第31話

 俺は魔鉄鉱石を持ってまずはダンジョンボスの魔石を現金に変える事にする。


 魔石はそこそこ良い値段で売れた。金貨5枚だ。そして皆んなが来るまでに鍛冶ギルドで魔鉄の製錬をお願いしに行く。確か2万4千と言っていた。


「あぁ、昨日の魔鉄鉱石ですね?インゴットで良かったですよね?24キロで2万4千ガルドとなりますがよろしいですか?」


 もちろんお願いする。高炉でアレして来るんだろう。期間はどれくらい掛かるのだろうか?


「あ〜今、丁度鍛冶師で手の空いている職人が1名居ますのですぐやりますよ」


「うん、だからいつ受け取りに来ればよいの?」


「ん〜?すぐやりますって…まあいいや。そこに座って待っていて下さい…」


 そう言うと、受付職員は奥に居る職人を呼び寄せて何かを話してから鉱石を渡している。


 職人は俺に手招きをしてから魔石に向かって手をかざす。


「製錬!」


 そう言うと、鉱石が宙に浮き輝き出す。そして光が収まるとそこには3本のインゴットが残っていた。


 そうか、これはジョブ特性かスキルなのね。鍛冶師はジョブ鍛冶師がなるって言っていたのはこういう事なのか。確かにどんなに力が有ってもこんな芸当は出来るはずが無い。


 でもジョブ魔法使いが、案外簡単に生やす事が出来るのだから、きっと鍛冶師も練習すれば生えるのだろうな。誰もやらないだけで…。レベル5で人生が決まってしまう世界なのだから。


 そう考えると皆んな修行が足りないな!と言ってもジョブ鍛冶師がすぐに生えるとは思えないけどね。


 俺は皆んなが来るまで鍛冶について質問してみる。


「これ植物ダンジョンのボスだった人面樹の欠片なんすけど、これで杖というか何か魔法の発射台とかって作れるんすかね?」


「ほ〜珍しい木ですね~。私の鑑定と一般的な魔法用の杖を考えると、この木をベースに先端に魔力を増幅する宝珠があれば、かなりの効果の上昇が望めるでしょうね」


 ほほう、宝珠か。そんなもん買えんぞ!俺の残金は2万6千だけだぞ…。


「安い宝珠だと大体1万ガルドから有りますけど、不純物も多く余りオススメ出来ませんね。高い物だと国宝級の物まで有りますけど、そこら辺はオークションでの購入がオススメですね」


 オークション!有るのかオークション!メッチャ行って見たいのだが!ボスに聞いてみよう!


 魔力の通りの良いこの木をベースに、威力が上がる宝珠を魔鉄で出来た台座に付けた杖なんてかなり良いかもね。それで殴れもするし。

 宝珠は武器屋でも売っているそうなのだがギルドにもあるそうなので見せてもらえる事になった。


 ギルド職員が、奥からカラフルな5センチ程度の宝珠の入った容器を抱えて持ってきた。結構雑な扱いだ。


「此処ら辺が大体1〜2万ガルドの宝珠となっています。不純物も多く、増幅効果も少ないものです。気になる物が有るなら手にとって頂いても構いませんからね」


 へぇ、これが宝珠か。多分宝石や特殊な鉱石を丸く加工したものなのだろう。透明では無いのは不純物というよりは宝石として取り出せる部分が少ない原石を丸く加工した物なのだろう。


 ここらへんのは安いと言うだけあって、宝珠というよりはほぼただの石だね。若干緑だったり青だったりはあるけど、宝珠にはならなそうだ。


 それでも一通り見ていると、1つ気になる石があった。8千ガルドの値札が付いている。俺のサバイバルの知識だとその石は「トロナ鉱石」と出ている。


      トロナ鉱石

       レア度4  

      炭酸塩の鉱石 


 これが何か解りますか?これは重曹です。


 正確に言うと重曹では無く、重曹も含まれてるんだったかな?たしかそんな感じだった。これがあればフワフワパンケーキが食べられるようになるかもしれない!


「すいません。例えばこの鉱石買ったとして、精製してもらうことは出来るんすか?」


「どれです?あ〜これですか。出来ますけどたしか白い粉が出来るんですよね。それが何に使えるのかよく解って居ませんよ?ですのでこの鉱石は結構取れるんですけど使い道が無くて…代金はスキル代の500ガルドになりますね」


 マジか。結構取れるのか。それならもう少し安くならないものかな。最安値の鉱石だけど大量には買えないな。それでもせめて自分が使う分だけでも買いたい!


