第6話(完) 大魔王《オーバーロード》

「オヤジに言っておけや。今日からテメエは魔王廃業だってな」


 なんだかミィナちゃん、口調が変わってるよ? これが、本来のミィナちゃんなのだろう。


「バカな! 低級サキュバスだった姫が、ここまで強くなるとは!?」


「ダンペーによって、あたしは新たな力を得た。今、その力をダンペーに返す!」


 ミィナちゃんが、アークデーモンへのアイアンクローを解く。手でボクの両頬を挟み込み、ボクに口づけをする。


 ドドドド、とボクの身体に経験値が戻っていくのを感じた。


 なんだろう。これまでにない不思議な力の波動を感じる。闇の力っていうのかな? とんでもないパワーが、ボクの体内に流れ込んできた。でも、力のコントロールはうまくなっているみたい。経験値を得ては、エッチで排出するを繰り返していたからかも?


 装備も何もないのに、やたら強い状態になっている気がする。


魔王デーモンロードのオヤジを超える、最強のジョブだ。その名も、大魔王オーバーロードの誕生だ。オヤジに言っておけや」


 普段着だから、ボクにはなんの威厳もない。


「おお、なんと神々しい!」


 しかし、魔物たちがボクの前にひざまづく。


「まさか家での理由が、配偶者探しだったとは。ふさわしい相手を見つけたようですな。よろしい。あなたを連れ戻すのはあきらめます」


 アークデーモンから、殺気が消える。


「ですが、勇者以外の脅威が生まれたからには、我々も全力であなた方ご夫婦を仕留めに参ります」


「いいよ。次に会うときは、敵同士だね」


「そのお考えでよろしい。では、失礼いたします」


 魔物を引き連れて、デーモンが帰っていった。



「はあああ。やっと自由の身になった」


「ミィナちゃん?」


「騙していてゴメン。あたしは自由になりたくて、あんたを選んだんだ」


 なんだか弱気になって、いつものミィナちゃんらしくない。


「じゃあ、ボクを好きってこともウソ?」


「いや。それはホント。初めて会ったときから、変わらないよ」


「だったら、ボクもだ」


 内緒で買っておいた指輪を、ミィナちゃんの指に。


「許して、くれるん?」


「別に許すも何も、ミィナちゃんは悪いコトしてないよ。ボクに色々してくれて、感謝しているんだ」


「ありがとう、ダンペーッ!」


 ミィナちゃんに、抱きしめられる。


「したいね」


「うん。しようっ」


 ボクたちは家に帰り、お互いを貪りあった。


「でもせっかく大魔王になったのに、また経験値が最初からになっちゃう」


 一つになりながら、ミィナちゃんが懸念を口にする。


「だったら、また魔物退治をすればいい」


 ボクはいつも以上に、ミィナちゃんを突き上げた。


「やっぱ、ダンペーのそれ、大魔王級だね」

 

 



(おしまい)

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サキュバスに経験値を搾取してもらい、わざとレベルを下げて転職しまくります。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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