第30話
俺はステージの周りをソナーを使いながら調べている。全5層の植物ダンジョンで、最下層の5層のステージに木が一本って、どう見ても怪しいでしょうよ。絶対にこいつがボスのトレントでしょうよ。近づいたら襲って来るんでしょうよ。
まあ結構俺もレベルは上がっているし、装備にも当然能力付与済みとなっている。よっぽどの事がない限り負ける気はしない。
よし、1丁やりますかね。
俺はステージに乗り、木に近づく。するとステージが光り、円周に光のカーテンが発生して木に目と口が現れ動き出した。………でしょうね?
この演出は完全に、でしょうね?ですよ。
定番過ぎて笑ったわ!まあ木のボスなので燃やしてみる。地面から特大の火柱を発生させる。
どうやらフレイムという魔法の様だ。スキル、魔法の知識で使った後に答え合わせのように魔法の名前が浮かんでくる。
燃えながらも俺に向かって何かを大量に撃ち出して来た!その数おそらく30粒くらいか?何かの実のように見えるが触れない方が良さそうだ。俺は丈夫な石の壁をイメージして魔法を発動する。ロックウォールというらしい。
謎の実はそのロックウォールに遮られて爆発している。隙だらけのボスに、今まで余り出番のないナイフで斬りつけてみる。すると樹液が飛び出してくる。掛かりたく無いので風魔法で吹き飛ばす。ウィンドウォールと言うらしい。
すると、その樹液がボストレントに当たると、そこから煙が出ている。どうやら触れるとヤバそうな奴だな。
やはり遠目から燃やそう。もう一度フレイムを放つ。しかも目一杯魔力を込めて。先程の倍くらいは有るであろう火力が出ている。
そしてトレントは動かなくなりそのまま燃え尽きた。
あ〜何か素材取れたんじゃ無いかな?と後悔しながらボストレントの居た場所を見てみると魔石と木の欠片、そして宝箱があるじゃないですか!
まずはただの燃えカスにしか見えない木の欠片を見てみると、
人面樹の木片
レア度5
とても丈夫な木。魔力を通しやすい
何か魔法使いの武器の素材に良さそうなものが出たよ。長さは1メートル位はある。そして魔石も10センチ位は有りそうだ。最後に宝箱だ。
勢いよく開けてみると中には果物が一つ入っていた。俺は取り出して見てみると、
人面樹の魂の実
レア度9
人面樹の魂が籠もった果実。
ダンジョンボスを倒すと極稀に出る果実。食べると人面樹のスキルが付く場合がある。スキルは魔力依存。味はとても甘い。
効果発動期限 2時間59分30秒
何かとんでも無くレアな果実が取れたんだけど…。これがギルド職員が言っていた甘い果実か。だが、これはただの甘い果実ではないぞ?これはスキルの果実だぞ!これの本当の効果に気付いている人は居るのか?今迄誰もスキルが付いた人いないのか?
残念ながら普通の人にはこの果実の内容は見えないからな…。鑑定の指輪でも分かるのは名前だけだ。
ここから普通に歩いてダンジョンギルドで鑑定して貰う頃には効果発動期限切れだろうな。たとえここで食べたとしても、魔力の無い人間が喰っても効果は無いのだろう。魔力持ちはダンジョンには来ないのかな?まあこっちの世界の人は深く考えない人が多いからな…。
そうするとただただ甘くて美味しい果実なだけになってしまうのだろう。とりあえず俺は肉狩りチームと合流するべく身体強化を掛けながらダッシュで向かう。これを食べてもらうメンバーはもう決めてある。
俺は1時間掛けて植物ダンジョンを出て、5分で獣ダンジョンに移動して、また1時間掛けて3層まで辿り着く。
ソナーで周囲を探しながらダンジョンを進んでいく。するとソナーよりも先に賑やかな声が聞こえてくる。どう聞いてもフィンの声だ。
俺が合流すると、皆んなビックリしていたが、魂の実の説明をすると皆んな再度ビックリしている。
「ミア、この実食べてみない?戦闘スキルが生えるかもよ?」
ミアのスキルは魔法食で、直接戦闘には向いてないスキルである。本人も戦闘スキルが欲しいと言っていた。
意を決したのか、ミアは俺から果実を受け取り食べ始めた。
「すっごく甘くておいし〜!こんなに甘い果実は初めて食べたよ!」
あまりの美味しさに、頬を抑えてキャッキャしているミア。皆んなには鑑定の魔石を渡してあるので、興味津々でミアを見ている。
するとミアのスキルの欄に、突然「狂った果実」と言う文字が浮かんだ。何か凄そう!
