第4話魔王様はゲームマスターでした。
(なるほど……トールは、私と境遇が似ていたから、同じ目をしていたのね……ん?)
私は、トールがあの頃の私と同じ目をしていた訳を知り、納得する。そして、あることに気がつく。
(トールの話が本当だということは、魔王を20000年も務めた経験がある人物。なら、戦闘経験も豊富ということ……もしかしたら、最近の悩みの種である、あのゲームについてもいい意見がもらえるかもしれない)
私の趣味は、ゲーム。家には、ゲーム専用の部屋がある。
その部屋には、旧作から最新作のゲームソフトまで揃っている。ゲーム機も歴代の機種が揃っている。まさに、私の楽園!
そんなゲーム大好きな私は、最近、RPG「ファイナルストーリー」という6年前に流行ったゲームに出てくるサイドクエストの「Le.150のべ〇モスを討伐せよ」というものに苦戦している。
「ファイナルストーリー」とは、世界を管理するクリスタルに選ばれし者が、クリスタルを奪い、世界征服を目論む悪の元凶から世界を守るというストーリーのゲーム。
キャラは、レベル50まで上がり、最大HP MPは999(攻撃力、防御力も上限は同じ)
本筋のストーリーのラスボスのレベルは50(HP MP999、通常攻撃300、特殊攻撃(魔法などによる攻撃)900、ガード不可攻撃600、だが、回避はできる)
それなりに強い相手となっている。
対してサイドクエストの「べ○モス」
le.150 HP MP99999、通常攻撃9999、特殊攻撃99999、ガード不可攻撃99999となっている。弱点属性の火魔法による攻撃は100ずつ減っていく。
私のキャラ、le50、HP MP999、通常攻撃999、特殊攻撃999
となっている。
本筋は問題なくクリアしているのだが、唯一このクエストだけクリアできていない。
べ○モスとは、体長5メートルくらいのライオンといった感じだ。戦うフィールドは、30メートルくらいの広さの円形に遮蔽物などはなく一対一で真正面から戦う。
攻撃は、体当たり、引っ掻き、噛みつき。(攻撃力は9999)たまに、噛みつきと見せかけて体当たりをしてきたりとフェイントも織り交ぜてくる。
その攻撃を掻い潜り、HPを4分の1削ると、特殊攻撃の放電が飛んでくる。(攻撃力99999)
放電は、フィールド4分の1ずつを順番に攻撃してくる。これをA面からD面とした時に、A面への攻撃が終わると0.5秒のタイムラグがあるので初撃をB面によけたらすぐにA面へと回避する。
そのまま一周走り続けて避ければいいのでは?と思い実行したことがあるのだが、それをやるといきなり全方位へガード不可の雷が頭上から落ちてきて、ゲームオーバーになった。なので、初めにB面によけてからすぐにA面へとよけなければならない。
そして、ガード不可攻撃として、HPを半分削った後からは電を纏った攻撃をしてくる。その中には、引っ掻きなどの通常攻撃をすると見せかけてから放電攻撃をしてくるパターンもあるらしい。
当たり判定もシビアなゲームなので、かすったり少しでも攻撃に触れていたら即ゲームオーバーとなる設定になっている。
「あなたの話はわかったわ。好きなだけここにいてくれて構わないから、魔王としてのあなたの力を貸して!」
私は、トールの袖を掴みゲーム部屋へと連れて行く。
「む?なんだこの部屋は?」
「それは後で説明するから!私が今から戦うモンスターとの様子を見て、あなたの戦闘経験から意見があれば教えてほしいの!」
私は、べ○モス戦の前で止めてあるゲームをスタートさせる。
前述で挙げたように、べ○モスの攻撃を避けて距離をとり、火魔法や火属性付与武器で削っていく。
相手の弱点属性、攻撃パターンなどを説明しながらプレーする。
いつものように4分の1まで削ったところで放電攻撃が飛んでくる。
私は、実演を交えながらA面への攻撃を避けてB面へ回避する。そして、タイムラグの間にA面へと移動するが、いつものように少し掠ってしまいゲームオーバーとなってしまう。
「と、こんな感じでいつもやられてしまうの!見ていて何か感じたことなんかあったりする?」
