誕生日
あれから私は満足したナナに起こされて朝食を食べた。目が覚めてからのナナはさっきみたいな情緒不安定な感じじゃなく、普通……よりちょっと距離感が近かったような気がしなくもないけど、多分もう大丈夫だと思う。
そして今私たちは、もうバノルゴルのすぐ目の前にいる。
「……お祭りでもしてるの?」
「人の数が凄いですね」
「いい匂い」
遠目でも分かるぐらいに、人が多いし、屋台とかの数も凄かった。この距離でもいい匂いがしてくるし。
「僕知ってるよ! 今日が王様の生まれた日だから、どこの街もこんな感じでお祝いをしてるんだよ。多分王都はこの街より凄いことになってると思うよ」
王様の誕生日……私が知らないのはともかく、ルーファとフィオが知らないのは不味くない? 常識なんじゃないのかな? と言うかこんな大勢の人が祝ってくれるってことは、いい王様なのかな。ナナに聞いてみよ。ルーファとフィオは誕生日すら知らなかったみたいだから、知らなそうだし。
「この国の王様ってこんな大勢の人に祝われるぐらいいい人なの?」
「……どうなんだろう?」
「えっ、いい人だから祝われてるんじゃないの?」
「お金目当て」
フィオが突然そう言ってきた。
「どういうこと?」
「王の誕生日、普通知ってる。皆騒ぐから、商売しやすい」
フィオがいっぱい喋った! なんか……感動。取り敢えず頭撫でとこ。
私がフィオにありがとうといいながら頭を撫でると、フィオも嬉しそうにしてくれた。
私がフィオの頭撫でてると、ナナが後ろから抱きついて来た。
「うわっ、びっくりした……どうしたの? ナナ」
「僕も教えたのに、ユアがご褒美くれなかったから……もう勝手にユアの匂い嗅いでおこうと思って」
た、確かにナナにも最初王様の誕生日って教えてもらったんだし、し、仕方ないよね。べ、別に匂いを嗅がれるのがちょっと癖になってたりは全然しないけどさ!
「も、もういいでしょ? は、早く行こ?」
街の中に入った。入場料的なのは相変わらず払っていませんが。……この前の金貨を払おうとしたんだけど、金貨じゃダメなんだって。そもそも三人……少なくとも二人に止められない時点で、なんとなく察してたけどさ。
「これ、宿空いてるの?」
私は思わずそう呟く。
外からでも凄かったけど、中に入ると本当に人がいっぱいなのが分かる。
一応マップも見てみたけど、うん。言うまでもなく凄かった。一応赤い点の人もいたから、マップは開きっぱなしにしてある。これだけいっぱい人が居たら当然悪い人もいるよね。
「宿が空いてなかったら今日もテントですね」
まぁ、どうせみんなで寝るんだし、あんまり変わらない……?
「僕はユアと寝られるなら何処でもいいよ」
「ん」
……やっぱり変わる! お風呂入りたい!
「い、一応早く宿探そ!」
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