皆んなもスキルを見せて見せてとせがんでいる。
「それにしても本当にユータのスキルはぶっ壊れているぜ!人類史上初めてじゃないか?果実でスキルが付いただなんてよ」
「全くですわね…宮殿でも知っている人間は存在しないと思いますわよ?」
「そんなか?サバイバルの知識では無くても今迄にも植物の知識とかのスキル持ちはいたんじゃないのか?そういう人が居ればこの果実の効果も発見されてるだろ?」
「居たかどうかは分からないが、そんなスキルの人間は戦闘職では無いからな。学者かなにかだろうし、ダンジョンのボスを倒して果実を調べようと思う学者は居なかったんだろうさ。しかもかなり希少な果実なのだろ?」
まあレア度9ですからね。早々出るものでは無いのだが、一発で出た俺はツイテいる。
「でもこれだとダンジョンのボスは倒す価値が爆上がりだな!俺の中では全てのダンジョンをクリアしたいくらいだぜ!」
「それ、とても素敵なんだよ?ウチも付いて行くからね?」
「ラミ、ズリーぞ!アタイも付いて行くんだからな!」
「分かってるって。置いて行かないから安心しろって!皆んなで行こうな!」
「わ、ワタクシも連れて行ってくださるのかしら?当分解放されませんが…」
「安心しろアンネ!返済金は俺に任せておけって」
俺はアンネの返済金も一緒に返してやろうと考えている。それが俺の責任を取ると言う事だ。そう言うととても喜んで抱きついてくるアンネ。なので俺は頭をナデナデしてあげる。
「な、なんですのコレは…病みつきになりそうですわ…」
イチャつくのはここまでにして、俺達はミアの新スキル「狂った果実」を見せて貰うことにする。とても楽しみだ。
ボアが居るので撃って貰うと、大量の果実がボアに向かって飛び出した!あ〜あれか!
その果実がボアに当たった瞬間、爆発するじゃないか。それが約30発だ…。狂ってやがる!マジで喰らわなくてよかったわ…。ボアは跡形もないよ…
「これは…半端無いのですよ…木端微塵なのですよ…」
「ミアが爆弾魔に…これは怒らせたら危険ですね」
皆んなウンウン頷いている。この爆弾の威力は人面樹のボスより強い。魔力依存だからミアのほうが魔力が高いのだろう。使い勝手も敵の素材が要らない状況なら俺等の中では最強に近いのではないか?なんせ木っ端微塵になってしまうからな。
「後ボスからこの木片が出たんだよな。昨日の魔鉄もあることだし武器を新調しようと思うんだ。昨日話した通りだと俺、ポム、アンネの武器の予定だったけど、俺はこの木片で魔法用の杖を作ってみたいんだけどどうかな?」
「それなんですが…昨日はワタクシ、皆さんに仲間外れにされた事でムキになってしまいましてあんな事を…ですのでワタクシ、今回は辞退させて頂きますわ。先にアキさんやラミさんの武器を作って差し上げて下さいませ」
「え、いいの?ウチは嬉しいかな?」
「アタシも新しい剣は欲しいです!」
「よし、それなら俺は一足先に魔鉄鉱石を取りに館に戻ってから、このボス魔石売って鍛冶ギルドに行くから、そこで待ち合わせな」
そう言って皆んなと別れて俺は一人で娼館に戻る。今日取ってきたオリーブとトマトが結構な量になっている。オリーブオイルとトマトソースか!楽しみだぜ!
鉱石を持って館の中を歩いているとボスが居たのでワインについて聞いてみる。
「ワイン?聞いたことねーぞ?そもそもアルコールってなんだ?」
アルコールを知らないなんて事ってあるの?この世界マジでやばくね?調味料は塩しか無いし、そう言えば砂糖も知らなかったよな。これって逆に知らない方が幸せなパターンか?
どうしようかな。俺一人が我慢すればその他すべての人が幸せなまま過ごせるんだろうか…。それとも知って豊かな食生活を送った方が幸せか…もう既に牛肉や、ボアでも柔らかい肉を
俺はボスに武器屋と防具屋に行くことを告げて館を出ていく。
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