第5話

フレディお兄様がわたくし達をそっとお離しになったあとわたくしの手を引いて胸に抱き込まれ


ました。


カインお兄様はわたくしの髪をきゅっと握ってらっしゃいます。


温かい・・・だからお兄様たちが大好きです。


すりっと頬をフレディお兄様の胸に擦り付けるとわたくしの髪をなでてくれます。


カインお兄様はもう片方の手をギュッと握ってくださいました。






「なら何が心配なのです?」




「それは・・・。」






歯切れが悪いですね。


わたくしが誰かに騙されるとか、虐められると思っているわけでもないなら一体?








「ナディアレーヌ様、お察しくださいませ。お兄様方はただのわがままでございます。


ただ自尊心が傷ついているだけでございますから。」








は?






ずーっと黙って控えていたのはわたくしの乳姉妹であり侍女でもあるサラ・ジャグリー。


なかなかの毒舌であり、なかなかの切れ味鋭い舌鋒の持ち主でもあります。


なにせわたくしの乳姉妹。もとは私達三人の乳母である侍女長の娘ですからね。


強いです、向かうところ敵なしです。


しかもそれはお兄様方にも発動。




「そうですそうです。だいたい二人共往生際が悪すぎますからね。わかってたこととはいえ


陛下を見てただヤキモチやいてるだけですからね。」




もうひとり呆れながらも苦笑いでなかなかな毒舌。


こちらはカインお兄様の乳姉妹で騎士でもあるロウ・ジャグリーです。


お兄様の乳兄弟であるということは私の乳兄妹でもあります。


そしてサラのお兄様です。


私には優しく厳しくでもとびきり大切にしてくれるもうひとりの兄。




といったところでしょうか?








「ヤキモチとは?」




わたくしが聞けばニヤニヤと笑いながらわたくしの近くまで寄ってきて兄達に引っ張られて


少し乱れた髪を直してくれます。






「レーヌ様が取られてしまうということですよ。」


「は?」


何をいっているのかしら?意味がわからないんですけど。




「レーヌ様はもはや取られる取られないではないんですけどねぇ。」


サラもニヤニヤと笑いながらお兄様達を眺めています。


その隙にロウの手をぱしっと叩き落としわたくしの髪を梳いてくれます。


サラに後で髪を結い直してもらわねば。




でもこの二人。




本当に仲良くお兄様達を追い詰めるのがすきですよねぇ。






「「どっちにしろ私(俺))達がお守りするからご心配なく!」」






そうなのです。


この国で一人きりというのは心配だったのでサラとロウを私の護衛と侍女として


置くことを許可してもらっています。






「さあ、レーヌ様。お兄様方を追い出しますので少しお休みしましょうね。」


「え?え?」


あっという間にサラは笑顔でお兄様たちを扉の方に誘導してしまいました。


えーと、お兄様たちに与えられている部屋は確か少し遠い場所だったような気もするんですが


まあ、サラが言うのだったらそれでいいのでしょう。


ロウが笑いながらお兄様達を引っ張っていくので、ロウの方もお部屋から出ていくみたいです。






パタン。








としまった扉の向こうでレーヌー!!という声がしたような気がしましたが。


まあ、たしかに少し疲れたような・・・。






ふうと息を吐き、夜の晩餐会をどう乗り切るのか。


それを考えるとただただ憂鬱になってしまっていました・・・。








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