あの青い空をもう一度

戦争と平和。
あれから時が流れ、「生きた話」を聞くことも難しくなりつつある昨今。
悲惨な出来事は次第に重みを失い、上辺だけで語られるようになっていくでしょう。事象としての歴史の風化を防ぐことはできても、人々の思いの風化を防ぐことはできません。いずれ、「戦争や原爆の話なんて、脚色した作り話じゃないのか」と、思ってしまうような世代が現れるかもしれません。

ですが、「生きていた」という記憶を残すことはできます。
たとえ当時を生きた、あるいは被爆者やその子孫でなくとも、それを紡ぐ権利はあるはずです。創作物であろうと、その気概さえあれば思いを伝えることはできるでしょう。

この作品には、そういった熱量を感じました。
私は著者の境遇を知り得ませんが、その思いは作品を通して、感じ取ることができました。