第21話

「くっ・・・そつがなさすぎないか?」


カインお兄様がボソッと口に出してしまわれたのを聞きとがめているだろうアンヌのすごいところは全く更に動じないところですわね。


「私などがナディアレーヌ様のお兄様がたでらっしゃる皇太子さまと宰相補佐の第二王子様たちのお目に入れていただけるだけでも光栄でございます。」


「うーん。私達に見惚れないのも好感が持てるな。」


これはフレディお兄様たちだからはっきり言ってもいいことであるとは思います。


「そんな・・・恐れ多くておふたりのご尊顔に見惚れることなど出来ませんわ。申し訳ありません。」


にっこり。




ああ、これはお兄様たちが悪いですわね。ふうっとため息を吐きながらアンヌの手をとります。


「アンヌ許していただけますか?お兄様方は過保護です。あなたを試すようなことをしたりしたことを許してもらえる?」


「ナディアレーヌ様、試すなどとおそれおおいことですわ。ただ。私は耐性があるというだけの話ですの。後は年の功というやつです。」


と、ニッコリ笑う。


ああ、お子様はおよびではないと。たしかにそうだろうけれども・・・。


「耐性・・・」


「耐性だと・・・」


お兄様たちが悔しそうにしてるのはもう流すことにしようかと思います。もう本当に!






「お兄様、わたくしは・・・」


「レーヌ、そんなに怒らないでおくれ。可愛い顔が台無しだ。」


そう言ってわたくしを抱き寄せるフレディお兄様と、そっと握ったわたくしの手を離さないカインお兄様。


周りのご令嬢方が固まったのをみて、ああ、この国でのカインお兄様の奥様探しは不発だとわかってしまいましたわ。


この反応を見てお兄様方はいろいろ判断されるのですが、わたくしに対する冷ややかな視線を投げかけたお嬢様がた、申し訳ありませんがアウトですね。


それならまだ好意的にきゃあきゃあ言ってくださっているあちらのお嬢様方のほうが・・・とおもったらカインお兄様の目もそちらにむいていますね。


「あちらのお嬢様は金髪の方が伯爵家のお嬢様。16歳。婚約者はまだいらっしゃいません。そのお隣のブルネットの方は侯爵家の一人娘の方なので婿をおさがしなので難しいかもしれませんが基本は政略結婚は望まない家系でございます。こちらも16歳ですね。


もうひとりの髪を巻いている金髪の方は同じく侯爵家のお嬢様ですが婚約者はいらっしゃいませんし性格も非常に穏やかな方です。歳は18歳。ちょうどよろしいかと。


あの三人の方々はそれぞれに家格も含めておすすめでございますしナディアレーヌ様ともお友達になれる方々かと。」


サラリとアンヌが情報を与えていく。


ニヤリと笑うカインお兄様の表情をみて、なぜかはわからないけどこちらも気に入ったのは間違いないと言った雰囲気です。






「レーヌ、お兄様は少しあの方々とお話をしてきたいんだが一緒に行くかい?」


「わたくしもですの?」


「そうだよ。こちらでもお友達はいたほうがいい。フレディ兄様、いいかい?」


「ああ、行ってくるといい。」




その声に押されて、三人を残しそちらのお嬢様たちに近づいていくお兄様。わたくしをエスコートしているので気は進まないもののついていくことに。








「お嬢様方、少しだけ妹を紹介してもよろしいですか?」


きゃあきゃあと騒いでいたお嬢様がたはきちんと口元を優雅に扇子で覆ってにっこりとわらってくれました。これはどこの社交界でも一緒。大丈夫ですよの合図です。


その後にお兄様はひとりひとりの手をとってキスを落としていきます。


まあ、絵になるったらありません。遠巻きのお嬢様方が息を呑む声が聞こえます。


それを合図に皆さま扇子をおろしてお顔を見せてくださいました。美しい。美の塊では?






金髪の髪をゆるく巻いた美しいお嬢様がわたくしたちにすばらしい淑女の礼をとってくださいました。


思わず見惚れてしまいそうです・・・。


美女ですよ美女!美しいです!!


