第十三話 12月7日

12月7日




 あれから僕はマスターの言葉を思い返しては考え、答えの出ない日々に窮屈さを感じていた。夏の暑さが残る日も、季節外れの台風の日も、枯葉が落ちきった日も、僕はただ頬杖をついて窓の外を眺める日々を送っていた。


 翠さんとの連絡は毎日のように行っている。


 しかし半月が三日月になるように、僕の中で何かが失われた。そしてそれは自分が感じているよりも、大きな存在だった。


 12月に入り、マフラーをして登校をする生徒が増えた。


 翠さんからの連絡で、冬休み直前の土曜日に再び会うこととなった。どこにいくかの話になると、それっぽいところ、とだけ返事が来た。


 大地に話をして、どこか良いところを訊くと、驚きを露わにした。


「お前、それクリスマスデートじゃねーかよ。冬休み直前の土曜日は確か24日だぞ」


 大地に言われて気づいた。


 しかし翠さんのことだ、予定の関係でたまたまイブに被っただけだろう。


 そんな妄想のような理屈を否定し、改めて大地に訊くと、イルミネーション一択だと言った。


 よく考えると大地も女の人とデートなどした事がない。不安は残るが、確かに他に思い当たる節も無いし、それで良いかと妥協した。


 その後、僕と大地でイルミネーションの有名な場所を調べたが、家からさほど遠くない遊園地が妥当だった。


 帰宅後、僕は翠さんへ連絡をして24日の約束を得た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る