始動したは良いが…

 柳田が現在勤めているスーパーを経営している会社に新たに作られた部署であり、柳田一人しか実質在籍していない部署、ダンジョン素材調達部が始動して方一週間。

 柳田は安全第一に活動を行い続けていた。その結果として、調達できた素材はスライムを倒して手に入れた魔核のみ。

 柳田が勤める会社はスーパーと云う業態である為、エネルギー資源の取り扱いは行っていなかった為、手に入れた魔核は全てダンジョン課に引き取って貰いその代価を会社に納める日々が続いていた。

 こんな日々を送る柳田は今の自分の状況に疑問を持つ―今回の件…ダンジョン素材調達部の件が伝えられて当初から持っていたが、それがこの一週間ほどでさらに疑問として膨れ上がった―。

 スライムを倒して魔核を手に入れてそれを売り、手に入れたお金を会社に納める日々。

 スーパーを経営している会社に勤めている身として、果たして今の状況は如何なものかと。

 そもそもとして、会社内での今の自分の立場そのものに疑問を呈したくなるものだ。

 明らかに持て余されていると感じるこの状況というか環境の中、柳田は考える。

 果たしてこのまま会社勤めでいる意味があるのかどうか。

 結局の所、保険などの支払いを肩代わりしてくれると云うことぐらいしかメリットがないのでは無いか?と。しかし、そのメリットが非常に大きなものであることも同時に理解出来る。

 だが、今の状況は…と柳田は悶々とした感情の中で、半ばループし始めている思考をし続けながら、日々スライムを倒し魔核を入手する日々をさらに続けていく。


 そんな柳谷に会社から下されている命令は一つ、「ダンジョンに潜りダンジョンで手に入る素材を入手せよ」と言うもの。

 たったこれだけである。

 具体的な方針が示される訳では無く、全て柳田の裁量に投げられていた。

 こういった事も含め、柳田は徐々に徐々に空転する思考と共に、エラーの如く会社に対する不満とも呼べる感情を蓄積していくのだった。


 半月ばかり時が流れる。

 ある時ふと柳田は考えた。

 会社を退職しようと。


 一度思考が固まってしまえば後は行動するだけ、柳田は人事部へと電話をし、退職に必要な各種手続きを進めていく。

 そして一ヶ月後、柳田は晴れて会社を退職したのだった。

 魔法スキル火球を手に入れてから悶々と過ごした時間が嘘のように、今の柳田はスッキリとした面持ちであった。

 だが、それと同時に今後が大変な事も理解していたが、投げっぱなしの会社にいるよりかは、心情は楽になることが出来た為、柳田はこの決断に公開はしていなかった。

 今後はフリーのダンジョン探索者として生活を営んでいく覚悟だったから。


 対して柳田が元居た会社の人事部部長は、自主退社した柳谷感謝するしていた。

 実際問題として、攻撃的なスキル保持者の扱いをどうしたら良いのか扱いかねていたこ事と、それを理由にして退職を迫ることの難しさの狭間で頭を悩ましていたのだから。

 今回柳田が自分から辞めると言い出した事について、人事部部長は心の底から安堵の念を抱いていた。


 こうしてダンジョン素材調達部は、会社として懸案事項だった対象の柳田の退職を機に解散されるのだった。


 そして柳田は生活をする為のお金を稼ぐ為、無理なダンジョン探索を決行し呆気なく死亡した。

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