第4話

 ベットの横ではお母さんが涙を流しながら静かに座っている。僕が目を覚ましたことを知ると、彼女の目はまるで生き別れた息子を見るような目に変わった。そして、勢いよく 「よかった!」と言って抱きついてきた。高校1年生にもなって親に抱きつかれるとは思ってなかったけど、そのぬくもりのおかげで、ここが夢でなく現実だと理解できた。


 「大丈夫? どこか痛くない? 急に倒れたって聞いて心配してたのよ?」


 いきなり抱きつくのをやめたと思ったら、お母さんから質問のオンパレード。寝起きの息子の肩をがっしりつかんで、目を見開きながら言っていた。


 「うん。問題ないよ。心配かけてごめん」


 「よかった。このまま意識がないままだったら、入院だったのよ?」


 「え? そんな深刻だったの?」


 「そうよ。まあ、お医者さんは体や脳には全然異常がないって言ってたけどね」


 その後の話で、教室で倒れてからすぐ病院に運ばれたこと。それからこの時間までずっと意識がなかったことを伝えられた。ただ、僕が突然ああなった原因については、よくわからなかったらしい。


 「あ、そういえば、ともやはどうなった?」


 「え?」


 僕は謎の人影に襲われたことや、夢で見たものを全部話した。お母さんはわりと真剣な顔でその一部始終を聞いた。まあ、これまで散々不可解な出来事に遭遇してるから、それも当然なのかもしれないけど。


 「・・・・・・わかった。ともや君の家に電話してみる」


 そう言って、お母さんはスマホを出して、ともや宅の連絡先を調べた。けど、それを見た瞬間、彼女の表情は変わった。まるで幽霊でも見たかのようだった。


 「ねえ、連絡先が、消えてる」


 ともやはあれ以来、家族ごと姿を消していたのだった。


 かずのり、ともや。二人の友達が、たった数日で消えてしまった。

 


 


 



 



 


 

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