第5話 決闘者《デュエリスト》

 次の職業は、デュエリストを選ぶ。


「ジュエル? ダンペー、ジュエル買ってくれるん? 結婚するん? エヘヘェ」


 ミィナちゃんが、顔を赤くしながら照れる。


「それはいいね。でも決闘者デュエリストだからね」


 肉弾戦を得意とする戦士だ。

 この世界で、なぜか相当の不人気職である。


 剣闘士グラディエイター狂戦士バーサーカーという系統も考えた。が、どちらも重装備系の職業である。

 武器系で暴れるのは散々やってきた。

 スキルだけで立ち回ることはできないかなと思い、格闘に特化した軽装職業にしてみる。もっとも、魔力でリーチが伸びるなどの補助装備だらけだけど。


「参る! 【分身の術】!」


 気力で三体の幻を作り出し、ボクの代わりに戦わせてみた。


 おお、がんばってる。ちゃんと攻撃してくれているじゃないか。拳も蹴りも、十分通用している。


 大型の敵に、行く手を塞がれた。固い外殻に覆われた、巨大カマキリである。


「ボクもがんばらないと。【百裂拳】!」


 幻の腕を、気力で作り上げて、連打を浴びせた。


 カマキリが一つ腕を振るたびに、ボクは一七〇〇発殴る。


 ただし、直接攻撃するわけじゃない。魔力を注ぐことによって、攻撃にオーラが付与されていた。攻撃力の高いエネルギー波を撃ち込んでいるのだ。


 さすがのカマキリも、関節を粉砕されて倒れ込む。


 繰り出せる攻撃は、打撃だけではない。蹴りに斬撃のオーラも付与できる。


「くらえ、【波動弾】!」


 威力はかなり低いが、小型の魔力弾だって放射が可能だ。弱い魔物なら、この気弾で一掃できるだろう。


 このジョブはいいな。武器のレアリティに頼る必要がない、って利点がある。レアが落ちないストレスに悩まされない。

 ただし、重い武器を持つと攻撃力が下がってしまう。強い武器などを取っても、活用できないのは難点かも?


 しかし、防御は幻影がやってくれるし、攻撃のリーチも広い。攻撃力の低さを気にしなかったら、かなり強いジョブなのでは? 火力が不満なら、手数を増やせばいいのだし。


 いろんなジョブを試したけど、これが一番しっくり来るかも。


 能力が頭打ちになることと、武装集めが不要になるって最大のデメリットがある。

 だから今まで、不人気だったんだろうな。

 使ってみてやっとわかってきたよ。


「貴様の快進撃もそれまでだ、勇者ダンペー」

「な!?」


 強敵の、アークデーモンが出現した! スキルを大量に当てるが、ほとんど通用しない。経験値をミィナちゃんにほとんど吸われているから、力が出ない。


「姫を、魔王の娘をたぶらかす愚かな人間よ」


 え、ミィナちゃんが魔王の娘だって?


「知らなかったのか。その方が幸せかもな。人間よ、。この地で果てよ!」



「果てるのはテメエだこのクソ野郎」




 今のセリフはボクじゃない。


 デーモンが、ミィナちゃんのアイアンクローを食らっていた。

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