第4話

あれから1週間の時がたった、夏目は懲りもせず彼のもとへと行き続けていた


「きました」


「今日はなんだ」


「あら、珍しいですね、貴方から聞くなんて」


「…気まぐれだ」


「そうですね、特にありません」


「は?」


(え?理由ないの?もしかして…天気いいからかな)



出ました、この思考回路。頭はいいのに頭が残念、理解不能である。しかし夏目は特に何も無いのにこの屋上へと現れた。何故かそれは


「話したいから来たのです、邪魔ですか?」


「…いい加減死ぬぞ」


「しかしまだ死んでいません、最長なのでは?」


「前の両親は2ヶ月で死んだ、お前が最長では無い。と言うか話がないなら帰れ」


(もしかして死にたいの?それともそこでも勝ちたいの?)


こいつは何を考えているのだろうか、その関わってから死ぬまで記録で勝ちたいやつが全世界どこにいるというのだろうか

だが最長では無いのは事実だが1週間というのは持った方ではないのだろうか、今までは最短その日で、なんて言うのも少なくはなかった。それに比べればトップ3には入っているのではないだろうか


「話す理由…ですか。そうですね、ではお聞きしますがなぜ名前を呼んでいただけないのでしょうか」


「そういうお前も名前で呼んでないだろう」


「確かにそうですね」


何故か楽しげに微笑みながら夏目は彼の名前を呼んだ


八雲やくも志希しきさんとお話に来ました」


「はぁ…どうぞ夏目美亜さん」


2人は見つめ合う、肌白く大和撫子を彷彿とさせる黒髪を靡かせながら彼女、夏目は黒曜石のような綺麗な瞳で彼を見下ろし、対象に目元にクマはあるが俳優のような整った顔立ちをした綺麗な黒に白のメッシュを入れた雑ではあるが後ろでまとめられている髪を靡かせた彼、八雲は彼女を月のような不気味な黄色のような瞳で見上げながらここ数日間名前を呼び合わなかった2人が名前を呼び見つめあった。




ーーーーーーーーーーーーー



「ねぇ美亜、最近お昼ずっとあいつの所に行ってるけど大丈夫なの?」


「どうしたの?彰人、私は何でもないじゃないですか」


「いや、でも…まだこの学校ではなにか起こってないけどもしそれが美亜に起こったらと思うと、心配なんだ」


水原は夏目の顔を覗き込み目尻を下げ心配そうにたずねる。その心配ももっともであろう何人、何十人も不幸なことに死へと誘ってしまったのは彼の意志関係なく起こってしまった出来事ではあるがそれでも事実があるのだ心配にだってなるだろう。


「でも実際私はなにも起こっいないじゃないですか八雲さんが不幸を起こしてしまってるのが事実なのであれば私が死んでいないのも事実ではないですか?」


「そうだけど、ほら入学してからずっと一緒にいるから心配なんだよ…もしかして怒ってる…?」


「ふふっ、ごめんなさいね。心配ありがとうございます。何も私は怒ってないですよ?」


夏目は心配からなのか怒っていると勘違いしたのかとても泣き出しそうな表情の水原に対し微笑み、幸せな表情で怒っていないと伝える。

この幸せな表情を見ると水原のことが好きなのが丸わかりである、しかしそれでも気づかないのがこの水原という男である。


「心配してくれてありがとうございます、でも、行ってきますね」


「うん…気をつけてね」


そう言って夏目は約束をしているかの様子で屋上へと足早に向かっていった。


「彰人くんやっぱり行っちゃった?美亜ちゃん」


「うん、本当に心配なんだけど夏目さん楽しそうにしてたしそれ以上強くいえなかった…」


「もしかして、脅されてるとか!?」


もう1人のヒロインである春野結衣があらぬ疑いを掛けている。

春野は2大美少女の1人である。1年の時点で女子バスケ部のレギュラーを勝ち取る運動神経や明るい茶髪や綺麗な目、そしてとても運動神経とは思えないプロポーションを誇っている…夏目とは真逆である、そして友達思いなのも人気の一つであると言えるであろう。


「ちょ、声大きいって!」


「でもそーじゃなきゃありえないじゃん!あの美亜ちゃんが進んであいつの所に行くなんてありえない!」


「たしかに…そうかも」


「でしょ!?じゃあ追いかけよう!」


「えぇ!それは、ちょっと…」


「いーいーから!いくよ!」


そして鬼気迫る顔で迫られた春野に水野は拉致、もとい連れていかれた。



ーーーーーーーーーーーーー



「ところで八雲さんはなぜ関わった人間が死なれているのか分かっているのですか?」


「しらん、ただ俺自体が不幸体質なだけだ」


(知ってたら苦労しないわ!ただなーんか特定の人と関わりがあると一緒にいる時に大きい不幸が起こるようになっているのだけはわかる)


「なら調べませんか?私と、八雲さんで」


夏目はあろうとこか自分を身代わりにするような提案をしてきたのだ。だが生半可な覚悟では無いのは目を見ればわかる。

しかしなぜそんな提案をするのだろうか。そんな考えがバレていたのかいつもの綺麗な瞳ではなく死んだような目と乾いた笑いをして話を始めた。


「わたし、疲れたんです」


「たしかに水原さんのことは好きです。人を好きになったのはこれが初めてですね」


「私の家は父が社長、母が秘書という人生勝ち組のような家庭に生まれました」


「ただ幼い頃から私に継ぐのは貴方なんだから人よりも倍以上努力をしなさい、何事にも勝たなければ意味が無い、1位以外はゴミだと」


「それが普通でした、しかし水原さん…いえ彰人さんと出会って自然でもいいんだと、1番じゃなくても見てくれる人はいるんだと気づきました」


嬉しそうに、しかしとても儚げに夏目は語りつづける。夏目は疲れたのか自分の胸元まである屋上の柵まで歩きながら話し続ける


「それでも結果は2位続きでした運動も春野さんに負けて勉強はあなたにだからもっと、今まで以上に努力をしました」


「ただ結果は春野さんにもあなたにも惨敗です」


「死ぬ気で努力をしても勝てない、差をち縮めても勝てない大きな壁がありました」


「親にはもう見放され、努力をしても見て貰えず、1位をとってもそれが当たり前のようなそんな世界がとても」


「大嫌いです」


夏目は苦しみ続けていたのだろう、手には豆や、豆の潰れたあと、膝には擦り傷、薄く化粧をして隠してはいるが明らかに濃いクマがあった


「それとは別に私も昔別名があったんですよ?」


「別名…?」


「はい、あなたの死神とは真反対の【勝利の女神様】というものです」


「私がいるチームは勝てる、チームだけではなくそばに居るだけで、なんなら少しでも関わっていれば」


「父の会社が急成長したのも日本の経済的ななにかがあったとかそういう物ではなく私が生まれた次の日からなんです」


「他にも心筋梗塞で寝たきりだった祖父がお見舞いに行くと治ってしまったり」


「他にも私に告白を相談すると必ず上手くいく、私が乗っている車は事故にあっても負傷者がゼロ、それももう数え切れないほどありました」


「その代わり、私の願いは何もかないませんでした」


「なので貴方の特殊なことも共感できるんです、そしてその原因も」


夏目はこの事象、夏目ならば大きな幸運の起こり方。志希ならば大きな不幸の起こり方。それがわかっていると言うのだ。しかし、女神と言われながら彼女の目は虚ろで、光なんて何も見えなかった、そして彼女は徐にフェンスに寄りかかり語り掛けた。


「この事象の起こり方は…」


彼女がその口を開く瞬間


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