第6話 置き去り

「これからどうしよう」

 バスガイドは泣きながら霊能者に言った。何だか身内に話しているみたいだった。

「知らないよ」

 雰囲気がまるで親子みたいだった。

「あの人どうなっちゃんたんだろう・・・」

「知らないよ。死んじゃったんじゃない?」

 俺は黙っていた。手元にあるのは懐中電灯だけだった。

「あの・・・ごめんなさい。私たち親子で・・・」

「えぇ!霊能者じゃないんですか?」

「ええ。ほんとすみません。こんなことに巻き込んじゃって」

「でも、すごい当たってましたよ!」

「なんか霊感みたいなのがあるんですよね・・・お金取れるほどじゃないけど」

 お母さん、すごいよと俺は励ましたくなった。

「ここは本物の殺人現場なんですか?」

「はい・・・私たち〇〇に住んでるんですけど、近所でも有名な心霊スポットなんです。バスは校庭に停められるし」

「無許可で?」

「はい・・・最近、コロナで経営がやばくて、嘘ついちゃって・・・でも、みんな勝手に入ってますから」

「で、今日のツアーは何人集まったんですか?」

「2人です。一人は前日キャンセルになってしまって。江田さんお一人だけで・・・」

「でも、さっき、今日は満員御礼って言ってたじゃないですか」

「あれはお一人だけだったから、冗談で言ったんですよ」

「なぜ、籍が3列目だったんですか?」


「1列目が私たちで、間を空けたので・・・」

「じゃあ、後は空席?」

 2人は頷いた。

「じゃあ、あとは・・・・」

「誰も乗ってませんでしたよ・・・」

「何でバスがあんなに大きいんですか?」

「うちの会社の唯一のバスで。他の車両を使うと無許可になっちゃうんで」

「ああ・・・そういうことですか」

 

 俺のテンションは最低まで落ちた。いなくなった運転手。つながらない携帯。どうしたらいいのか・・・。


 廊下からヒタヒタと足音が聞こえて来た。

 

「消しましょう・・・懐中電灯」

 俺は言った。

 俺たちは小さくなって、その足音が通り過ぎるのを待った。しかし、足音はその教室に入って来た。


 ヒタ、ヒタ、ヒタ

 パタ

 ミシ、ミシ、ミシ


 足音は俺たちの周りを回っていた。

 グルグルと何度も。

 俺は恐怖で発狂しそうだった。


 俺は目を瞑り、小さくなっていた。

 そして、いきなり、

 頭から袋を冠せられた。


 いやだ!殺される・・・


 恐怖で気を失ってしまった。

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