第12話 未知野灯(フォローしましょう)

「あ〜、まずかった」


 ひながゲホゲホせき込んでいると、遠くから誰かが駆け込んできました。


「どうしたの? 大丈夫?」


 ひなは「大丈夫です」と答えながらまたせき込みました。

 落ちているチョコバナナを見たその人は、


「ああ、これ食べたのね。それは災難だったね」


 と、バナナを拾ってはゴミ箱に捨てました。


「あなた、新人さん?」


「はい。未来ノひなといいます」


「ひなちゃんね。私は未知乃灯みちのあかり。みちのんでもあかりんでも好きなように呼んで」


「じゃあ、みちのさん」


「かたいなぁ。みちのんでいいのに。だいじょうぶだった?」


「はい。大丈夫です」


「気を付けてね。ここら辺は玉石混交の新人フィールドだから。ところでひなちゃんは来たばっかり? なにか作品書いた?」


「今、童話を書いている最中なんですが……」


「童話! 見せて見せて!」


「まだ出来上がっていないんです」


「そう。じゃあ、私のこのキャラメル食べてみて。私も童話書いたの」


 みちのはそう言うと、おいしそうなキャラメルをひなに手渡した。


「わあ、おいしそう。いただきます。……………しょっぱい!」


「塩キャラメルだからね。よく噛んでみて」


「あ……おいしいかも。悲しいお話。でもすてき。なんで?」


 ひなは、キャラメルを食べ終わって満足しました。


「童話なのに悲しくていいの?」

「悲しい童話はいっぱいあるわよ。『人魚姫』『赤い蝋燭と人魚』『ごんぎつね』『泣いた赤鬼』ほら、たくさんあるでしょ」


「そういわれればそうですね」


「さ、良かったと思ったら色を塗ってね」


 そう言って、♡と☆☆☆の紙を出しました。

 ひなはよく考えて💖と🌟☆☆を塗りました。


「星1つ? ありがとう!」


 みちのは小躍りするように喜びました。


「星ってそんなにうれしいの?」


「うれしいわよ。1つでももらうと注目トピックに載るかもしれないし」


「注目トピック? なんですか?」


「うーんとね、こんな作品読んでみませんかって広告みたいなものかな? かくよむの住人に宣伝されるのよ」


「そうなんですか」


 ひなはそのすごさが、今はよく分かっていません。


「じゃ、書いたら読みに来るから。フォローしておくね」


「フォローですか? フォローって何ですか?」


「本当に来たばっかりなのね。そこのクマは何をしていたんだか」

「ひなは君が初めて会った人間なんだよ」

「そうなの?」


 みちのは、「じゃあ仕方ないか」と言って、屋台から紙を取りました。


「これがひなのフォロー先。私がもらうわ。これで私は、いつでもあなたのお店からお取り寄せがしやすくなったの。はい、これをどうぞ」


 みちのはひなに連絡先を渡した。


「あなたがこれを受け取ったらフォローバックが成立するの。これでお互い行き来が楽になるわ。これでお友達ね」


「友達! 本当に?!」


「そうよ。ひな、仲良くしようね」


「はいっ!」


 こうして、ひなに初めての友達ができました。



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