第6話・ガラス城の男の娘の王子と、いばら城の眠りの王子……そして【とりあえず完結】最終決戦

 アリスとドロシーに別れを告げたモモ太郎とガラガラドンの一行は、カグヤとプスプスがいる竹林に向かった。

 竹林の入り口に到着したモモ太郎は、躊躇ちゅうちょなくズカズカと竹林に入る。

 モモ太郎の足が竹林内に張り巡らされた、細い釣糸を切るたびに仕掛けられていた矢が飛んでくる。

 飛んできた矢を、鍛えた鋼鉄の筋肉で弾き返すモモ太郎──竹林に隠れているカグヤの声が、笹の葉が擦れ合う音に混じって聞こえてきた。

《そちらから、トラップの竹林に入ってくるとは誘い込む手間がはぶけた……痺れ薬を塗った矢には、返しは付いていないから安心しろ》

「ふんむっ、この程度の矢ではオレの皮膚を貫くことはできない」

《では、これではどうかな》

 三日月型のブーメランがどこからか飛んできて、竹を切断する。

《三日月ブーメランにも、痺れ薬は塗られている》


 竹林の別の場所では、中と小のガラガラドンが、プスプスが繰り出す高速の突きに苦戦していた。

「ニャ、オレさまの突きはまだまだ加速する……音の速度を越えて、光りの速度を越えて、空間さえも越える……それそれ」

 戦斧で防ぐガラガラドン、小ガラガラドンが楽しそうな口調で兄の中ガラガラドンに言った。

「お兄ちゃん、この人強いね」

「あぁ、味方になってくれたら、頼もしいな」


 モモ太郎は防戦一方で、カグヤの痺れ矢と三日月ブーメランの攻撃に耐えていた。

 モモ太郎と一緒にいる温羅も、金棒を風車のように上下左右振り回して矢を防いでいる。

《なんて、丈夫な体だ……こんなヤツがいたとは……ん? あれは?》


 カグヤの攻撃が止まる。

 竹林に隠れていたカグヤはカグヤに会いに竹林に来た、幼い織姫がいるのが視界に入った。

 織姫の前には黒いドレスの女……何やら会話をしていた数秒後、織姫の体が黒い霧に包まれる。

 思わす叫ぶ、月ノ夜カグヤ。

「リュアル! 織姫には手を出すな! そういう約束だろう!」

 リュアルの女は去り、成人女性姿に変わった織姫が竹林に横たわる。

 隠れていたカグヤは飛び出して、倒れている織姫のところに駆け寄って介抱する。

「織姫!」

 カグヤの声に、意識を取り戻した織姫が言った。

「あなた、誰ですか? 彦星さま……彦星さま、どこ」

 成人した織姫は、彦星を求めてカグヤの手の中から去っていった。

 四つ這い姿勢で愕然とするカグヤ。

「そんな……わたしの可愛い妹の織姫が別の男のところに……そんな、そんな……うおぉぉ」

 立ち上がったカグヤが叫びながら言った。


「モモ太郎! ガラガラドン! わたしを仲間に加えてくれ頼む! 織姫を奪ったリュアルを、ギタギタに切り刻んでやる」

『月ノ夜カグヤ』と『プスプス』が仲間に加わった。

 ついでに『アリス』と『ドロシー』も仲間に加わった。


 向かい合うように隣接しているクリスタルな西洋城と、いばらに包まれた眠りの西洋城──モモ太郎とガラガラドンの一行は、後から追いつくと告げた。カグヤたちより先に、繊細な灰かぶり王子『シンディ・レラ』と、眠りの王子『眠兎みんと』の城に到着した。

