買い物

だだだっ。


「え、ちょっと…!!ヒナタちゃん⁉︎」


「待ってよ、どこ行くの??」


兄貴の声が背中めがけて飛んできて、

驚いた俺は危うく俺は階段を踏み外すところだった。


でも、まぁ、無事に一階の廊下に到達したけど。


だけどな、

背後を振り返ってからが、大変だった。


これは事故。

もう完全なる事故。


「きゃっ…!」


ヒナタのやつが脚を踏み外してた。


「ええー」


仕方なく俺は受け止めざるを得ない状況に陥る。


「ああー、最悪だ…」


思わず漏れた心の声。

兄貴にヤキモチ妬かれて今夜は口を聞いてくれなくなるかもしれないやつ。


ヒナタは無事に抱きとめた。


キスする寸前まで顔がきた。


「ああー、もう、助かったけど、

なんだかなぁ、、なんか、惜しかったなぁ」


ヒナタはなんだか、不機嫌だった。


「シンジ、おばさん具合悪いんでしょ?

買い物付き合ってあげる。荷物持ちね。

それからー、私、夕飯作ってあげてもいいけど?というか、作る!」


「いや、いいよ。

一人で行ける。

あと、俺が夕飯は作るし。おまえは家に帰れよ。遅くなるからさ」


「いやよ。ついていくんだからシンジの後!」


「ヒナタ。おまえなんで、

俺の後に付いてくんだよ?」


「だからー、荷物持ちだって!」


リビングに寄る。


母さんの顔色はまぁ、普通っちゃ普通だった。

まぁでも、なんか、体温計を脇の下に挟んでて。


ヒナタが夕飯を作ることを母さんに提案したら、


「やだー、悪いわよ、ヒナタちゃん」


なんて言ってたけど、


「あ、ちょっと熱があるかも」


なんて言ったもんだから、

ヒナタが、


「おばさんは休んでてくださいっ」


って強く言って、結局は。


「シンジと二人で協力して作りますから!」


なんて言葉も言っちゃって。


母さんは、

「それじゃお言葉に甘えようかしら」ってことになった。


外で。


「ああー、

何買ったらいいかあんまわかんねぇな」


「大丈夫。私が付いてんだから。

栄養のあるもの食べてもらえばいいわけよね。

それに、これからの時間はスーパーのタイムセールで色々と安くなるのよ。

半額になったりするから、いつもよりたくさん買って帰れるわよ」


ヒナタはそう言って、腕まくりをしてみせた。

なんだか、主婦みたいだった。


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