第18話 初めにする事は……


赤い神父……ローアルから貰った資料を手に私はリートの入れた紅茶を1口飲み小さな息を吐いた。


「それでお嬢様。この犯人の検討はお付きで?」


「そうね……ある程度なら。あら、そういえばもうすぐ新月ね」


「新月……混血種の吸血衝動……」


bonne réponse正解よ


「ではこの資料に載っているのは……」


「近づく新月の力に衝動をコントロール出来なかったみたいね。恐らくまだこの被害は増えるでしょうね。」


「えぇ。ですが……」


リートはその先の言葉を告げなかった。新月の日。それが純血種にとっても危険な日であることを分かっているから。【nouvelle lune新月の日】それは混血種が唯一私達純血種に勝つかもしれない力を手に入れる日。そして混血種の吸血衝動が最も強まる日でもある。



「リート。私は平気よ。混血種なんかにやられる程私は弱くはないわ。」


「ですがお嬢様……!」


「これは決まりよ。明日にでも夜の街に出るわ。犯人の混血は恐らく単独行動じゃない。何匹かの群れで行動している。この意味がわかる?」


「……えぇ。放っておけば勘違いした人間が我々の屋敷に何をしてくるか分からない。」


「そう。それに私たちの食事もままならないわ。」


「……畏まりました。では動くのは今日からにしましょう」


「は……今日!?」


「えぇ。まず初めにする事は……」


リートはそう告げたあと一瞬の間を置いてすぐに口を開き「相手の動きを追跡する事です」と告げてきた。私はその言葉に瞬きをしたあと笑みを浮かべ「分かったわ。今夜早速出るわ。リート準備をしておきなさい。狩りには準備が必要だものね」と告げ、すっかり冷えた紅茶をもう一口喉へと流した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る