 中ガラガラドンが言った。


「さて、これは二手に分かれて仲間になってくれるように説得した方がいいかな……誰がどっちの城に行く?」

 その時──砲撃音が聞こえ、ガラスの砲弾が続けて、モモ太郎とガラガラドンがいる場所に飛んできた。

 地面に激突した砲弾は、輝く粒になって消える。

「あぶねぇ! いきなり撃ってきやがった」

 牙を剥いてガラスの城に向かって走り出す、三頭一身のイヌ、サル、キジ。

 追いかける温羅。

「勝手に走って行ったらダメだよ、イヌさん、サルさん、キジさん」

 モモ太郎も走り出す。

「しかたねぇな、オレこっちの城に行く……いばらの城の方は頼む」


 ガラスの城の砲台テラスでは、アイドルコスチュームのようなクリスタル繊維で作った衣装を着た。

 少し気弱そうな陰キャラで、男のイケメン……『シンディ・レラ』が、城に向かって走ってくる、モモ太郎たちを見て動揺していた。

 レラは持ってた紙に、さらさらと文字を書く。

《こっちに来るな! リュアル》


 レラは次々と、クリスタルな砲台を作り出して砲撃する、砲弾を発射した砲台は砕けて粒に変わる。

 レラはガラスのような結晶で、刀剣類の武器から砲台のような大型のモノまで作り出すコトができた。

《来るな! 来るな!》

 レラは筆談で自分の意思や、その時々の感情を伝える。


 いばら城の寝室では、ガラガラドンが眠りながら、武具の三節棍を振り回す眠りの王子『眠兎』の相手をしていた。

 パジャマ姿で、寝惚けている感じの睡眠拳で攻撃してくる、母性本能を刺激するタイプのイケメン王子、眠兎の足元からは時々、いばらの蔓が出てくる。

 そのつるは敵に絡みつき、相手の動きを止める。


 眠兎が眠りながら言った。

「ぐうっ、ボクの百年の眠りを邪魔する君たちは、リュアル? ボクの眠りを邪魔しないで……ぐうぅ」

「ちがう、オレたちはリュアルじゃない。仲間になって一緒に戦って欲しい」

「ぐうっ、なーんだ、敵じゃないのか……うん、いいよ。二度寝してから着替えて仲間になってあげる……だから、もう少しだけ寝かせて」


 ガラス城の城内では、斧と槍を組み合わせたような武器〔ハルバート〕をガラスで作り出したレラが。

 侵入してきたモモ太郎たちを威嚇していた。

 モモ太郎が言った。

「落ち着け、オレたちはリュアルじゃない……リュアルを倒すために、その力が必要なんだ……一緒にリュアルを倒そうぜ」

 サラサラと筆談するレラ。

《本当にリュアルじゃないの?》

「ああ、本当だ」

《本当に、本当に?》

「おまえも、くどいヤツだな」


 温羅童子が、モモ太郎の前に一歩進み出て言った。

「ボクと握手して友だちになろう、一緒にリュアルをやっつけよう」

 温羅の手を握るレラ。

《友だち……仲間》


 こうして『シンディ・レラ』と『眠兎』がチームに加わって仲間になった。



 最終決戦の場【とりあえず完結】


 集結した童話国の猛者たちの前方には、リュアルの顔を形作る黒い雲が渦巻いていた。

 リュアルが言った。

《まだ、あらがうか……偽りの童話と昔話の者たちよ》

 モモ太郎が、拳を握り締めて、力強い口調でリュアルに言った。

「うるせぇ、オレたちの物語はオレたちの手で作る。決まっていない未来の物語と結末もオレたちが自分の力で作る! 消え失せろ、夢と希望に恐れを抱く、三次元人の思念リュアル」


 アリスが、薬ビンの飲み薬で巨人化して、巨大な大ガラガラドンと一緒にリュアルに向かって進撃していく。


 ドロシーが空中に向かって作り出した、黄色いレンガの道を走りながら、竜巻を何本も生み出す。


 リュアルと童話国の者たちの、最終決戦が開始された。


~おわり~とりあえず



※『原作』コンテストなので、雰囲気と基本的な設定だけ伝わればいいと思ったので(募集規定文字数の一万文字もなんとか越えられたので)ここらでチャチャと【とりあえず完結】しました

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男ども殺し合うより称え合え 楠本恵士 @67853-_-

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