第4章 別れの時 編

第17話 俺たちの戦場

―バレンタインデー― 



今日は、男たちがざわつく“あの日“年に一度の“あの日“男たちの心中を言わずともわかる連携が男たちにはある。


こういった日ほど男たちは通常の2割ぐらい落としたテンションで学校に向かう。


今日はやけに冷え込んでいて寒がろうと平静を装う。

そうじゃなきゃやってられない。


朝の会から帰りの会までの約8時間半俺たちはそれを保つというミッションを強制的にさせられる。何たる拷問。


てか、バレンタインデーとホワイトデーを逆にしてくれよ。それなら、こんな拷問させられずに済む。


今すぐ、この制度を逆にしてくれ。男たちは必至で願っている。


そんなことを考えながらあけちたかゆきは登校する。


集団登校で集まったときにもらえなかったので、同じ町からの期待は消えた。


そして、玄関に近づくと俺たちは気を引き締める。


戦場はここからだ。




俺は、一挙手一投足に平静をプラスする。


そして、下駄箱に到着する。運命の時、漫画やアニメではここにチョコがあるのが定番だが...恐る恐るかつ平静に開ける。




しかし、あるのは、俺の靴だけ。


常人だったらここで落ち込むが、俺は更なる望みがあるそれは、靴の中にありました的なやつだ。





そう思い靴をゆっくりとるが何もない。


その時だったドサドサと音がし、振り返るとチョコがあった。


顔をあげると男の天敵がいた。






樹「あぁ、わりぃ、落ちちゃった すまん たかゆき」通常だったら、皮肉を交えて話すが今日の男は違う。


隆之「いや、全然大丈夫 はい」こんな感じで平静に接する。それが、俺たちだ。


樹「...たかゆきチョコはもらったのか?」俺の心は粗ぶりそうだったが落ち着かし、


隆之「俺? ないない(笑)」


樹「あっ、そうなの?おかしいな」俺は、心の中で何がおかしいんだよ。

おかしいって可笑しいってことか?それともお菓子いいか?ってことか?そんな感情を抑え俺たちは、クラスに向かった。




しかし、俺は、クラスに行く前にトイレに行った。


クラスでもしかしたら貰えるかもしれないため、髪形をセットするためだ。特に変わらないが。


そして、満を持してクラスに入る。





この時の注意ポイントは、目線をしたに落とすことだ。


チョコなんか期待してませんよアピール、そして、テンション低いですよアピールをすることによって、女たちのあいつ貰えると思ってんじゃねみたいな雰囲気を回避できる。




俺は、そのことを守り席に着く。



ここで男たちは3種類に分かれる。


1つ目は、机の中を席に座った瞬間に触るタイプ このタイプだと来て早々チョコ探してるじゃんというのがバレる危険がある。


2つ目は、最初は平静を装いくつろぎ少し時間が経ったうえで机の中を触るタイプ。これだと1つ目より視線が痛くなくなるが、なかった時のダメージがその時間経過に比例し一番精神的なダメージを食らう危険性がある。


3つ目は、そもそも机を無視して生活をするタイプ。これは、チョコを気にしないタイプ(いないと思うが)だと問題はないが、チョコを気にするタイプだと一日中机を気にするという業を背負ってしまう。


これは、人それぞれだが、俺は、2つ目を選択した。


そして、ぼーっとし、少し時間が経過したら、教科書を机の中に入れるのと同時のタイミングで念入りに確認する。





だが、無い。


泣きまくる心の声を抑え、朝の会を待つ。


そして、朝の会が終わり、一限目も終わり、休み時間に入る。






―バレンタインデー(休み時間)―


俺たち男は、休み時間も気が抜けない。


なぜなら、突如渡しに来る女子がいるかもしれないそう思うからだ。


そして、美咲がこっちにやってくる。



もしかして…美咲…





美咲「チョコとかないからね」うわぁぁぁぁぁぁぁ、考えてること読まれてる。


だが、この日ばかりは平静に。


隆之「あぁ、そっか残念だな(笑)」こんな感じで少し残念だなみたいなオーラを出すのも大事だ。


美咲「冗談 はい」えっ?今なんて?箱が目の前にある。小さくきれいな小包がある。


初めて女子からもらったので喜びが止まらない。だが、平静にだ。



隆之「ぁあり がと う」無理だー。平静になんかなれないわこんなん。


美咲「分かってると思うけど 義理だからね 義理」


隆之「えっ…」


美咲「.....」冷ややかな目でこちらを見る。冷やかしはダメだと思ったので


隆之「ありがとうございます 大事に食べさせていただきます」俺はそう言って嬉しそうにランドセルに入れた。


まさか貰えるとは思わなかった。今日はこれで楽に過ごせる。





許せ同士。


そう思いながら、授業を受け、後は、掃除をして下校となった。





―バレンタインデー(掃除)― 


歩とはあれから今までの日常のように楽しく話している。あの一件以降さらに仲良くなったと思う。


隆之「なぁ、あのドラマ見た?」


歩「刑事もののやつ?」


隆之「そうそう」


歩「みたみた!」


隆之「まさかあいつが犯人だったとはな」


歩「?あいつって犯人、ペットの犬だったじゃん」


隆之「えっ 動物にあいつって言わないの?」


歩「えっ そんなこと言う人初めて見たんだけど」


隆之「いや、でもペットショップであいつ可愛いなとかいうじゃん」


歩「それは言うかもだけど あいつが犯人だったでペットの犬をあいつって言わないでしょ」


隆之「?ニホンゴムズカシイ」


歩「なんで片言 笑 ほんとバカみたい」


隆之「笑」


歩「あんな悩んでたのがウソみたい(笑)」


隆之「…」


歩「あっ、ごめん」


隆之「なんで謝るんだよ ただ、良かったなって思っただけだよ」


歩「そうだね みんなと前みたいに..むしろそれ以上に話して遊べてほんとに楽しい ...でも、もう時間がない」


隆之「そうだな」俺たちは6年で、しかも2月の中旬。


そして、中学は、別々になる。


俺たちは、そこから黙々と掃除をし、帰りの会を終え、下校となった。

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