第2話 脱兎の如く

何故逃げるのか?

ゲーム転生にありがちな知識無双すれば良いじゃないって?

それは無理だ。物理的に。

まず、俺の現在地は大陸最南端の小国アイン王国王都アルテナ、主人公の故郷にして、約一ヶ月後の主人公ことこの国の第二王子の誕生日パレード兼ゲーム「聖なる神と希望の王」のオープニングで滅亡する場所だ。

ならばその滅亡を回避出来ないのか?

結論、無理。

第二王子の誕生日パレードと時を同じくして、邪神の一部が復活し、主人公聖なる神の眷属的なナニかを発見、取り敢えず潰しとくかと魔物を大量に送り込んで来たのが滅亡の要因だ。因みに、それ以外にも邪神復活の影響が世界各国に出ている。アイン王国程ではないので、それなりに追い詰められてはいるが、抵抗はしている。

まぁ、兎も角、このゲームは魔物の海となった王都アルテナを背に主人公が逃げるとこから始まる。

流石にゲーム知識があろうと、たった1ヶ月でただのモブが邪神復活をどうこうは出来ない。

次に、ゲーム知識無双が無理な理由だが、主人公は、王都アルテナからの逃亡後、仲間を集めながら、道中で大陸中央に位置する帝国が魔物を殲滅するため、兵を募っていると聞き、帝国を目指す事になるそして、その旅の道中当然ながら邪神が邪魔を入れてくる。それを躱し、時に撃退しながら帝国に行くまでがチュートリアルだ。

そう、何が言いたいかと言えば……

「最強武器とか最強スキルって全部アイン王国じゃない場所に有るんだよねぇ」

生憎、クソゲーではないので、そういう最強武器を最初の街付近に設置とか馬鹿な事はしてない。

なので1ヶ月でそれら最強武器最強スキルを取ってきて、王都アルテナに戻ってくる事は不可能だし、そもそも、そう言う強いのはギミックで守られているし、それを解除するのに必要な技能が無いので、物理的に不可能だ。

「唯一の救いは、ゲームで主人公が使ってる便利機能は殆ど使える状態ってことかね」

チュートリアルとかストーリーとかをクリアしていくと使える様になる便利機能はその殆どが解放されていた。例えば、合成強化や、ステータス再編などである。

そして、俺はなけなしの金で馬車に乗り、半ば夜逃げ同然に帝国を目指していた。

なぜなけなしなのか?

課金したからだ。

いやぁ、ガチャの画面見たらもう、我慢出来なかったよ。何やらこっちの世界の金が使えたので馬車台と食費だけ確保して後は突っ込んだ。

とは言え、このゲームのガチャ、聖装という、既存キャラを強化する為の装備の様な者が出てくるので、俺に利益は、現状では全く無い。なぜならこれが装備出来るキャラは限られており、俺は装備出来ないからだ。

気付いた時には後の祭りだったが。

しかし、ガチャした事で合成強化ようの素材が揃った。

星六が最高レアリティなので、星四以下を全て自分の強化に回す。


役職 無職の旅人

レベル72

クラス 未設定

ステータス

生命 100

魔力 35600

筋力 100

耐久 100

瞬発 100

総合能力 35900

成長値 500

スキル

生活魔法レベル1

斧術レベル5

火魔法(弱)レベル1

水魔法(弱)レベル1

土魔法(弱)レベル1

風魔法(弱)レベル1

剣術(弱)レベル1

雷魔法(弱)レベル1

神聖魔法(弱)レベル1

派生スキル、

伐採レベル3

魔力全振りである。

まぁ、これにはれっきとした理由が存在する。

近接戦闘に使用するステータスは生命、筋力、耐久、瞬発と多いが、遠距離で魔法をペチペチと打つならば魔力のみで良いのだ。

只でさえ総合的には世界最弱クラスなので、出来ればステータスをバラけさせたくない。

さらに、中々の量の聖装を強化に消費したため、本来はごく低確率で発生するスキルの継承をかなりの数出来たらしい。そして、この(弱)と言うのは、適性が低い場合の表示だ。一応、適性を上げるアイテムもあるが、例のごとく遠い場所だ。

「って、雷魔法に神聖魔法だと!?……あっすいません。何でもないですぅ……」

驚きのあまり声をあげてしまうが、他の客に迷惑だと気付き謝罪した。

これ程までに俺が驚いた理由は、この2つの魔法が、特定のキャラしか扱えないことにある。

曰く、ただのスキルの皮を被った固有スキル。

主人公でさえ、使えないのだ。

それに、雷魔法は「火力最強」の魔法。ゲーム中のありとあらゆる攻撃手段の中で、「最強」を誇る。異世界の雷神の娘が使う魔法だ。

神聖魔法は回復、後方支援において最高クラス。当代の聖女のみが使える魔法だ。迷った一枠があるなら聖女を入れておけば良いとは誰が言ったか。まぁ、兎も角、これらの魔法は固有じゃ無いのにほぼ固有スキル同然の強さを持つイカれた魔法なのだ。

まぁ、その二人には、さらに聖女特有の特性、雷神特有の体質、それぞれの専用武器、固有スキルと優遇のオンパレードなのだが。

いや、今はそんな事はどうでも良いんだ。

もし、全てのスキルが、俺にとれるのだとしたら────

もし、そうならば、

この圧倒的低ステータスを覆して、成れるかも知れない。

「最強」に。




運営「この娘もう固有スキルあるなぁ。でもこの魔法はこのキャラにしか使えない設定にしたいしなぁ。せや!普通のスキルだけどこのキャラにしか使えないって設定にしたらなんか特別感出るやろ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る