第32話

「なんだこりゃー!めちゃくちゃ旨いぜユータ!アタイはこんなの食べた事ないぜ!」


「本当に美味しいんだよ?ユータは本当に凄いね?ウチにも今度作り方教えて?」


「本当にとても美味しいですわね。ワタクシもこの料理は知らなくてよ?ワタクシも今度教えて頂こうかしら」


 パスタは皆にかなり好評である。ボソボソのパンよりはコッチの方が断然美味しいに決まっている。作り方も簡単だしこれからの主食はパスタだな。麺にしなくても形は自由だしね。ジャガイモでニョッキを作っても良いな。


 オリーブオイルを作ればペペロンチーノも作ることが出来るな。本来は具材無しでオリーブオイルとニンニクとトウガラシで味を付けるだけだからな。全て揃うぞ!それにボアの肉でベーコンとか作って見てアレンジを加えても良いかもな。


 ベーコンなんてバラ肉を塩漬けにして、乾燥させるか燻製すれば良いだけだ。何か楽しくなってきたぞ!今度鍛冶屋で挽肉作るミンサーを作れるか聞いてみよう。


 そういえば、武器とか防具はスキルで作るのかな?でも工房が有ったしな…。


「武器はスキルで成形までは出来るらしいのですよ。そこから強度を出すために火で炙って鎚で叩いて行くみたいなのですよ」


 流石ドワーフ!やっぱりドワーフの種族特性は鍛冶があるんじゃないか?気付いていないだけで隠し性能とか?


 防具もやはり同じやり方と言う事だった。それならミートミンサーも作れそうだな。別に強度はそこまで要らないだろうしスキルでパパっとね。


 食事が終わったので皆んなに手伝ってもらってオリーブを搾る。搾った液体を布で絞り明日の朝まで放置すれば分離しているはずだ。このレシピは登録するべきか…。暫くは胡椒と香草ニンニクの売れ行きを見てからでも良いかな。


 皆んなはジュースを作っていると思ったらしく、飲まないのかと残念がっていた。


 今日の稼ぎもいつも通り11万ガルドだったので、明日の朝、武器屋と防具屋に行って見積もり済みの武器の制作依頼を出しに行こうという事で皆んなで部屋に戻る。


「明日は、身体強化使えるメンバーで牛を狩りに6層へ行かない?前回の感じだとそこまで急がなくても時間内に戻って来れそうだったし」


「いいんじゃないか?牛肉の売れ行きも良かったしな。街の皆んな気に入ってくれていると思うぞ。何せあっという間に売れていたからな」


「それと明日の朝に鍛冶屋で肉を刻む機械を制作依頼しようと思うんだ。それがあれば硬めの肉も柔らかくなるから食べやすくもなるし、合い挽き肉にしてハンバーグという料理も作れるようになる」


 皆んなハンバーグに興味津々だが、説明してもわからないだろうから、現物が作れるようになるまでオアズケにしておいた。


 その後は風呂、ハッスル、就寝と、いつものルーティンで一日が終わっていく。アンネはまだ皆んなの前では恥ずかしいらしく、今夜は見てるだけだった。もう自分の部屋に帰れとは言わない。


 

       ★★★★★


 それから一週間が過ぎて俺がコッチに来てから28日目。もう10日もすれば日本では夏休みが終わって新学期が始まってしまう。はっきり言って俺はもうコッチで生きて行く覚悟は決まっている。それでも日本に帰る方法は探すつもりだ。死ぬ直前にでも日本に戻ってみることにするさ。それが俺の最終目標である。


 本日は俺等は休日である。なぜなら昨日でラミとフィンが返済満了で解放になったので、三日前に解放されたアキと一緒に役所へ行って下級市民になることになっている。


 ラミとフィンの分は俺の胡椒と香草ニンニクの取り分で先に返済をした。何せ売れ行きが凄まじく、販売初日に用意した分は当日に全て商人が買っていったようだった。


 全ての商人ギルドで用意した分はどうやら胡椒が100gの容器で100万個。それが200ガルドで提携商店に卸された。俺の取り分は1千万ガルド。


 香草ニンニクは50g入りの容器で500ガルド。これが10万個用意され、完売。

取り分は250万ガルド。


 毎日卸す訳では無い様なので、次回からは一週間毎にまたお金が入ってくるようだ。次は今回ほど売れるかどうかは分からないが、おそらく全ての家に行き届いたわけではないので、噂を聞いて買ってくれる人はまだまだ居るだろう。


