第3話 詐欺師《インポスター》

「次に試す職業は、【インポスター】だよ」

「イ●ポ!? 大丈夫なん、ダンペー!? あたしが吸いすぎちゃって、●ンポになっちゃった!?」


 どうしてこの子は、いちいち性的な意味で捉えるのだろう。


「いやいや、インポスターね! 詐欺師って意味!」


 いつものダンジョンで、インポスターの実力を発揮する。


「●ンポって、魔法使い系のジョブだよね? 危なくない?」

「任せて。あとインポスターね」

【変装の術】で、二人して魔物そっくりに擬態した。これで、相手はボクたちがどこにいるかわからない。

「【隠し腕】!」


 ローブの内側にある多関節の腕を伸ばし、短剣で魔物を仕留めた。虫の足のようなこの隠し腕は、ボクの魔力によって動く。


 インポスターは、暗器やトラップの専門家だ。アサシンと同レベルの上位ジョブである。アサシンやニンジャは、肉弾戦をメインにして戦う。対してインポスターは、魔法でトラップなどを仕掛けるのだ。


 多関節が間に合わないほどの魔物が、一斉に襲いかかってきた。


「【サークル・コンフューズ】!」


 ボクの周囲にいる魔物が、ボクの魔法で逃げ惑う。


 魔法で相手を混乱させたり怯えさせたりもできるのも、インポスターの特徴だ。


 逃げた相手はと言うと、ボクが隠し腕で仕掛けた【トラップ地雷】によって爆死する。


「すごいね。ほとんど触らないで倒しちゃった」

「そうでもな……ミィナちゃん、後ろ!」


 ボクが後ろを指差す。


 背後には、数体のオークが。


 胸の谷間から、ミィナちゃんはスリケンを取り出した。後ろを向きもしないで、正確にオークたちの眉間を打ち抜く。


「ミィナちゃんの方がスゴイや」

「あたし、実はクノイチなんだよね」


 周囲を覆う魔物寄せフェロモンも、クノイチのスキルなんだとか。


 サキュバスでクノイチなんて、もうなんでもありだな。


「でも、だったら一人で逃げられたんじゃ?」

「ダンペーの経験値を吸ったおかげ」

「そうなの?」

「それまであたし、弱っちかったから」


 弱いままだと、ロクでもない相手のエナジーを取らなければならず、それがイヤだったらしい。


「ダンペーがいてくれたから、上位ジョブも取れたし」

「ボクの方こそ、役に立ててうれしいよ。ずっと一緒にいよう」

「や、やっば、ダンペー。マジ反則。それ、詐欺じゃないよね?」

「本心だよ」

「やば。マジで帰ろう。ドレインしたくなってきちゃった」


 ボクも同じ気持ちだが、もう少しインポスターとして活動してみたい。レベルも十分に上がっていない。


 効率重視で、経験値を数倍ゲットできる宝珠と、ミィナちゃんのスキルで魔物を大量に呼んでもらっている。


 が、それでもまだ三時間はかかるだろう。


「わかったよ。ガマンした方が気持ちーもんね」




 たしかに、気持ちーかった。 

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