12月20日 大倉集古館

 本日は東京六本木、アメリカ大使館の隣にある大倉集古館に行ってきました。ホテルオークラの"おおくら"で、かのホテルの敷地内にあります。

 「信仰の美」ということで主に仏教美術の展示でしたが、神仏習合の始まりと終わりまでがコンパクトにまとまっているとても分かりやすい展示でした。


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 室町時代の作「空也上人絵伝」では、空也上人の逸話がきれいな彩色の筆で描かれておりました。空也が山で修行中に仲良くなった鹿が殺され、偲んで角を持ち歩くようになり、毘沙門天の導きで出家したあとは松尾明神に鉦を貰い、あのスタイルが確立したという流れが一目瞭然。


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 空也上人と松尾明神の関連については上人が皇族の血を引いていたため、という考察もございます。けど、どうなんだろうこの辺り( ゚ω゚)

 当時、布教するにあたって「仏教+神道」が必須の組み合わせだったから、自分と関連する神社の神名を借りた、と逆から考えることも。


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 鎌倉時代の作「普賢十羅刹女像」は、普賢菩薩の周りに羅刹が集まる絵画なのですが、羅刹は皆女性で華麗な十二単を纏った美女ばかり十人。女人成仏もしくは女人往生の祈りのために描かれたものだということです。なかなか面白く拝見しました。そうか、当時の宮廷女性は十二単だよね、って。


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 そして国宝の普賢菩薩騎象像。……牛を元に造形したな? などと頭の片隅で思いつつ、鎌倉時代の木造が当時の絵具の色も微かに残しつつ、多少の修復はあってもここまで保存されていることに驚き、そして正面から拝観したときは普賢菩薩の美しさに魂、抜けましたわ。


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 展示には今も有名な神社、春日大社由縁のものも展示されておりました。

「春日鹿曼荼羅」は春日明神を現わす白鹿がメインの室町時代の絵画で、大きく広がった角の間に曼荼羅が描かれているという"The 神仏習合"な一品です。


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 そして懸仏も2つ展示されており、神道の祭祀で使われていた鏡に仏像の装飾を施したものだとのこと。弥生~古墳期の三角縁神獣鏡、その行きついた先が懸仏ということか( ゚ω゚)エキゾチックジャパーン


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 最後が幕末期の曼荼羅図。復古調の絵画を得意としていた冷泉為恭は絵画の資料を貸してもらうために佐幕大名に近づいたため、攘夷派の長州藩士に斬り殺されるという。

 曼荼羅と云いつつ仏様の周囲には狩衣姿の神像が多く配置されているという"神仏習合"文化の極みの作品でした。


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 仏教伝来から幕末に攘夷御免で斬り殺される絵師にいたる時代の流れを堪能させていただきました。なんか美術鑑賞とは異なる視点ですが、展示されていた作品は美術品として、また考古資料として非常に評価の高い物ばかりであったことを申し添えておきたいと思うのです。


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