第3話 路地裏での出会い

なれるかも、と言っても、最強と言うのはそう易いものでもない。

例えば、俺のステータスの中の最高値である魔力の35600。

例の雷神の娘はレベル10でこれに近い数値を出すだろう。まじもんの怪物だ。

それに、最強になったところで、俺が不用意にストーリーに介入すれば、どんな不都合が起きるか分かったもんじゃない。

ゲームと違い、常に動き続ける世界の全容を把握し、修正出来ると思える程俺は傲慢ではない。

しかし、魔物が跋扈するこの世界で、安全マージンをとるには、ラスボスを抜いて最強位にはなっておきたい。

ストーリーに関わらず「最強」になる為には、どうすれば良いか?

メインストーリー終了後に解放される要素を使う。

と、なればまずはこの低適性をどうにかするためにアレを取りに行く必要がある。

その名は「覚醒の宝珠」。

適性を永続的に一段階上昇させるアイテムで、ストーリー上では一つしか入手出来ない。しかし、ストーリークリア後に解放される、全100層のダンジョンに配置されている10層ごとのボスで確率で落ちるようになるアイテムだ。

今、俺は馬車に揺られてそのダンジョン付近の国へと向かっていた。


◆◆◆


日数にして、約10日後、俺はアイン王国の二つ隣の国、海洋国家ルティアに着いていた。

そして、何故か路地裏でフードを被った少女(?)に何処か見覚えのある刀を突き付けられていた。

「あまり手荒な真似はしたくありません。神聖魔法について知っている事を全て話して下さい」

もう既に手荒じゃね?と思わなくもないが、そこについては触れるまい。

にしても神聖魔法か。俺は前世の知識故に知っているが、あの魔法は聖女に代々受け継がれる秘伝の魔法だ。一般人はその名前すら知らず、聖女の奇跡程度の認識でしかない。

その名前を知っていて、尚且、その詳細を知りたがっているとなると、キナ臭い。

「いやぁ、ちょぉっと何の事言ってるのか分かんないっスネ、自分」

媚っ媚の顔面を作り、誤魔化してみる。

「嘘だな。貴方はあの時、何やら驚愕したようにその名前を叫んでいた。それに雷魔法という聞き慣れない魔法もだ。貴方については詮索しない。しかし、私も譲れる者がある。神聖魔法について、教えて頂きたい」

交渉っていつから刀を突き付けてやるモンになったんだっけ?

え?人が生まれた時から?確かにな。

……それはそうと、何処か見覚えのある刀に、神聖魔法について知りたがっている女……

あっ

「お前…葉月か?」

葉月朔夜。聖女や雷神の娘と肩を並べて、三大優遇魔法職と呼ばれる最強候補の一角。まんべんなく高いステータスに、かなり強い固有スキル、魔法職とか言われているが、そもそも公式では近接キャラとして紹介されているので近接でも上位に入る強キャラ。しかし、彼女を最強足らしめているのはスキル、魔法剣。神聖魔法や雷魔法のように、ただのスキルの筈なのに、彼女しか使えないこのスキルによって、彼女は魔法職最強候補と呼ばれたのだ。

「……何故、私の名前を?」

あ、ヤバい。物思いに耽ってる場合じゃ無かった。

顔は隠されていて見えないが、その眼光に剣呑な色が見え隠れしたのは俺でもわかる。

「あ、あぁーいやぁ。うぅん」

ヤバいヤバい。何か思い付け!俺!

落ち着け、落ち着くんだ。彼女の情報を思い出せ、黒髪巨乳、胸のサイズGカップ性癖は…ってそんな事はどうでも……

「あの?」

あ、ヤバい凄い睨んでるぅぅ。

怖い怖い。

「えぇとえぇと」

神聖魔法、そうだ!それだ!

「せ、聖女様から!貴女が神聖魔法について聞いて回っていると!お聴きしました」

「はぁ?私が聖女様とやらとお知り合いなら、貴方はこうして尋問を受けていないと思うのですが?」

「そ、それは、神聖魔法の予知で貴女の事を知り、不憫に思った聖女様が私を使いに出したのです!」

言った後からヤバいなぁ、と。何せ嘘八百だ。

神聖魔法に予知なんて便利機能はないし、俺は聖女の使いでも何でもないただの無職の旅人だ。

「嘘ですね。私の直感がそう告げています」

あ゛ぁ゛ぁ゛ごい゛づ直感スキル持ちだったぁ!!

……あれ?詰んだ?

詰んだかー。うーん。この距離だと流石に勝ち目なさそうだしなぁ。

オワタ\(^o^)/。

あ、いや、待てよ。

「ってかアンタ、俺の事詮索しないって言ってなかった?自分の言ったことひっくり返すの?」

もう良いや、どうにでもなれ。

「それは……確かに」

「じゃあ、さっきの「何で私の名を知っているか」って質問、神聖魔法の事から外れてるし、詮索じゃない?」

「……ですが、貴方は聖女様の神聖魔法で私の事を知ったと言いました。完全に外れてはないはずです」

「嘘だよ。神聖魔法に予知能力は無い。アンタの事を知ってたのは俺個人のツテだ」

これなら嘘にはならない筈だ。

「……どうやら本当の事のようですね。では、さっさと神聖魔法について」

「やだね。タダでは」

彼女が要求を口にする前にそれを拒否する。

「は?殺しますよ?」

「へぇ?俺の事殺したら、神聖魔法についての手掛かり無くなるけど、良いの?」

「……」

「それに、いつまでもこうしてたら他の人に見つかって通報されるかもよ?」

「っ!」

持ち主の激情のままに俺を刺し貫こうとする流麗な刃。

普段の彼女ならば、こんな行動は取らないであろうが、今は彼女のがかかっているのだ。イラつきもするだろう。

「おいおい、ちょっと待て、何も教えないとは言ってないだろ!タダで教えられる情報じゃないって言ってんだ!それは調べてるアンタが一番分かってるだろ」

「……っむ」

「分かったら交渉の席に着く意思を見せろ。その物騒な刀をしまえ」

「…分かりました」

「よし、じゃあ場所を変えるか」

「良いでしょう」


◆◆◆


場所は汚ねぇ路地裏から一転、小綺麗なカフェへと二人は移っていた。

「それじゃあ、お前の要求を聞かせてくれ」

「神聖魔法の情報だ」

「具体的には?」

「その効果、及び使用者。使用者と手っ取り早く会う方法だ」

「それくらいなら良いぜ。じゃあ、こっちからの要求だな」

「出来る限りの事はしよう」

「おいおい、まだ何も言って無いのにそんな事言って良いのかよ?」

「どのみち、受けるしかあるまい」

「ほーん?嫌いじゃないぜ。そう言うの」

そう言って満足げな笑みを浮かべる。

「じゃ、改めて俺からの要求だ。ちょっとダンジョン攻略を手伝ってくれ」



名前 葉月朔夜

役職 探し人

レベル23

クラス 侍

クラス特性 一騎討ち

ステータス

生命 13800(600)

魔力 18400(800)

筋力 27600(1200)

耐久 13800(600)

瞬発 13800(600)

総合能力 87400

合計成長値3800

固有スキル

月纒

スキル

直感レベル3

刀術レベル3

魔法剣レベル1

火魔法(弱)レベル1

水魔法レベル2

派生スキル

歩法レベル4

走法レベル4

構えレベル4

抜刀レベル4

居合いレベル3


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