も。でも、今は少し不公平。私は情報を開示したのに、君は隠したまま。これは非常に不公平」

 不公平も何もそっちが勝手に見せてきたんじゃん、とは言えなかった。少し顔を赤らめているその表情があまりにも可愛らしくて、てか単純に好きになってしまって、上手く動けない。

「私は、コミュニケーションが苦手。とりわけ、君のことが好きだから、上手に距離感が選べない。多分今も、失敗していると思う」

 彼女は申し訳なさそうに眉根を寄せた。

「でも、同じ家に住むのなら我慢しているよりも、健全だと考えた。いつか強引に襲ってしまうより、今、合意の元レイプしたい……だめ?いい?」

 そして蕩けた声を吐息交じりに呟いてくる。てかマジで何言ってるんだこの人。合意の元でってそれはレイプなのか、とか考えてたら全裸のまま僕にすり寄ってきた。上気した肌は温かい。むしろ熱い。

「えっと、ちょっと待って落ち着いて……こういうのってほら、付き合ってる人とか――」

「じゃあ今、付き合って。私と。結婚を前提に付き合って」

 息がかかるくらいの距離まで猫のようにすり寄ってくる。首筋に匂いを擦り付けるような振る舞いに心臓が跳ねる。アクアブルーの髪の毛が擽ったい。

「そんなの……急には」

「私は構わない。ずっと前から私は君を見ていた。君も私のことを気にしていた。長年想い合っていた仲といっても過言ではない」

「絶対過言だと思うんだけど……君はそれでいいの?」

「いい。大丈夫。構わない。むしろ望むところ。……これ以上焦らされると、風邪をひいてしまう。人肌で暖を取らざるを得なくなる」

「服を着るのは」

「できない。服の着方を忘れてしまった。脱ぎ方と脱がせ方なら理解している。任せてほしい」

「何も任せられな……っ、え、ほんとに……?何かあったらどうするの……」

「問題ない。責任は私がとる。こう見えて私は既に貯金が4000万ある。大企業の株式もたくさん所有してる。配当だけで一生分のお金は用意できる。大丈夫」

 言うが早いか、インターネットバンキングのページを見せてくる。そこには僕が見たこともないような桁数の残高が並んでいる。これ本物?

「だから、私と付き合ってほしい。君のこと、好きだから。だめ?」

「だめとかそういう問題じゃなくて……」

「奥手すぎ。じゃあ質問を変える。私と付き合うのは嫌?仲良くなりたいと思っていても、上手に距離を測れない。こんな私と付き合うのが嫌なら、諦める」

 そう言われると。

「そんなことは、ないよ」

 嫌だという風には言えなくて。何を考えているか分からない変わった人ではあるけれど、決して僕を揶揄っている素振りはない。単純に表現が0か100かしかないんだろう。

「じゃあこれで、恋人、成立」

「あ……うん、よろしくね……?」

「うん。よろしく。じゃあ、もういい?我慢できないから。毎日君のこと考えて処理してたから、限界」

 彼女はそう口にしながら、瞬く間に僕を押し倒してマウントポジションを取る。彼女の股が乗っている下腹部の辺りには、熱くじっとりと濡れた感触が伝わってきた。

「濡れ始めてから時間が経った、寒いから、早く温めてほしい」

 信じられない手際で服を脱がせていく。ささくれひとつない綺麗な指先がへその辺りを舐るように撫でた。これ性別が逆だったら余裕で犯罪が成立してると思う。合意の元のレイプって本当にそのままの意味だった。

「やっと。すごく待った。もういい?」

「あ、ちょっ――」


 彼女にとって今の言葉は質問ではなく、確認だったと気づいたのはその直後。


「………挿入はいった。大丈夫。明日は休み。明日のことは心配いらない。今私を愛することだけ、考えて」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る