紫垣製菓  3





清二せいじよ。」


紫垣製菓のビルの一室だ。


会議室の様だが、昔から使っているようなテーブルと折りたたみ椅子だ。

そこに何人も人が座っている。


常務の紫垣がその前に立っているが

少しばかり不貞腐ふてくされた感じだ。


「清二よ、お前は赭丹導あかにどうの言う事を聞かなかったらしいな。」


紫垣は鼻で笑う。


「あんな奴ら。」

「赭丹導から鬼が出ると言われていただろう。

お前が鬼のかんざしを抜いたら髪が広がって結界を壊したそうだな。

そしてもう一人の鬼の術か、

地面に鬼の結界を作って逃げたんだな。」

「そうだよ、親父殿。」

「赭丹導はお前に近づくなと言っていたが、

それを無視したらしいな。」

「そんな事知るか。」


紫垣はにやりと笑う。


「鬼も玉を探しているんだろ。一つ持って行ったし。

あいつらに集めさせて取り上げればいい。

今みたいにガキどもに玉を吸わせて育てるなんぞ、

面倒臭くて俺はイヤイヤだよん。」

「清二、お前は私達の言う事を聞いていればいいのだ。」


紫垣はフンとでも言うように顔をそむける。


「俺は俺のやりたいようにやる。

親父達の言う事なんぞ聞けるか。」


紫垣は激しくドアを開いてそこを出て行った。


残った者はため息をつく。


「昔から何も言い返さない子だったがな。」

「赤い玉のせいだな。」

「私達の中で一番大きくなったからあいつに任せていたが……。」


その時だ。


会議室の奥にゆっくりと深いあか色が広がった。


彼らは振り向く。

そして立ち上がりそちらに向かって頭を下げた。





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