私が悪いから

「……なんで、私寝てるんだっけ」


 目を覚ました私は思わずそう呟いた。

 えっと……確か宿を取って、街を適当に回ろうとしたら、私が人の波に流されて、それから……


「死にたい……」


 私は布団に潜り込み、そう呟く。

 いや、何言ってるの私!? しかも外で! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ほんとにもう……


「ユア?」

「起きた?」


 私がベッドで悶え苦しんでいると、フィオとナナの声が聞こえてきた。

 私は布団に隙間を作り、こっそりと二人の声が聞こえた方を見るつもりが、思いっきり目が合ったので、直ぐに隙間を閉じた。


「……おはよう」


 私は何気ない声で、そう言う。触れないでという意図を込めて。


「おはよう、ユア。それで、さっきのはなんなのか僕達に説明して欲しいなぁ〜?」

「おはよ」


 全然伝わってない! いや、伝わった上でかもしれないけど。

 

「気にしないで」


 顔の熱が冷めてきたので、ベッドから起き上がり、二人に向かってそう言う。

 

「そんなことより、ルーファは?」


 また掘り返される前に、この場にいないルーファのことを聞いた。単純に気になるし。


「……ルーファは外でユアと羨ましいことして、ユアを倒れさせたからっていう建前で今はいないよ」


 建前なんだ……ん? 私と羨ましいこと? ナナが羨ましいって言うってことは……全部バレてるってこと!?

 私はまた顔が熱くなっていくのを感じながら質問する。


「も、もしかしてだけど、なんで私が倒れたか知ってたりする?」

「ユアが誘惑した」

「し、してないから!」


 何故かフィオが変な勘違いしてるし。た、確かにしたいってあの時考えてたけど、私からしたわけじゃないし。

 と、と言うかなんでルーファは正直にした事話してるの!? 私が恥ずか死んじゃうよ……


「もしルーファが話さなかったら今頃ユアは僕たちに連れられて医者の前だからね?」


 ナナが私の考えを読んだかのようにそう言ってきた。


「どういうこと?」

「だって、僕たちが着いた頃にはもうユアが気を失ってて、ルーファに抱き抱えられてるんだもん。心配するよ……」

「ん」


 あ、そっか……じゃあ私が、こんな思いするのは自業自得か。


「ごめん」

「ん、気にしてない」

「フィオはこう言ってるけど、僕は気にしてるからね。だって、心配したのにルーファと、き、キスしてそうなったって言うんだから!」


 うっ、そう言われると何も言えない。

 私は改めてキスしたと言われた、恥ずかしさを抑えて、ナナに謝る。


「ご、ごめん」

「……僕も、したい。してくれたら許す……から」


 ナナが顔を赤らめながらそう言ってくる。


「え、ちょ……あ、後で、ね?」

「……なんで?」

「だ、だってフィオも居るし……見られながらは、恥ずかしいし」

「外でルーファとしたくせに」

「うっ、そ、それは……」

「やっぱり、私も気にしてる」


 ルーファとの事を出されると言い返せるわけがないので、覚悟を決めようとした所、フィオがそう言ってきた。


「……フィオ?」

「キスして、許す」

「ちょ、ぼ、僕が先だからね!」

「ま、待って! フィオはさっき気にしないって」

「言ってない」


 フィオは目を合わせないでそう言ってくる。

 いや、別に私だってしたくない訳じゃないよ? けど、人前では恥ずかしい……っていうのはもう通じませんよね。はい。

 でも、あの時はちょっとおかしかっただけで、今は普通だから、恥ずかしいのは本当なんです。


 そう考えていると、ナナがベッドに座っている私の太ももの上に、向き合う形で乗ってきて、手を首の後ろあたりに回される。


「これで、逃げられないでしょ? だから、ユアからして?」


 そう言ってナナは目を閉じる。

 だ、大丈夫。フィオのことを気にしなかったら恥ずかしくなんてない。フィオにはもっと恥ずかしい姿とか見られてるわけだし、今更だよ。うん。


「す、するよ」

「うん」


 あ、待って……そもそも、キスをするのが恥ずかしい。良く考えれば、最近は私からじゃなくて、ルーファかフィオからしてくれてたし。私からした時も、ちゃんと事前に覚悟を決めてしてたし。

 やばい……ナナの息遣いが聞こえてくる。いつもよりナナが近い。匂いを嗅がれる時とか、こんな距離感だったけど、私からキスをするって考えると、妙にいつもより色っぽく感じてしまう。

 可愛い。ナナ……好き。


 ナナと唇を重ねた……瞬間にナナの舌が入ってきた。


「んっ……」


 いきなりの事だったので、咄嗟に離れそうになったけど、ナナの腕が後ろに回っていたので、離れることは無かった。

 気がつくと私の腕もナナの腰元にあり、抱きしめていた。


「ユアぁ……」


 ナナがトロけた顔で私の名前を呼んでくる。

 やばい、力、また入んない。


「ナナ……」


 私がそう呼ぶと、ナナが私の胸辺りに顔を持ってきて、匂いを嗅がれる。

 いつもは、恥ずかしいけど、今は心地いい。

 やがて、満足したのか、ナナは離れて行ってしまった。


「あっ……」


 思わずそんな声が漏れてしまう。

 力が入らなくてナナにもたれかかっていた私は、ナナが居なくなったことにより、後ろに倒れ込む。


「次、フィオの番、でしょ?」


 あ、そうだった。……でも、もう力入んない。


「ナナ、脱がそ?」


 ん? ……今なんて?

 私は何故か一気に思考が冷静になっていくのを感じながらも、動くことは出来ない。


「え、い、いいの?」


 ナナは私の方を向いて、そう聞いてくるけど、いいわけが無い。


「顔、期待してる」


 し、してないから! 


「ユア、いい?」


 ナナが近づいてきて、私の耳元でそう聞いてくる。


「好きに……して」

「う、うん」


 

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