第19話 さぁ楽しみましょう?
その日の夜私達は動きやすい服に着替え資料にあった通りへと来ていた。ふと空を見てみると空には三日月が浮かんでいた。
「……あんなに欠けているのね」
私はぽつりと呟き小さく息を吐いた。あの様子だと明日にでも月は完全に隠れてしまう。すると近くの路地から微かな物音と誰かが叫ぶ声が響いた。私とリートは頷き声が聞こえた方向へ足を進めた。そこに居たのは血だらけになった吸血鬼と地面に倒れている人間だった。
「そこの混血の方。貴方がここ最近この街を荒らしている方で間違いないかしら」
「あ"ぁ?……てめぇ純血かぁ?匂いがそうだもんなぁ?」
「お嬢様。お下がりください。こんな醜いものと話す必要はありません」
リートの言葉を聞いて私はため息を吐きカツンとヒールを鳴らして1歩前へと出た。リートは焦った声で「お嬢様!」と声をかけてきたが私はそれを無視して混血の彼へと近づいた。
「そう。私はアステール。アステール=フローレス。貴方の言う純血の吸血鬼よ。」
「純血サマが何しにここに来たんだぁ?あぁ狩りか……こいつで良ければ食わせてやるよ」
「えぇそうね……狩りで間違いないわよ。でも目当ては人間じゃないわ……貴方達よ」
「は?何言ってんだお前。こっちにはこの人数が居るんだよ!」 彼がそう叫んだ後私を取り囲むように数人の混血種が出てきた。
「お嬢様……!」
「1、2、3……4人ね。リートこの人数なら私にも対処出来るわ。貴方は見てなさい」
「……畏まりました。」
私は小さく笑みを浮かべ隠していた短剣を取り出した。その短剣に混血の吸血鬼達は一瞬たじろいだ。私はそれを見逃さず出来る限り急所は外して取り囲んでいた混血種を切りつけた。
「……残りは貴方だけのようね。さぁ楽しみましょう?」
「てめぇっ……!」
「……混血種は純血種に敵わない。それくらい覚えておきなさい愚か者。」
私はそう告げて彼を切りつけた。まだ月が完全に無くなっていなくて運が良かった。私は短剣を振り血を落とせばリートに「教会へ連絡して。混血を捕まえたとね」と告げた。リートは少し安心した表情を浮かべながら「畏まりました」と一礼し教会へ連絡をした。
「お嬢様。本当にお怪我は無いのですね?」
「えぇ。でも……服が汚れたわ。この服お気に入りだったのに」
「……屋敷に帰ってから洗いましょう。教会の連中が来るまでは我慢を」
「分かってるわ。」
私はそう告げてもう一度空を見上げた。かなり欠けている三日月は妖しく光り私たちを淡く照らしていた。
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