第4話 特殊工作員《コマンドー》

今日も、けだるい状態で目を覚ます。


「次にやるジョブは、コマンドーだよ」


 ミィナちゃんが作ってくれた朝食のオニオンスープに、パンをつけて食べる。


「え、マ●コ? ダンペー、まさかヤリ足りない? 結構ヤリまくったよね?」


特殊工作員コマンドーッ! 言い間違える要素あった!?」


 ボクは、ミィナちゃんにツッコむ。


 奇襲攻撃をかけるジョブのことを、コマンドーという。


 先手必勝で、ゲリラ攻撃を得意とする。相手方の体制を崩し、並みいる敵を粉砕するのだ。


 今日は、狩りの場所を変えた。強い魔物が多いという一〇階建ての塔へ。


 武装した魔族の戦士たちが、ボクらに襲いかかってきた。


 こちらも、トラップで相手陣形を崩していく。


 設置地雷、ボーラ投擲、他のジョブでは装備できない重火器を使用する。【セントリーガン】という銃撃タレットなんて、このジョブでなければ設置できない。撃つのはファイアーボールだが。


 とはいえボクがこのジョブでやってみたかったのは、狭い密室での格闘だ。映画とかで、相手の武器を奪ってゼロ距離から撃つアクションである。あれをやろうとしていた。


 玄室に入り、剣を装備したソルジャーと格闘戦となる。


 ソルジャーに飛びかかり、ナイフでノドを切ろうとした。


 相手ソルジャーも、長剣を脇へと刺そうとする。


 ナイフで剣を打ち払い、距離が離れたところにピストルで銃撃を撃ち込む。


 背後にいた敵も、ナイフで一撃。


 前のめりに倒れた相手を担いで盾にする。


 銃弾の雨をかわしつつ、こちらも反撃のアサルトライフルをぶっ放した。


 ホントはここで撃つべきは、サブマシンガンなんだろう。そんな便利な装備は、ファンタジー世界にない。


「すっごいっ。ダンペー、手慣れてる。サツリクを楽しんでいるみたい」

「そうかも」


 否定はできなかった。ボクはこういうことをやりに、異世界に来ている。


 ボクを召喚した相手は、何を考えてボクを呼んだのだろう?


 そう思うことが、たびたびある。


 しかし今は、ミィナちゃんと出会うためだったんだと思うことにした。


 魔王退治とかは、特に考えなくていいみたいだし。


「ボクって、ただの戦闘狂……バトルマシーンなのかな?」

「どうだろう。世界には貢献していると思うよ。めっちゃ強い魔物とかいっぱい倒してるもん」


 そのせいか、世界に徘徊する強い魔物たちがほとんどいなくなったらしい。


 ボクの享楽も、案外役に立っているのかな。


「でもさ、どうせならセックスに狂おうよ。同じ狂うならさ」


 家に帰って、ボクはまたサキュバスのミィナちゃんに乗っかられて、レベルを下げてもらう。


 ミィナちゃんに、経験値というごちそうを振る舞うことも、特殊工作員ボクの役目だ。

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