エピローグ・シャッターチャンスは無限大!

「食料に、服に、路銀に地図! 色々貰っちゃったね!」


「助けてくれたお礼にしては、結構豪華だね。ファンからの贈り物ってことで、ありがたく使わせてもらうことにしよう」


 それから程なくして、ザルードの町を出た二人は、広場に集まっていた人々からの贈り物を確認しながら話しをしていた。

 放浪の旅を続けるにしても暫くは飲み食いには困らなそうな量の食料を背負ったライオは、地図を広げるモモへと声をかける。


「君が見てもどこがどんな町なのかわからないでしょ? それとも、何か発見でもしたの?」


「ううん! でもとりあえず海がある町に行きたいなって! 水着といえば海! 浜辺でのグラビア撮影とか、王道にして鉄板でしょ!?」


「あはは、確かにそれは魅力的だね。それじゃあ、目的地は海ってことにしようか!」


 ざっくりとした、だけれども明確な目標を見つけた二人は、荷物を背負って海へと進んでいく。

 その道すがら、モモはライオへと罪悪感を抱きながらこんな質問を投げかけた。


「よかったの? お世話になった修道院をあんな形で抜けた上に、長年住んできた町から飛び出しちゃって……」


「いいんだよ。こういうふうに自由に生きていく方が楽しいし、胸を張った生き方だって言える。だから気にしないで、モモ。君は何も悪くないからさ」


 そう言いながら、自分の首に下げてあるカメラを手に取ったライオが、ファインダーを覗き込む。

 そこに映る景色とモモの姿とを見つめた彼は、頬笑みを浮かべると彼女へとこう自分の気持ちを伝えた。


「モモ、僕はもっと君のことを見たいって思う。君の魅力的で、素敵で、綺麗な姿をこのカメラで撮ってみたいって、そう思ったから君と旅に出ることにしたんだ。だから笑って。僕がと思うのは、君が笑ってる姿だからさ」


「……ふふっ! しょ~がないな~! 専属カメラマンにそこまで言われたら、とびっきりのモモちゃんスマイルを見せるしかないね! よ~し、頑張るぞ~!」


 真っ直ぐなライオの言葉に迷いを振り切ったモモが、少量の荷物を手に先へ進む。

 彼女の背中を見つめるライオは、これからの旅が大変ながらも楽しいものになるという確信を抱いていた。


(きっと、色んなことがあるんだろう。トラブルも失敗も数多く経験すると思う、でも――)


 絶望の果てにこの世界に辿り着き、グラビアアイドルになるという夢を掲げて活動するモモのことをずっと応援したいと思う。

 モモの手助けをして、輝く彼女の姿をこのカメラに収めながら、いつかその夢が叶うまで……いや、叶ったとしても傍に居続けたいと願う。


 そこにきっと、自分が生まれてきた意味が……神々が自分と彼女を引き合わせてくれた理由があるはずだからと思いながら、ライオ再びファインダーを覗き込んでみせれば、それに気づいたモモもポーズを取って対応してみせた。


「よし! 旅立ちを記念して、一枚いっときますか! というわけで、キャストオフ!」


「うわっ!? み、道の真ん中でいきなり水着にならないでよ!」


「いいじゃん! こういうアンバランスな非日常的なシチュもそれはそれでグッとくるものがあるでしょ?」


「う、うぅん……」


 舗装された土の道と、周囲に広がる緑の草原。 

 そのど真ん中で服を脱ぎ、オレンジの水着姿になったモモの姿は確かに心にくるものがある。


 彼女の思い通りになっていることが悔しいと思いながら、まだまだモモの大きな胸や尻を見ると緊張してしまう部分は治らないなと思いながら、ライオはカメラを彼女へと向け、息を吐く。

 満面の笑みを浮かべたモモは、そんな彼へと元気いっぱいにこう呼びかけた。


「かわいく、綺麗に、そんでもってセクシーに撮ってね! 期待してるから!」


「わかってる、わかってるよ。君はいつだって素敵なんだから、どう撮ってもそうなるさ」


 えへへ、と照れ臭そうに笑うモモの頬がほんのりと染まった瞬間にシャッターを切る。

 とてとてとこちらに歩み寄る彼女へと、今しがた撮影したばかりの写真を見せ、反応を窺う。


 緊張と、不安と、ちょっとした期待を抱きながら評価を待つライオに向け、弾けるような笑みを浮かべたモモはサムズアップをしながら、明るい声で言う。


「いいね、最高だよ! これかも沢山いいところ見せちゃうから、シャッターチャンスを逃さないでよね、ライオ!」


 その笑顔もきっと、逃したくない光景なのだろうなと思いながら、ライオは新しく始まった人生と長く続く旅路へと思いを馳せ、目の前の少女へと笑みで答えを返すのであった。





※教訓・自分の人生を決めるのは他の誰でもない自分自身! 後悔のない人生を送ろう!

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童貞修道士、異世界転移してきたグラビアアイドルの同居人になる 烏丸英 @karasuma-ei

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