新しい生活3*改稿

 四月八日


 地獄だったランニングも一日が経過する度に、アフロディーテが言うていた通り、慣れが生じた。




 当然、僕の相棒アフロディーテが楽な状態を維持させることはありえない。




 よーちゃん達と学院へ足を運んだ後、実践棟の二階でいつものように、りっちゃん先生と錘をつけて階段ダッシュへ行こうとした時だった。




『錘の特訓は、もうよいのじゃ。次は気配察知について学ぶのじゃ。合格のラインは目を瞑ったまま、全ての攻撃をかわせるようになるのじゃ』

 ——こ、こらこら、そんなドラゴンポーズみたいなことできるわけないでしょ

『誰も、かのZ戦士のように身勝手の我儘を習得しろなんて言うてないのじゃ。つくづく人間は、実践をするよりも理論を知りたがる生き物なのじゃ』

 ——人間で悪かったね!!




「りっちゃん先生ー!!次は、気配察知の練習をやるらしいよー!!」




 今にも階段の一段目を踏もうとする彼女を止めるために大きな声で呼び止める。




「気配察知…ですか?」

「うん。気配察知」

「奇跡魔法のサポートなしで、ですか?」

『無論じゃ』

「らしいよー。それで、目を瞑ったまま、攻撃をかわせるようになるまでだってさー」




 先程までやる気に満ち溢れていたりっちゃん先生の顔色が青くなっていくのが分かる。




『まぁ…普通はそう言う反応になるのじゃ。特に、あのヘタレは頭が回る。きっと、から、親か誰かが仕込んだのじゃ。それに対して、主はなんだ…』

 ——僕が馬鹿だとでも言いたいのかっ!!!たしかに、ぼーっとしてることは多いけどっ!!




 それよりも…気になるワードが出てきたなぁ…。りっちゃんの幼少期…ね。そんな描写を描いたことないし、設定した覚えもない。




 やっぱり、僕がスポットライトを当てなかったキャラクターの情報が補充されているような気がする…。




 それでも、決めた。僕からはその話をりっちゃん先生に切り出すことはしない——と




 ◆◇◆◇




 結局りっちゃん先生と話し合った結果、気配察知を会得するために、シャードイングから始めることにした。




 要は寸止め——と呼ばれるものである。日本のボクシングなんかはこれを重視していたはずだ。




 お互いに目を瞑ってる相手に拳を向けて、当たったか当たってないかを報告する。




 これ意味あるのかな…?首を傾げながら、右へ動いたときに、りっちゃん先生の拳が僕のお腹へ減り込む。




「ぐぅ…やられ…た」

「ほ、穂花ァァァァァァァごめんなさいいいいい」

「りっちゃん先生…僕の屍を超えていけ…」

「ち、違うんですううう。なんでここで、私のいつものドジが働いちゃうんですかー!!」




 両膝をついて、右手でお腹を押さえてる僕に対して、彼女は心底不安そうな表情をしながら、近くにあった休憩するための長椅子へと優しく、誘導してくれる。




 そのおかげで、仰向けに寝ることができるようになり、だいぶ身体の負担が楽になる。




 今、僕の頭の上にあるとても柔らかくて、それでいて温かい感触は、彼女の太ももなのだろうか…?




 それと同時に、抗うことを許さない眠気が僕を襲う。




 瞼を閉じる前に、りっちゃん先生が小さな声で「穂花にとって、お詫びになるかわかりませんが…」と前置きしながら、僕の頬に一瞬だけ…頭から伝わる温度よりも温かく、そして柔らかい感触と共に、幸福で包まれる。




「お二人とも、見ましたか!?」

「…見た」

「見たよ!!」


「あ、あなた達!!こ、これはぁ、そのぉ」


 僕が意識を失う前に最後に聞こえたのは、いつもと変わらないりっちゃん先生のヘタレが発動しようとしていたところだった。


 

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昨日睡眠不足の中、筆を取っていたためかアフロディーテとの会話に設定矛盾があったので訂正いたしました














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