 そこに丁度皆んなが到着したので、俺はギルド職員に挨拶をしてから、インゴットを持って武器屋に向かう。ラミのガントレットは防具屋なのでここの次に行く予定だ。どうせ隣の店だしね。


 前回は武器選びに必死だったので店主の顔はほとんど見ていなかったのだが、よく見るとドワーフの女性だった。やっぱりドワーフじゃん!偶然なのだろう。なんかポムよりも小さいけどポムより年上に見える。


 俺等は魔鉄のインゴットを出して、ポムの鎚とアキのロングソードの見積もりを頼む。


「鎚は全体を魔鉄で作るのかい?それともヒットポイントだけ?それによっては大分変わってくるかね?柄の部分は鉄にする手も有るからね」


 皆んなで集まって相談する。俺の中では全部を魔鉄にして魔力を込めやすくしたほうが良い気がする。折角の魔戦士なのだから。そう姐さんに伝えると、


「成る程ね。オッケーだ!そうすると、柄から打撃部分の芯は魔鉄で作って、その周りを鉄で肉付けしようか?そうすると魔鉄の量を抑えて重量を確保出来て魔力の通りもよくなるよ?」


 何それ、とても良きだぞ?しかもその方が丈夫になるらしい。まるで日本刀のようだ!知らんけど。


 次にアキのロングソードだ。鉄の剣身を魔鉄で囲む様にする。柄の部分から剣尖まで魔鉄で作ることで、魔力も流れやすいし、やはりその方が強くなるとの事。


 これで合計インゴット2本使用予定。後約8キロが残っている。制作費は、材料持ち込みプラス鉄、飾り代で鎚が8万、剣が5万。普通に考えたら結構高額。


 ポムは良いとしてもアキは先にボスに報告したほうが良いだろうな。流石に金貨5枚を勝手に使うわけには行かないからな。店主に事情を説明してとりあえず保留となる。


 次にラミのガントレットも見積もりを取りに防具屋を訪れる。そこにはいつものオヤッサンが暇そうに座っている。


「おう、ユータ。今日はどうした?」


 軽く挨拶してから魔鉄で小手を作りたい事を説明する。


「ほほう、成る程な。そうすると全体を魔鉄で作るよりベースは鉄にして、手の甲から指先までを魔鉄で作ろうか」


 流石オヤッサン。話がわかるぜ!製作費は両手分で10万ガルド。こちらは武器兼防具なので可動部分の制作が必要なため、普通に良い値段がする。


 それでも魔鉄は5キロ使用予定のようで3キロ余ることになる。これは正に持って来いだ!俺の杖のパーツが作れるぜ!


 俺はまた武器屋に移動して姐さんに3キロで宝珠用の台座が作れるのか相談する。まだ宝珠は決まっていないのだが作れるとお墨付きを頂いた。俺の武器は急いでいないので宝珠が手に入り次第という事になった。


 俺等は館に帰ってボスに相談する。


「おう、良いんじゃないか?それで稼ぎが増えればコッチもありがてーしな!今日の稼ぎで足りるだろ?」


 本当話が早くて助かるぜ。肉狩りチームが今日取ってきた肉を売っている間に俺はキッチンでトマトソースを作る準備を始める。


 と言っても潰して煮込むだけなんだけど、結構な量を取ってきているので重労働ではある。


 ここの世界のトマトは、完熟トマトなので凄く水分量が多く、匂いも甘い。これがトマトソースに適しているかは俺は知らん。


 塩で味を整えながら煮込んでいくと、結構な量が出来てしまう。これは小麦粉でパスタかマカロニを作って食べたほうが合いそうだ。作り方はテレビとか、キャンプ動画で見て知っている。


 普通にナスを取ってきて、ナスとボア肉のトマトソースパスタでも良かったかもな。肉をミンチにして入れても良いか。まあ次回でにしよう。


 とりあえず生ロングパスタを作ってしまおう。小麦粉に水と塩と余ったトマトを混ぜて捏ねて、蕎麦を切るようにカットすればそれなりに出来るんでしょ?ミアに夕飯で食べる用の肉を少し分けてもらってパスタを完成させる。


「ユータ、それはなんて料理なんだい?ワタシは初めて見たけどとても良い香りでとても美味しそうだね!」


 ミアは、既にたまらん!って感じになってしまっている。







 


 




 


 






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る