瞳が薄いブルーの金髪碧眼の美女とはこのことです!!というかんじです。


なのに全く冷たい感じなんかしません。素晴らしい逸材かもしれませんお兄様!!!




「私はユーリス・ヴィッツベンと申します。以後お見知りおきを。」


にっこりとお兄様ではなく先にわたくしに微笑んでくださいます。ほほぉ・・・美しい微笑みです。


少し低めの落ち着いた声がなんとも心地よいです。


ああ、お姉様とお呼びしたい。大変お美しい!!!




「わたくしはナディアレーヌ・エミィ・オーウェンと申します。こちらは兄の・・・」


「カインです。お嬢様方妹をこちらに置いていかなくてはならなくて心配なのです。よかったら私の大事な大事な妹の話し相手になっていただけませんか?


わたしはこの後数日後にはエルロッドウェイに帰らなければならないのですが妹が家を恋しがり私達家族を恋しがってもわたしはすぐこちらには参れません。


愛しい妹に少しでも心強い友がいてくれたなら、私も安心なのです。お願いします。この兄の気持を皆さま組んでくださいませんか?」


必殺の微笑みくらいのわたくしでさえちょっとよろけるくらいのほほえみです。お兄様大盤振る舞いなさっております・・・。


いつもだったらこのあたりで自分を売り込んでこられる方々も多いのですが、この三人の方の反応を見るにそうでもございませんわね?


ん?珍しいかもしれません。






もうひとりの絹糸のような金髪の髪をサラリと揺らして、こちらも素晴らしい礼を取られたお嬢様が名前を教えて下さいました。


はあああ・・・。ため息が出るほどの美少女ですよ!お兄様!!と見てもお兄様もニッコリと笑ってみてらっしゃるだけです。美男美女だと美しいものに見慣れてますの?


わたくしもうドキドキして仕方ないのですけれども?!


「わたくしはカテリーナ・マクレーンズともうします。ええ是非!!わたくしも嬉しいです。」


オリーブ色の美しい瞳でわたくしをみてはニッコリと笑ってくださいます。ああ、声まで可愛い。


わたくしはどっちかというとエルロッドウェイでは希少種くらいの勢いで隠れていたり兄達に囲われていたりだったのでお友達がとてもすくないのです。というかサラくらいです。


え、わたくしお友達ができるのでは?つくれるのでは?わくわくとしてしまいました。


いつも我が国ではお兄様目当ての方はたくさんいらっしゃいましたがわたくし、期待してもいいのでしょうか?お兄様目当てで無い方がいらっしゃるのかしら?


にしてもかわいい!かわいらしいです!!






うっかりと違う扉を開けてしまいそうになったのですが、もうひとりのかたがくすっと笑ってらっしゃいます。それにしてもこんなにかわいらしく笑える方がいらっしゃるの?


なんとも豊かなブルネットのツヤッツヤの髪です。それに理知的な濃い茶色の瞳が笑うことにより茶目っ気まで引っ張り出してます!そしてびっくりする美少女じゃありませんか!!!


この国のほうが美男美女率高すぎませんの?


「私はエルローズ・グリルフォントと申します。私でよろしければぜひお友達になっていただけたら嬉しいですわ。」


ああ、声まで可愛らしい。びっくりする麗しさではありませんの?!思わず見惚れてしまいました。そうすると恥ずかしそうに目をそらしながらまたふふっと笑ってくださいました。


て、天使ですか?天使がいらっしゃいます!お兄様天使です!!!


そう思ってカインお兄様を見ると、ふと真顔になってらっしゃいます。




「ふむ。一番難しいところとは。腕がなります。」


「え?」


エルローズ様がふと私から目をはなしお兄様を見上げております。なんですの?この雰囲気は?


「カインお兄様?」


「ああ、ごめんねレーヌ。ちょっと考え事をしてしまったよ。でも兄はちょっと楽しいことがあったんだよ許してくれるかい?」


「ええ、お兄様。」


そういっていつもどおりお兄様の腕にすり寄ってしまいました。

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