第22話

きゃあ!!と声が上がりました。ふっと目の前の三人を見ると軽く震えてらっしゃいます。


わたくしがお兄様から離れると明らかに落胆したように眉が下がるので、わたくしはなぜか期待に答えなければならない気がしてお兄様の腕にくっついてみました。


すると。


目の前の美しいお嬢様方がニコニコとなさいます。




な、何故?






「お嬢様がたはどうやらわたしには興味が無いようですね。」


軽い苦笑いをしてお兄様が首をゆるゆるとふると慌てたようにエルローズ様が見上げておっしゃいました。


「いいえ!!申し訳ありません。そういうわけではないのです。」


他のお二人も扇子を緩やかにおろして軽く膝を曲げてらっしゃいます。


そんなことをなさらなくてもよいのです!やめてください逆にー!うちの国なんかちっちゃい国なんですからー!!


「良いのです。わたしのような小国の第二王子など・・・」


「いいえ!!そんなわけではないのです。失礼しました。ただ違うのですナディアレーヌ様があまりにも・・・」


「「あまりにも?」」




わたくしと兄の声が揃ってしまいましたがわたくしはどきどきしております。いつもだったら兄に近づくわたくしを目の敵にされますので・・・妹なのですけどもね。


カインお兄様はその後に続く言葉がわかってらっしゃるようでちょっとだけ笑うのを我慢してるような顔をしてらっしゃいます。


一体どういうことですの?






「「「あまりにもお可愛らしくて、お美しくて。眺めていただけなのです!!!」」」




三人の声が小声ではありますが重なったのでビクッとしてしまいました。


え?わたくしですか?お兄様ではなく?


不思議そうにいつもの癖で首を傾げてしまいました。




「だって、そんな美しい銀髪でラベンダー色の瞳だなんてみたことがありません!」


「それにそのドレス!素敵ですー。着こなしが難しいでしょうそのシルエット?」


「少し背がお高くてらっしゃるのも美しさを引き立ててらっしゃるしその美しいお声!」




え?わ、わたくしのことでしょうか?どうされたのでしょうか皆さま?






「でしょう?わたしの妹は本当に愛らしいのだよ。」


あ、お兄様素が出ておりますわよ?注意しようとしたのですがもう四人で話し始めてます。


「カイン様も恐れながら素敵な御髪でらっしゃいますけどナディアレーヌ様のあの髪はすばらしいですー!」屈託のないユーリス様の声が可愛くてめまいがしそうです。


「そうだよね、レーヌの髪の触り心地は最高なんだよ。しっとりとしているしね。」


くすっと笑いながらお兄様が私の髪をさらっとなでて揺らします。


「ナディアレーヌ様の姿勢の良さでしょうか?このドレスってシルエットが美しくないと着こなせないでしょう?素晴らしい後ろ姿では?」


なんとも落ち着いた麗しいお声はカテリーナ様。ちょっと耳元で聞きたいです。


「レーヌはなんと武術も嗜むんだよ。」


「え、医療大国で医療にも通じた皇女様だと聞いておりますのに武術もですか?」びっくりされてしまうじゃありませんかお兄様!!ジトッと睨むと私の髪をなで、さらりとつむじにキスして流れで軽く抱きしめてきます。


癖ですけど?これ、お兄様の癖ですけど?フレディお兄様だったらさらにぎゅうっとされますけど?!また三人がきゃあきゃあと・・・・だから何故?






「わが妹は自慢の妹だからね。美しいだけではなくて医療、経済、そして武術にまで・・・」


「お、お兄様・・・。」


いたたまれません・・・だって好きで武術やってないんです。やらなきゃなんなかった17年・・・


「それに美しい鈴を転がすような声ですしせも高くてらっしゃって美しいのですもの。わたくしは背も小さいから見上げると・・・。」


わたくしを見上げたエルローズ様が可愛らしすぎます。背の高いだけのわたくしからしたら小柄というのはとても素晴らしいことです。


ユーリス様はわたくしとあまり変わりませんが、カテリーナ様も小柄さんです。


羨ましすぎます・・・。


じっと見上げてくるエルローズ様を見ていると本当にわたくしいらない扉を開いてしまいそうになります・・・三人共がお可愛らしい・・・。






恐るべしドゥーゼット・・・。

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