私がおかしいの?

「おはようございます」

「おはよう」


 目を覚ますとルーファに抱きつかれているが、流石に今日は昨日みたいなことはしない。


「朝食を食べに行きましょうか」

「うん」


 朝食は安定のスープとパンが出てくる。




「ご馳走様。美味しかった」

「よかったです」


 荷物(私はロングソードだけ)を持ってから、宿の人にお礼を言ってから外に出る。

 そして今私たちはいわゆる恋人繋ぎをしながら門へと向かっている。たまに少し手に力を入れて握りあったりしていると後ろに違和感を覚えたので振り向いてみると、私の服をちょこんといった感じで摘んでいる金色の長い髪に狐耳を生やした私と同い年ぐらいの美少女がいた。


「見つけた」


 私に向かってそう言う狐耳の子。

 急に何!? てか耳触りたい......じゃなくて、誰!? 正直マップは開かなくても歩いた場所は勝手に埋まっていくから街中なんかじゃ特に開いたりしないからめっちゃびっくりしたよ! 取り敢えず悪意があるのか確かめるためにもマップを開く。


 ん? えっと......これが私で、私の隣にあるピンクの点がルーファで......私の前にある点はこの子......だよね? ピンクの点は多分だけど私に好意を持っている人のはず......そして私とこの狐耳の子は初対面。初対面で好きになるなんて中々ないだろうしましては同性。バグったかな? だっておかしいよね? この子の点がピンク色に表示されてるなんておかしいよね。


「知り合いですか?」

「初対面......のはず」

「名前、フィオ」

「もしかしてあなたの名前?」


 私がそう尋ねるとコクリと頷く。ちょっとだけだけど無口キャラが出てくるラノベとか読んでてよかった。そのおかげでこの子......フィオが自己紹介をしてるって分かったし。


「私はユアだよ。えっと、よろしく?」

「あ、私はルーファです」

「二人、どんな関係?」


 私たちの手を見ながらそう尋ねてくるフィオ。

 そうだよ。このピンクの表示がバグじゃなかったとしても私とルーファは付き合ってるんだから。そう正直に言えばいいだけだ。私が何か言う前にルーファが答える。


「恋人です!」


 そう答えると同時にルーファが私の腕に抱きつく。フィオは私にそうなの? といった感じで首を傾げながら私を見てくる。


「そ、そうだよ。私たちは付き合ってるの」


 バグだったらバグでいいんだけど、もし違うのならそういうことは早めに言って諦めて貰うべきだ。


「ん。私もユア好き」

「えっ? ユ、ユアさん!? 初対面なんじゃないんですか!?」

「初対面だよ! フィオ? なんで私の事好きなの?」

「魔法凄かった。一目惚れ」


 魔法? 魔法って私が使ったのはあの川でだけ......あれ見られてたの!? と、取り敢えず落ち着こう。フィオが私の事好きなのだとしても私はルーファと付き合ってるんだからフィオの気持ちには答えられない。よし。そうちゃんと伝えよう。


「ルーファ。私もユアと付き合いたい」


 いやいや何言ってるのこの子。ルーファがそんな浮気を許すわけないでしょ。


「ユアさんの気持ち次第ですよ」

「分かった。頑張る」


 あれれ〜おかしいぞ〜? なんでルーファは私の浮気? 二股? を許そうとしてるの!?


「ちょ、待って待って!」

「どうかしましたか?」

「いやいや、どうかするよ! え? 私ルーファと付き合ってるんだよね?」

「当たり前じゃないですか」

「そうだよね? だったらフィオには悪いけど諦めてもらう流れじゃないの!?」

「私、魅力ない?」


 フィオが悲しそうに狐耳を垂らしながらそう聞いてくる。


「そ、そんなことはないよ? でも私はルーファと付き合ってるんだからフィオとは付き合えないよ」

「なんで?」

「なんでって......私はルーファと付き合ってるから」

「なんで? なんでルーファと付き合ってたら私と付き合えない?」

「そんなの......そんなの......法律で決まって......」

「ユアさん、そんな法律ありませんよ?」


 うっ、確かにここは異世界だし無いのか......てっ、ルーファはどっちの味方なのよ!


「ル、ルーファはいいの? 私が他の人とも付き合っても」

「ユアさんは付き合う人が増えてもちゃんと私を愛してくれますよね?」

「増やす予定はないけどもちろんだよ」

「だったら大丈夫です。他の人がユアさんを好きになる気持ちは分かりますし、もし、ユアさんが既に付き合っている人がいるからって理由で私が振られてたと考えるだけでも本当に悲しくて辛いです。それに割と普通のことですよ? 複数の人と付き合ったり結婚するのは。だから大丈夫です」

「ん。ルーファ、ありがと」

「大丈夫です! フィオさんのこと私も応援しますね!」


 いやいやいや......どう考えてもおかしいでしょ!


「ユア。一緒いい?」

「いや......それは......」

「私のこと魅力あるって言った。なんで嫌そう?」

「だ、だって私はルーファと付き合ってるし......」

「そればっかり。ユアおかしい。なんで一人だけ?」


 ......私がおかしいの? でも確かにこっちの世界の人達からしたら私がおかしいのか。


「わ、分かったよ! 分かりました! フィオも来てもいいよ。ルーファもいいみたいだし。でも私がフィオのこと好きにならない限りは付き合ったりはしないからね!」

「分かった。頑張る。それと、私はこっちの手貰う」


 そう言ってフィオはルーファが抱きついている方とは逆の腕に抱きついてくる。少しだけだけど膨らんでる胸が私の腕に当たる。それにルーファとはまた違ったいい匂いがしてきて......てっ、何を考えてるんだ私は!


「歩きにくいから。せめてフィオは普通に手を繋ぐだけにして」

「ずるい」

「ルーファとはちゃんと付き合ってるんだからいいの」

「むぅ」

「フィオさんもユアさんと付き合えれば甘くなってくれますよ」

「楽しみ」

「楽しみにしなくていいから」


 ほんと私はどうしたらいいんだろ。私のことが好きなフィオのことを私と付き合ってるルーファが応援してるって元の世界では絶対なかった事だよね。でもこっちの世界でなら複数人と付き合ったりするのって普通みたいだし......あー! もうわかんない! フィオのことはフィオを好きになっちゃった時に考える! これでいい!

 

 未来のことは未来の自分に任せ、私達は街を出るのだった。

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