第2話

 ここが『ナナ』の『ゆめつくり』部屋だ、ってことは、さっき言ったよね。9人のユメツクリがいるってことも。

 じゃあまず、彼らを紹介しようか。


 僕とユメミに手伝えっ!って言ったあの子は、記憶の整理担当のタム。

 今ちょっとしたトラブルで、『ナナ』の記憶がとっ散らかっちゃってるんだよ。いつもは、この棚にピシッと綺麗に整理されてるんだけど。

 タムがいつもしっかり整理してるからね。

 あっ、そうそう。これ。この、丸いやつ。これ全部、『ナナ』の記憶。ちょっと、覗いてみて。ほら、これは『ナナ』が友達とケンカした記憶だ…泣いちゃってるよ、『ナナ』。

 ・・・・あれ?ユメミには見えない?それは残念。

 もしかしたらこの記憶はもうすぐ、廃棄されちゃうかもね。

 知ってる?

 人間の記憶って、夢を見るたびに整理されているんだよ、記憶の整理担当のユメツクリによって。

 だからここではね、タムが記憶の整理と廃棄を担当しているんだ。


 向こうでタムにちょっかい出してキレられてるヤツは、イケメン担当のノイ。

 ノイはね、『ナナ』好みのイケメンなら、どんなイケメンにも姿を変えられるし、いくらでも分身できるんだよ。

 夢はね、基本的に人間の記憶から作られているんだけど、それだけじゃないのは、ユメミも分かるよね?

 理想の王子様が出てきたりすること、あるでしょ?それも、何人も。

 もちろん、実在する好きな人が出てくることもあるだろうけど。

 それをね、『ナナ』の夢ではノイがやってるってわけ。

 ま、たまに『そこらを歩いている見ず知らずのおじさん』みたいな、エキストラもやるけどね。


 で、そこをブラブラ歩いてる女の子は、シキ。

 シキは、『ナナ』の友達なら誰にでも変身できるし、分身もできる。

 遠くに行っちゃって、絶対会えない友達と、夢で会えたりすること、ない?

 もちろん、いつも会っている友達が出てくることだって、あるよね?

 それをね、『ナナ』の夢ではシキがやってるんだ。

 だから、キミを見たときてっきり、シキが変身してるものだとばかり思ったんだよ。だってまさか、本人がココにいるとは思わないからさ…

 そうそう、シキはノイより変身能力が高くてね。

 ほとんど誰にでも変身ができるんだ。

 でも、ノイが一応イケメン担当だから、シキはそれ以外を全部担当してくれているんだよ。


 タムの隣で記憶をカートに入れてる子は、イラ。

 今日の『ナナ』の夢に使う記憶を選んでるんだよ。

 イラのセンスは結構いいと思うんだけど、最近スランプなのかな?

 最近『ナナ』の夢見ゆめみが悪くて…いやいや、キミのことじゃなくて、あまりイイ夢が見られてないってこと。だから僕が様子を見に来たわけなんだけど。


 それからね、イラがチョイスした記憶を元にして、あそこのマシンの前に座ってる女の子、ユリが構成を考えて話を組み立てて。

 となりに座ってニコニコしてる女の子、メアが効果音をつけて。


 そうそう。

 メアの足元にいるモケモケ、あれはね、ツンていうんだよ。

 ツンは、どんな動物にでもなれるんだ。もちろん、分身も可能。

 この間なんて、でっかいゾウになって、隊列をなしていたっけ。


 部屋の奥が、舞台になってるでしょ?

『ナナ』がね、眠りにつくと、『ナナ』の心がこの舞台にやってくるんだよ。

 それで、みんなで舞台で演じるんだ。ユリが考えたその日の物語を。

 その時の照明担当が、今あそこで居眠りしてる男の子、クス。


 で、最後に。

 忘れちゃいけないタイムキーパーの、リマ。あの、大っきい砂時計抱えてる男の子。

 ・・・・僕も正直、あれでどうやって時間管理してるか不思議なんだけど。


 これでだいたい、わかったかな?


 この9人のユメツクリが、ここで『ナナ』の夢を作っているんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る