第18話 ペロル、領主様と面会する

ペロルが自分の特異性に気づいていないうちに領主様に会わせることにしたマクスウェルはペロルを連れて館へと向かった。外には馬車が止まっており、それに乗り込むだけで館までは一直線だ。


何の問題もなく館までたどり着くと、部屋の一室で待たされた。流石にすぐに会うとはいかなかったためだ。ペロルは久しぶりにスキルの項目を眺めることで時間を潰していた。


三時間程経った頃、ようやく呼ばれた。ペロルは騎士団長の後に続き歩いていく。到着したのは謁見の間だった。


「ペロル君は僕と同じように行動してくれ。その後は色々質問されると思うけれどそれにこたえてくれたらいいから」


ペロルが頷くと、謁見の間の扉は開かれた。


「騎士団長、マクスウェル。客人、ペロル。中に入られよ」


その言葉がかけられた後、騎士団長は前へ進んだのでペロルは後に続いた。中に入ると豪華な洋服を身にまとったデブと化粧を厚塗りしたブスが豪華な椅子に座ってこちらを見ていた。


早速逃げ出したくなったペロルであったが既に出口は塞がれている。慌てて騎士団長と同じように行動した。


「例の地図を書いた者、ペロルを連れてまいりました」


「ほう。そのように若い物が地図を書いたのか。其方貴族の者ではないな?」


騎士団長がこちらを見て何やら呟いている。


「質問に答えて」


ああ、と思いペロルは領主様の質問に答えた。


「はい。私は隣の国である。オランド聖王国で生まれた孤児です。断じて貴族ではありません」


「これほどの地図がかけながら何故国を出たのだ?」


「私の職業は走者と言うものでして、オランド聖王国にはそのような職はなく生きていけないと思ったので国を出ました」


ペロルはかいつまんで話したが、オランド聖王国が洗礼で与えられた職業以外の職には就けないことは有名な話である。


「そうか。では何故このように精密な地図を書けるのだ?」


「私にはオートマッピングというスキルがありまして、行った先々の地形が私には見えるのです。それを映したにすぎません」


「ペロルよ。私に仕える気はないか?」


デブ、ではなく領主様の顔は真剣な表情になっていた。


「ありません」


流石は空気の読めない男である。騎士団長は正気を疑う目でペロルのことを見ていたが心のどこかではこうなることを察していた。


返事を聞いた領主様は大声で笑いだした。ブス、ではなく領主婦人はイライラしていたが。


「ペロルよ。其方は何を望む?」


「お金も手に入ったので商会でも立ち上げようかと思います。物を売るのではなく運ぶ商会を」


「そうか。それは構わん。だが地図に関しては取り扱いを禁ずる。そしてデュロット周辺の街の地図が更新され次第、兵長へ届けること。この二つを守る限り其方の商会の後ろ盾となろう」


なんだかいい方向に話しが進んだなぁ程度にしか考えていないペロルであった。

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