 いかに今まで調味料が無かったのかがよくわかる。ハッキリ言って働かなくても、俺だけなら3年後には解放されるくらいの収入はある。


 それ以外でも、牛とボア狩りと草関係で1日金貨100枚稼いでいるのでそれも合わせればかなり早く解放されるだろう。まあアンネの分は今は分配して一人分として返済しているけど、最後は俺の分と一緒に払う予定だけど。


 でも俺等が肉を取りに行かないと美味しい肉が無いのである。下町第三エリアの住人は既に舌が肥えているし、俺等は特にそうなってしまっている。なのでそこら辺の肉屋で売っている肉ではもう駄目なのである。


 多分ボアのヒレ、ロースはダンジョンギルドへ依頼すれば誰かが取りに行ってくれるのだろうが、牛の6層へは多分日帰り出来る人間はそうそう居ない。俺等は身体強化が使えるから日帰りで行けるのだ。


 それでも仕事だから取りに行ってはくれるのだろうけど。


 何せ牛は300キロの肉を1頭分で金貨10枚にはなる。依頼で金貨8で出したとしても、2日掛けて金貨8枚ならかなりの稼ぎである。俺らと同等以上のレベルなら身体強化を使わなくても1人で1頭は担げる。


 俺等もいつまでも取りに行く事は出来ないので、いつかは買うことになるだろう。なので早めに商人ギルドで牛の肉の流通を促して貰おう。


 まあ今日は昨日狩った分が有るので困らない。それなので今日はボスと一緒にオークションに参加させて貰うことになっている。


 俺も商人ギルドには登録しているので奴隷で無ければ独りでも行く事は可能なのだが、生憎俺はまだ奴隷だし、右も左も分からないのでボスと一緒に行かなければならない。


 場所は中町にあるのオークション会場である。俺は中町自体初めて踏み入る。


 娼館から中町の城門まで1時間歩いた。下町と中町の間にある城門は、俺が毎日通っている城門よりは小さい。侵略されたとしてもここまで攻めて来られないと思っているのだろう。と言っても城壁の高さは20Mはあるのだけど。昔はここが大外だったんだろうな。


 オークションは月に1回開催されているようだ。俺は今回のオークションで魔法用の杖の宝珠を買えればと思っている。もちろん杖自体を買っても良いし他にも何かあれば買える財産はある。


 俺がギルドに登録した調味料の代金は、今回のオークションが終わってから余った分を返済金に充てる事でボスとの話はついている。


 門から続く大通り沿いを歩いているのだが、家の雰囲気が下町とは違い、基本2階建てで、レンガ作りになっている。大通り沿いの家は1階は店になっていて、大変賑わっている。本来ならボスもコッチで娼館をやったほうが儲かるのではないかな?


 30分程歩いていると正面左に巨大な建物が見えてくる。闘技場だ。毎日誰かが闘っているらしく、建物の周りも含めて大変賑わっている。


 コッチの世界はアルコール類が無いのでジュースを飲みながら観戦しているようだ。ココにビールでも有ったら場外乱闘騒ぎが起こってもおかしくはない。アルコールは人を変えてしまうと聞いた事がある。


 俺の目的地であるオークション会場は闘技場の向かいにある立派な建物の様だ。会場は商人ギルド所有の建物らしく中町に2箇所有るらしい。


 どちらの会場に行っても通信型魔導具により同じ出品物を同時に取り引きが出来るシステムになっていると聞いた。ちなみにもう一方の会場は、真反対に在るようで歩いたら片道3時間は掛かると言っていた。


 会場に到着し受付に行く。受付には本日の出品予定品目が張り出されていて、人集りが出来ている。


 その中には魔導具の出品が非常に多い。ウチの娼館にもあるコンロの最新型とか、まだ魔法ギルドで先行販売しかされていない物で一般には出回っていないので価値が高いようだ。


 後は驚く事に個人で開発した魔導具なんかも出品されている。魔導具なんて個人で作って良いのかな?魔石の秘密を知っているのかな?非常に興味が湧く。後でボスに聞いてみよう。


 


 


 


 


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