Day.4 【中断②】内心
1980年9月4日(木)
昨晩、店のアーケードゲームが点かなくなった。俺が令和に帰るにも必要だが、店の営業という面でも大打撃だ。オーナーに報告すべく、朝、急いで店に向かった。
「おはようございます、オーナー、アーケードゲームが点かなくなっ…。」
「ああ、あんたもここに残るのね。」
オーナーは事もなげに反応した。
「え?残る?」
「9ステージクリア目指して、必死でゲームしてたことくらいお見通しよ。」
「!???」
「本当は確定してから伝える決まりだけどね、あんた、今より未来から来たんでしょ?私もそうだったのよ。」
「…オーナー…も?」
「1週間以内にクリアすれば元いた時に戻れるけど、無意識に帰りたくないって思っちゃうとゲームが点かなくなるのよ。」
「…。」
「私はこっちで結婚することを選んで、主人の遺した店を続けてるけどね。」
突然のことで思考がまとまらない。
「あんたは、内心帰りたくないと思ったんじゃない?」
「…。正直…。そう…かも…。」
昨晩の気持ちを整理するように、言葉を紡いだ。
「俺は、今まで、仕事も彼女もある、『真っ当な』人間だったんです。
でも、仕事では上から決められた目標に四苦八苦して、彼女に結婚を無理やり進められそうで、他人からよくわからない責任を負わされ続けるんじゃないかって、怖くて。」
「…。それで?」
「急に昭和に飛ばされた今は、ただのこの店のアルバイターで、全部がリセットされたって言うか。責任を負わなくてもよくって、生きやすい…っていうか。」
「ふう。」
彼女はタバコの煙を吐き出しながら相槌をうつ。
「ゲーム、壊れたわけじゃないし、安心して今まで通り働いてちょうだい。もし、あんたが帰りたくなれば今週中ならまたゲームできるわ。」
話しているうちに開店の時間が近づいた。俺たちはそれぞれの仕事に戻った。
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Day4
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