新しい生活2

『うむ。では、実践棟の階段を百往復してくるのじゃ』

 ——今、なんていった?


『じゃーかーらー、階段ダッシュなのじゃ』

 ——そ、それは無理だろぉ!!今でさえ、力士を二人抱えてるような重さなのに、しかも、実践棟の階段は長くはないものの、段差が激しいの知って………


『主よ…前をみるのじゃ』


 出かけていた言葉を喉で押し留めて、アフロディーテの指示通り、僕は前方に目を向けると——まるで、亀のような足取り…けれども、階段に向かって、一歩ずつ進んでいくりっちゃん先生がいた。


 周囲でトレーニングしていた生徒達が、そんな彼女の苦しそうな姿を見て嘲笑している。


 それでも、彼女は無視して、僕をチラリと見る。


 その眼に僕の眼を合わせた時、なぜか、力強い意志と湧き上がる負けたくない気持ちが僕の中で込み上げる。


 だから、僕も右足を無理矢理動かして踏み出す。


  ——守るべき者にぼくが負けてはいけないんだっ!!


 すると、りっちゃん先生も左足を踏み出す。


 ——いいえ、穂花、私は負けませんよ。教師としても、人としても、歳上としてもです!!

 

 りっちゃん先生が左足進めた時の足音からそんな意思が伝わった気がした。


 僕と彼女は、そこからデッドヒートして錘を忘れて、お互いの気持ちと気持ちが衝突しあい、最初は一歩ずつだった足が、徐々に歩きになり、ダッシュへと変わる。


 僕達の変化に伴い、最初こそ馬鹿にしていた周りの生徒達も幾多の嘲笑が半分を超える頃には声援へと変化していた。


 気合と負けたくない気持ちで九十八往復の途中に、今までとは、比較にならない疲労が僕の身体を襲う。


 ——もうだめかっ…でも、初日しては頑張ったほ…


「ハァ…ゼェ…穂花、辛いでしょう?フッ…やめてもいいんですよ。勿論、きついなら逃げてもいいんです。スーッ…アフロディーテ様のスパルタ指導で強くなった私が、あなたを守ります」

『うむ。奇跡魔法は戦いにおいて重要なファクターじゃが、それだけで決まる甘いものではないのじゃ。特にそこの教師は見応えがあるのじゃ。妾の契約者に確たる芯がないのじゃ』

 ——うるさいよ。アフロディーテ

「ハァハァ…先生こそ…の割に頑張ったと思いますので、どうぞ。ゴホッ、僕にお任せください」


 僕達が、震える筋肉で何とか試みていると——




「がんばれー!!諦めるな!!」

「二人とも走りきってぇ!!」

「諦めるなよ!!お前達の本気の姿を見て、俺は本気で取り組みたいって思えたんだ!!」

「自分に、相手に負けるなぁ」




 ——いつのまにか、僕達が知らない間にたくさん生徒が集まって応援してきてるんですけど!?しかも、馬鹿にしていた生徒も、懸命に声援を飛ばしているし…



 その声が僕を一段と登らせる。



 しかし、一段先にいる先生も同じように登る。




 りっちゃん先生に負けたくない僕は、また一段一段と連続して登る。




 彼女も僕に負けたくないのか…同じ行動を取る。




 後、五段登れば、九十九往復…




 震えるふくらはぎを両手で叩いて、無理矢理でも足を三段進める。




 りっちゃん先生は己の頬を叩き、気合を入れ直したのか…先に抜かしていた僕の先に来る。




「どっちも頑張れええええええ!!」

「二人ともファイトです!!」

「梓達も宮本さんに呼ばれて応援に来ましたよぉぉ」

 ——なんで、僕の大事な人達の声が聞こえてくるの!?




 声のする方向へさんを向けるとゴールの先にいたよーちゃん達がいた。




 僕とりっちゃん先生がそのことに気づいた瞬間——彼女達はこちらへ来て、僕達の汗をタオルで拭き取り、水分補給をしてくれた後、再度、二階へ行く。




「りっちゃん先生、後二段行くよ!!」

「はい!!」




 二人で階段を二段登り、いよいよ、九十九往復に王手を指す。


 

 そこから僕の身体——否、僕達の身体に異変が生じる。幾分と軽くなったのだ。勿論、錘はしんどいし重い。それなのに不思議と最初以上に走らことができ、駆け足でアフロディーテのメニューを達成した。



 しかし、達成した瞬間——身体が糸切れたかのように力が失われていき…倒れそうになったところを玲緒奈に抱き止められる。


「玲緒奈には助けてもらってばかりだね」


「…ううん」


 顔を横に振る玲緒奈の表情は無理して笑っているような…そんな気がした。



 隣を見ると、りっちゃん先生も同様のようで、梓とよーちゃんに支えてもらっていた。



『うむ。体力を決めるのは己自身の意思なのじゃ。恐らく三日も経てば、苦ではなくなるのじゃ。そして、これを一度でも経験すると——短期間で物理的に強くなる』

 ——何度も何度もやって、コツコツやるイメージだったんだけどなぁ。

『主にそんな悠長な時間はないじゃろ?それにの、人の身体は時が経てば、慣れてしまうのじゃ。そうなれば、意味はないのじゃ。真の体力とは、己の限界を超えた時にこそ、謂わば起きるに等しい物じゃ』


 


 ね…。そんな設定付け加えた覚えが全くないんだけど…何でだろう。今は凄く気持ちいい。


 

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 修行編にも百合はあります!!!あります!!あります!!フォロー、レビューください!!なかなか伸びないです泣、面白くないんでしょうか…と若干ネガティヴになってます( ´Д`)y━・~~








 


 

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