生きてきた中で一番幸せな日

 目が覚めるとルーファが私を抱きしめながら眠っていた。昨日までの私なら何とかして離してもらおうとしただろうけど、今日からは違う。私とルーファはちゃんと付き合ってるんだから。

 だから私を抱きしめながら幸せそうな顔で寝ているルーファに、ゆっくり起こさないように私も抱きついて頭を撫でる。


「ユアさぁん......」


 起こしてしまったのかと思い確認するが、寝言だった。

 可愛いなぁ......思わず昨日みたいに耳を触りたくなるのを我慢しながらもう一度眠ることにした。ルーファが起きるまで起きれないし起きたくもない。

 そして私はあっという間に眠りについた。




 私は違和感を覚え目を覚ます。その瞬間ルーファと目が合うが昨日のことを思い出し少し恥ずかしくなり目を背けるが抱きしめあっている手は離していないので、ルーファとの距離は近いままだ。


「ユアさん、おはようございます」

「う、うん。おはよう」


 私はルーファに挨拶をしながらもやっぱりまだルーファの方を見るのは恥ずかしいので目をそらす。さっきはルーファが眠ってたから良かったけど......起きてたら、やっぱり恥ずかしい。


「ユアさん、ちゃんとこっち見てくださいよ。もっとユアさんの顔がみたいです。それとも私の顔は見たくないですか? もう好きじゃないんですか?」


 ルーファが最後に少し悲しそうな声でそう言う。


「ち、ちがうから! 分かってて聞いてるでしょ......好き......だから、恥ずかしくて見れないだけだから......昨日のこと、思い出して......」


 ルーファだって昨日は恥ずかしそうにしてたくせに......それ以上に嬉しそうで可愛かったけど。

 そう考えているといきなり私の唇がルーファの唇に塞がれる。


「ーーッ」


 咄嗟のことでルーファから離れようとしたが、抱きしめあってる状態なわけで離れることはなかった。


 どれぐらいこうされてたのか分からない。何秒、何十秒、何分......分からないし、凄く恥ずかしくて体が熱いけど、ルーファのことが感じられて、凄く......幸せ。


 そしてルーファの唇が離れていく。


「あ......」


 おもわずそう声を出してしまい、恥ずかしさが増す。

 私はそれを誤魔化すようにルーファに話しかける。


「な、なんでいきなり......?」

「ユアさんが昨日のことを恥ずかしいって言っていたので、もう一度すれば恥ずかしさも紛れるかもと思いまして」

「ぎ、逆効果だから!」

「でも、今はちゃんと私と目を合わせられてますよ?」

「あ」


 ルーファにそう言われて気がついた。確かに恥ずかしさは増してるけど、ルーファの顔を見れるようになってる。


「そ、それに私も恥ずかしいことは恥ずかしかったんですよ? ただ、それ以上に、ユアさんの事を見て、触れたいって思ったから我慢できたんです。だから......ユアさんも我慢してください」


 そんなこと言われて我慢しないはずがない。私もルーファのこと見たいし、触れ合ってたいし。


「我慢する......恥ずかしい気持ち我慢するから......その、もう一回しよ?」


 そう言って今度は私の方からルーファの唇に私の唇を重ねる。昨日も今日もルーファの方からだったし、私にも紙より薄いプライドがある。

 ルーファは最初驚いた様子だったけど、嬉しそうにして抱きしめている腕に私が痛くならないぐらいに力をこめて私を感じようとしているんだと思う。なんでそう思ったのかというと私も同じことをルーファにしているからだ。


 それから本当に小一時間ぐらいルーファと唇を重ね続けた。なんでそんなに長いのかと言うと、私が終わろうとしてもルーファが終わらせてくれなかったからだ。私もそろそろやめないと、と思いつつもルーファの体温、唇の感触が心地よく、抵抗出来ずにそのままし続けた結果だ。

 

「はぁ、はぁ......私からしたんだけど......ルーファ、長いよ」

「ちょっとでも長くしたかったんです......ユアさん、あともう一回だけいいですか?」

「......まだするの?」


 私は照れ隠しでそう言う。


「嫌なんですか?」

「......そろそろお腹すいてきたからさっきみたいに長いのはだめだよ」

「分かってます」


 そしてまた私たちは唇を重ね合う。そうしていると無警戒の私の口内にルーファの舌が侵入してきた。私は咄嗟のことに反応出来ずにいた。当然ルーファは唖然としている私を待ってはくれずに私の舌がとルーファの舌が絡め合う。

 頭が真っ白になって何も考えられない。ルーファは私が言ったさっきみたいに長いのはだめって言葉を気にして舌を引っ込め、終わりにしようとしていたけど、私はルーファを抱きしめている腕に力を入れて離さない。ルーファが悪いんだ。こんなことしたら、気持ちよくて、お腹が空いてるとか、もうどうでもいいよ。もっとしていたい。

 私のそんな気持ちが伝わったのかルーファの舌が私の口内にまた侵入し、舌を絡め合う。


 終わる頃にはとっくに辺りが暗くなっていたので、出発は明日にして、もう一日泊まることにした。

 ほぼ丸一日宿のベッドで過ごしたわけだけど、今日は生きてきた中で一番幸せな日だったと思う。《ルビを入力…》

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