第5話 ハーフムーン

「投降しないと良いんですが……」

 指揮卓に向かう神酒は後ろに立つ水島に振り向きもせずに言った。

「4人で8人以上を捕虜にするのはキツイのではないでしょうか?」

 完全に抵抗の意思がない相手と思い込む訳にはいかない。投降すると見せかけて不意打ちを狙う可能性は常に考えなければならない。特に自爆をしてでもと考えるような相手は要注意だ。そして彼らは逃走が難しい仲間に止めを指すような連中だった。

 例え反射速度を促進させていたとしても、そう言った相手に対しては被害を完全に防ぐことは難しいことに思えた。

「その心配は杞憂だろう。投降できるような人間を送り込んではいないはずだ。大方、家族を人質に取られているなどの事情があるはずだ」

 任務の目的を考えれば安心できた。同時に、胸の奥に湧き出す暗澹たる思いに閉口する。

「ウクライナに攻撃させられた”共和国”の強制徴募兵と同じですね」

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