家に勝手に上がり込んで半裸でアイス食べてる幼馴染

「ん~おかえり~。アイス貰ってる。ってか今日暑かったね~アンタもさっさと風呂入っちゃいなよ。私の残り湯だよ、堪能しなね」

「うわぁびっくりした!」

 真夏。金曜日。週末。セミの声を全身で浴びながら、僕は這う這うの体で家にたどり着いたのだが。

 リビングのドアを開けるとぱんつ一枚の幼馴染の少女がソファに寝転がってアイスを咥えていた。ぱんつは黒だった。1箱8本入りのソーダ味棒アイス。昔からこいつのお気に入りだった。

 昔は最後の一本を取り合って喧嘩していた記憶がある。いつもこいつが5本食べていて、俺は3本しか食べられなかった。別に今更怒ったりはしないけど。

「服、着なよ。僕は男だよ」

「…別に、気にしないし」

「僕が!気にするんだよ!思春期の男子高校生の性欲舐めてんのか!」

 肩で息をしながらツッコミを入れる。なんで僕が指摘しなくちゃいけないんだ。

「大体身体冷えるだろ。女の子は身体冷やしちゃだめだよ」

「急に優しいこと言うと気持ち悪いからどうにかならない?なんか恥ずかしくなってきたんだけど」

「わー-!起き上がるな、見えるだろ!」

 両手で僕は顔面を覆った。

「指の隙間ガバガバすぎない?薄目にするとかの方がもうちょっと誤魔化しがきくと思うんだけど。ってか今更じゃん。私の身体、アンタが私の次くらいに見てるんだしいい加減慣れたらどうなの」

 立ち上がった幼馴染はスレンダーな身体を隠そうともせずに起き上がる。うっすらと肋骨の浮いた体のラインは無駄がない。小さいけれどそれでも膨らんだ胸が惜しげもなく晒されている。胸の先端は綺麗な桜色が上を向いている。綺麗だ。マジで羞恥心どうなってんだコイツ。

「…慣れるとかは無理」

「なんで」

「僕、子どものころから言ってるけどさ、流石にこの年齢にもなってくるといろいろ意識するの!君はしないかもしれないけど、僕はするの!」

 単純に半ばキレながら『あなたを性的な目で見ています』と何度も伝えている愚かな男子高校生と化してしまったが何度でも言わねばなるまい。

 顔が可愛い。目は大きくて睫毛は長い。藤色のショートカット。指先まで細くて綺麗な色白な女の子。ぶっちゃけると小学生のころから好き。

 そんな子が目の前で何年も無防備な姿晒し続けているものだから、今日こそはキレてやらねばなるまい。

「君と違って僕は性的経験なんてない、童貞。異性に対して免疫とかない。特に君みたいに可愛くて好みの女の子とかたとえ幼馴染だろうがなんだろうが慣れないんだ、いい加減僕にこれ以上の我慢を強いるのはやめてくれ!」

 切なる願いだった。

 その言葉を聞いた幼馴染は、小さく息を吸ってこう答えた。

「なんで我慢とか、するわけ?意味わかんないんだけど……」

 蚊の鳴くような声だった。

「ほら、今週ってさ。あれでしょ。おばさんたちが海外旅行に行くからって言ってたじゃん。家にはアンタ一人だけだって」

「う、うん。結婚20周年とかなんかで夫婦で旅行に…って言ってた。だから来週の日曜日まで帰ってこないよ」

「私、おばさんから『息子を頼むわねぇ』って言われて鍵貰ってる。もうこの鍵あげるって言われちゃった。いつでも来ていいんだって。二人で仲良く過ごしといてって。何が言いたいか分かる?」

 顔を心なしか赤く染めながら、幼馴染は近寄ってくる。一歩一歩近づくたびに心臓の音がうるさくなるのが伝わった。

「何が、言いたいの」

 彼女はため息をついて「女の子に言わせる気…?」と少し苛立ったように呟いて…僕に抱き付いてきた。自分の使っているものと同じシャンプーのはずなのに、妙にいい匂いに感じる。この子から香っているからだろうか。

「…今だったら、誰も怒んないよ。私に何しても。おばさんもおじさんも帰ってこないし、私も学校終わったらずっとアンタの家にいる」

「耳、真っ赤…」

「うっさい!」

 顔を僕の胸に押し付けながら幼馴染は僕の肩を拳で叩いた。

「でも…ほら、そういうのって付き合ってる間柄とかじゃないと…良くないと思う。この際云うけど僕は君のことがずっと昔から好きで――」

「アンタほんとばかじゃないの!?私も同じに決まってるでしょ!?」

「うわあ怒らないで…」

 涙目で僕を見上げる彼女はより一層声を大きくして言った。

「大体、なんで私が誰の前でもこんな格好するわけないでしょ!アンタの前だから、やってんの!意識させてるの!いい加減気づけばか!!!」

 そのまま彼女は背伸びして僕の唇を塞いでくる。柔らかくて瑞々しい、脳の奥がしびれるような感覚。この一瞬が終わらなければいいのに、とか考えていたら、口をこじ開けるようにして彼女の舌が入ってくる。

 びりびり、と痺れるような心地。濡れた体温が淫らな音を立てながら咥内で絡み合っている。


「はぁ…っ、ん……はぁ…」


 喘ぐような吐息を漏らしながら彼女はゆっくりと離れていく。名残惜しむように僕たちの口の間で銀色が糸を引いた。


「…もう、言いたいこと、分かるでしょ。場所とかやり方とか、私もよくわかんないけど…アンタが好きなようにしていいから。何年も焦らされたんだからもう我慢できない、はやく、しよ…?」

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