第10話:エリの答え


 ドロシーさんは、そのまま『魔法の鋏』で細部の説明を受けることになった。正確にはさらに面接が入るみたいだけど、あの調子ならきっと大丈夫だろう。


 私はザルドと一緒に、先にグランツ商会に戻ってきた。

 『家政婦』を推していたザルドに何か言われるかと思ったけど、ザルドはばしっと私の背中を叩いただけである。

 むしろ親指をぐっと突き出されて、


「やるなっ」


 と言われた。

 『適職』って言い方していたけど、ザルドはザルドで、夢を諦めろとか言うつもりはなくて。

 プロとして向いている仕事を勧めたってことなのだと思う。

 今、私の前にまたお茶がおかれた。

 猫耳を生やした少女が、一礼をして下がる。


「大したものだね」


 商会の事務所で、グランツさんは角のある顔で微笑んだ。


「……君の力は本物だと思う。誰かの本当の気持ちを知り、おそらく、それに応じた『天職』を見いだす力があるのだろう」


 前世で、私は仕事で心も体もすり減らした。

 でも、今は――。

 お仕事で誰かを助けたい。

 今日見てきた人を思えば、一日の大部分を過ごすお仕事は、少しでもいい時間であった方が幸せなはずだもの。

 私は顔を上げた。


「……グランツさん、私、ここで働きたいです」


 前世のこととか、悔いとか、色々ある。

 でも胸を張ってそう言った時、私は『田村絵理』から『グランツ商会のエリ』になったのかもしれない。

 猫耳の少女が、ぱんと手を合わせる。

 グランツさんが、額の角を押さえながらからからと笑った。


「ふふ、君は本当に優秀だ。今日だけで3人の就職を決めた。1人はゴブリンのイトウさん、スライムのドロシーさん、最後は君だ」


 後ろの扉が開いて狼顔のザルドが入ってくる。


「またお客さんだが……」


 私はグランツさんと握手を交わし、ザルドに振り向いた。


「ぜひ、会わせてください!」


 この時から、私は――異世界の、魔物の、お仕事探しを手伝う助言者アドバイザーになれた。

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あなたの素敵な縁の糸 ~異世界転移して『ご縁』が見える力を持った私が、モンスター達の再就職を支援する話~ mafork(真安 一) @mafork

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