おまけ2 3年後、ハルト・ウィルランド王とサチ・ウィルランド王妃が誕生します

 「なぁ、ハルト。」

 「ん?」

 「3年って、そんなキレイに記憶がなくなるもんなのか?」

 真顔の問いに苦笑い、

 「まぁ、いろいろ記憶を改竄して、思い込んで、都合のいい世界を頭の中に作るには、ねぇ?」と、わかったような、わからないような返事でお茶を濁した。

 「戴冠式から1週間か。」

 「ああ。」

 「馬鹿だなぁ、全く。」

 「ああ、馬鹿だ。」

 先王が譲位して、ハルトが王になって1週間。

 王都の北の、グラン侯爵が反乱を起こした。

 グラン領は騎馬兵が有名だ。

 ただ今王都に向けて、5000騎ほど行軍中。

 王の代替わりは、若返りにより強くなったと見るか、経験値不足で弱体化したと見るか?

 グランは後者と見たのだろう。

 イオが傍にいる事実も忘れ……

 「って言うか、オレの存在無視するって、迂闊を越えてるぞ。死にたがりか⁉️」

 「多少老齢によってとぼけてきてるのかも?」

 ハルトも大概きついのは、愛する妻を罵った事実を、決して忘れていないからだ。

 もちろんイオも、グランは嫌い。

 今王宮軍は、北の侯爵領の縁に展開、敵が来るのを待っている。

 「悪いな。武勲、無理かも。」

 イオが当たり前に兵士に告げると、

 「ダイジョブです‼️」

 「生きてる方が重要でーす‼️」と返る。

 国内最大戦力が共にあり……

 完全な遠足気分だった。


 一方、悲壮なのはグラン侯爵。

 彼はハルトが王になった時点で、悲惨な未来が見えていた。

 死ぬほど嫌われているのは自覚している。

 まぁ、新王も好き嫌いで差別などしないだろうが、『貴族のための政治はしない』宣言もあり、今まで通りは期待出来ない。

 ならばと、反乱を起こした。

 準備に3年。

 イオの存在は怖いが、3年経つと、

 『あれは夢だったのでは?』と、脳内でごまかす事が出来る。

 やっぱり少し……

 とぼけているのかもしれない。

 判断力のある部下は逃げ、逃げられなかった血縁と、思いきれなかった、または逃げられる立場になかった部下達と……

 それでは心もとなくて、新戦力を得て、グランは戦場に挑んだ。

 

 実は……

 ここまでの経過は、全て王家に筒抜けている。

 王妃様が鑑定士な事実も忘れている。

 鑑定士としてB級……

 本当ならA級相当の魔力を持っているサチが、流れを全て掴んでいた。

 ちなみに、家族構成はイオのところと一緒。

男女の順番が違うだけだ。

 2歳の王女と、1歳の王子。

 グランのみ意見が違うけど……

 ウィルランド王家は安泰なのだ。

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