「うむ。この写っている怪物を倒せば良いのだな?お前の手に持っているものも見ていたし、モンスターの動きなども観察してある程度把握したから一度やらせてみてくれないか?」
「へ?いいけど……」
私は、トールにコントローラーを渡す。
「確かこのボタンだったな……火の玉が出るのはこのボタンで。この手前のボタンが剣による攻撃だったな」
トールはべ○モスと戦う前に軽くコントローラーを操作して動きを確かめる。
その操作の時点で初めてプレイする人とは違った滑らかなコンボを決めたりしていた。
(嘘でしょ……プレイ時間5,000時間の私よりうまいんだけど……)
「よし。すべて把握した。では、猫退治を始めよう」
躊躇うことなくべ○モスle.150に戦いを挑む。
「さて、まずは突撃だな。大きな敵を相手にする時はまずは懐に入る」
べ○モスの引っ掻きを回避して、そのまま懐へと入り込み、剣で5連続で攻撃をヒットさせる。
そして、背後に周り体当たりを回避する。
次に火属性最強魔法の「メテオストライク」を発動し、遠距離から200のダメージを負わせる。
距離をうまく使い相手の攻撃を避けて背後を取り攻撃を当てていく。
(……)
本編を500時間でクリアしてからべ○モスのHPを4分の1削れるようになったのはプレイ時間3000時間超えてからだった。
なのに、この魔王歴20000年のベテランはプレイ時間たった20分で4分の1を削ってしまった。
言葉が出ない。
その後も放電の攻撃も初見ではないとはいえ容易く避けてどんどんべ○モスのHPを削っていく。
そして、追い詰められたべ○モスは、本気を出す。
全身に雷を纏いガード不可攻撃を繰り出す。その攻撃も雷を纏ったことで通常よりも倍以上に速くなっていた。
一撃でも当たればゲームオーバーの攻撃を、トールは全て避けてダメージを与えていく。
べ○モスは、残りHPが残りわずかになると最後の足掻きとしてランダムに雷を頭上から落として、時折体当たりからの放電攻撃をしてくる。
(うわぁ……こんなの無理だわ……空から雷が降ってきて、それを避けながらべ○モスの放電や噛みつき、たまに織り交ぜてくるフェイント攻撃を避けながら攻撃しなくちゃいけないのは……さすが伝説のモンスター。プレイヤー100万人以上が挑んで1人しか撃破したものが出ないわけだ……)
それでもトールは全てを余裕でかわし続け、べ○モスを倒してしまった。しかも40分くらいで。
(確か。唯一撃破した事のあるプライヤーがべ○モス撃破に要した時間は8時間だって噂があったような……)
「採用!改めて今日からよろしくね!」
「うむ。よろしく頼む」
「それよりどうだった?ゲームっていうんだけど楽しかった?」
ゲームをするまで、まだ暗い顔をしていたトールは、ゲームをプレイしている最中に何度も笑っていて、楽しそうにプレイしていた。
「とても興味を惹かれたな。初めて心が踊った……ただ、俺ならもっと困難なモンスターをつくることができると思った」
「まあ、魔王を20000年もやった経験があるからね」
「……決めたぞ!俺はゲームとやらを作ってみることにした!誰もクリアできないゲームを作って見せる!」
(なんかよくわからないけど。とりあえずやりたいことが見つかったみたいでよかった)
「なら、この部屋には他にいろんなゲームがあるから一緒にやってみない?」
「いいのか?」
「ええ!まずは格闘ゲームというものをやってみましょう!それで、負けた方は明日から1週間、家事を担当するということで」
「うむ。だが、俺はこの家の使い方を知らないから教えてくれ」
「そこは任せて。ちゃんと教えるから」
「頼む」
それから私とトールは一度練習のために対戦して、2回目に本番ということで勝負した。
結果プレイ時間1,000時間を超える私は、たった数分しかプレイしていないトールに完全敗北した。
(くそ!真正面から戦ってしまった!今度対戦する時は1,000時間ひたすら鍛えたハメ技を見せてやる!)
その後はトールにネットや家の家具の使い方などを教えて終わった。
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