討伐クエスト不始末記
ギルドから離れた森にて。
2人が受諾したクエストの目標、マイちゃんはゴブリン討伐でデルト君は薬草の採取だ。
「はぁぁぁぁあああ!ヒートクレイモアっ!!」
「Gi?gyaaaaa!!」
マイちゃんのクォーターパイクから噴き出す炎は1メートルほどの大きな剣となってゴブリンを焼き尽くす・・・まだ10歳なのにスゴイ鬼力だ。
「次は!・・・あぅぅ・・・もぅ立てない・・・」
倒れ込むマイちゃんを抱えるボク。他のゴブリンが来るのを待ち構えるもマイちゃんの出したスキルにビビって逃げ出したようだ。
「マイちゃん、鬼力を込めすぎだよ・・・そんなんじゃすぐに倒れてモンスターに殺されちゃうよ?」
「はぁはぁ・・・で、でもアタシ・・・鬼力を込めるといつもロジャーの顔が浮かんできて・・・」
殺意か、これが普通の子なら叱ってでも止めさせるべき事だ。強すぎる殺意には鬼力を高める効果もあるけど、思い詰めるあまり周りが見えなくなる。結果として暴走してしまうケースがあるからだ。
でも打倒ロジャーは今のマイちゃんの生きる目標になっている。それを取り上げるのは生き甲斐も取り上げる事になるだろう。要は鬼力のコントロールが出来ればいい訳だ。
「だったらさ、クォーターパイクを刺した地面を溶かして溶岩にする事はできるかな?」
「?どういうこと?」
「マイちゃんの使うヒートクレイモアはずっと炎を出し続けなきゃならないスキルだよね?だったら溶岩ならどうかな?熱が冷える前に相手にぶつけると少ない鬼力でイケるんじゃない?」
「!そうか、ならアタシやってみる!んっ・・・地面が溶けないよぅ」
「あわてない!まずは鬼力が快復してからだよ、ずっとスキルを使い続けると鬼力欠乏症ってコワイ病気になっちゃうんだからね??」
「うぅぅ・・・分かったよ、ちゃんと休むね」
鬼力欠乏症、生命エネルギーである鬼力が枯渇してしまうと体調がどんどん悪くなり最終的には死に至るそうだ。文字通り鬼力を使いすぎると起こる症状で今のところ対処の仕様がないとの事。主にスキルの使い過ぎで起こる現象だ。
この子達にはそんな死に方はして欲しくないから今のうちに脅しておこう。
「お嬢さ・・・マィ大丈夫?ほら、お水を持ってきたよ!」
「あ、ありがとデルト・・・んぐっ・・・はぁ、おいしぃ」
「うんうんエライよデルト君!それで薬草は集められたかな?」
「バッチリです!ルーブルさんから教わった草の見分け方は完全にマスターしました!次はポーションを作ってみます!!」
デルト君は戦闘よりもルーブルから生活知識を教わっているようだ。荷物持ちのルーブルはこういった事が得意。これからずっとマイちゃんを助けていくデルト君には必要な事だ。
ギルドに帰ってマイちゃんの倒したゴブリンの魔石と討伐部位、デルト君の回収した薬草を納品してお金をもらう。微々たるものだけど2人の力だけでやり遂げた事だ。喜びもひとしおだろう。
「ふぅ、お金が手に入ったからご馳走食べようよデルト!」
「いけませんよお嬢さ、マィ・・・ちゃんと節約しないとすぐに生活できなくなるよ?」
「むぅぅ、デルトったらつまんない」
「気持ちは分かるがデルト君のいう事も正しいぞ?ちゃんと彼のいう事を聞かないと冒険者はできないぞ?」
「むぅぅぅ・・・ルーブルさんまでぇ」
「あはは、だったら今日はボク達がおごってあげよう!2人の冒険者デビューだから特別だよ?」
「ウィルマさん、ありがとう!」
「す、すみませんウィルマさん・・・お嬢様のために」
ギルド内の酒場でメニューを頼むボクたち、お互いの料理を食べ合ってると受付の女の子が真剣な顔をしてやってきた。
「ライオネットのみなさん、マスターからお話があります・・・至急マスターの部屋までお越しください」
「え?いきなりだなぁ・・・話って何?」
「それはマスターに直接伺ってください・・・この子達は私が宿に送りますので」
「・・・よほどの要件だな、いくぞウィルマ」
「うん・・・じゃあマイちゃん達はこのお姉さんと一緒に先に宿に帰っておいてね?」
「分かった、先に帰ってるね」
「じゃあ受付のお姉さん、お願いします」
マスターの部屋。話を聞くなりボクの頭は燃え上がりそうだ。怒りでその辺の壁や床を叩きまくる。
「何だよそれ!やっぱりアイツらはアースドラゴンの前にトドメをさしておけば良かった!!くそっ!あの恩知らず達めぇ!!!」
「お、落ち着くのじゃ・・・お主も見とらんで早く相棒を抑えんか!」
「・・・こればっかりは俺もハラワタ煮えくり返ってるぞ、マスター?」
全くムカつく話だ。今日の昼間にギルド・グラーナにあのロジャー・ウルカンとお仲間のウィンドルにフィーレンっていう貴族様達から昨日のアースドラゴン討伐について抗議が来た。
その内容は・・・ウルカン領から逃げ出したアースドラゴンをボク達冒険者が勝手に倒した上に警備隊兵士達にケガを負わせたのが理由。
こんなのあるか!全然事実と違うじゃないか!!アイツラはアースドラゴンにふっ飛ばされて逃げたクセに、全部ボク達のせいにするなんて!
オマケにロジャー・ウルカンは自分だけでなく仲間の貴族を味方につけてまで抗議してきやがった!!
貴族様達の要求は、アースドラゴンの魔石の引き渡し・多額の賠償金・ボク達ライオネットの身柄引き渡しの3つ・・・3つとも呑まれない場合はギルド・グラーナの国外退去を辞さないとの事だ。なんとも強欲タレの貴族達だよ!
「アースドラゴンはギルド正式のクエストだったハズ、その点を指摘して抗議できないのか?」
「うむ・・・あのクエストは街道を利用する商人達から出たもの、しかし商人と貴族三家では話にならん・・・要求を覆すことは難しいのじゃ」
「構う事はない!ボク達で乗り込んでやろうルーブル!!誰にケンカ売ったのか思い知らせてやる!!!」
「まったくしょうがないなウィルマは・・・身柄引き渡しの時にどれだけの数を奇襲できるかだな?投げナイフと小盾、毒薬と痺れ薬に眠り薬・・・なるだけ持ってきてくれマスター」
「ま、待つのじゃ!お主ら2人っきりで本気でこの国の貴族と戦うつもりか!!この国で貴族が討たれれば国内の貴族達がこぞってお主らを処刑しにくるぞい!無駄死にはよすんじゃ!!!」
コンコン
控えめながらドアのノック音が響く。入ってきたのは受付の人だ。
「バカ者!今は人を入れるなと言ったじゃろうが!」
「申し訳ありませんマスター、こちらのお客様が至急ご用があると・・・」
受付の後ろから現れたのは・・・ウルカン領のクエストの依頼人だった執事のラヒルって人だ!
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