六つ目の話

【死をもたらす夢の女王】



 山梨県内の小中学生の間で二〇一七年頃から流行っている都市伝説がある。

 SNSで情報を募ったところ、青森県からも同様の都市伝説を聞いたという情報が二件寄せられた。

 山梨と青森以外の都道府県でこの都市伝説を聞いたという報告はまだない。


 内容は、何の前触れもなく、夢に黒い長髪の(巫女やお雛様を思わせる古めかしい髪形とも言われる)白無垢のような格好の女性が現れることから始まる。

 夢の中では彼女と二人で街を歩いたり、丘の上から森を眺めたりと楽しく過ごすらしい。

 まるで「ローマの休日」のアン女王に指名され、彼女の傍にいることを特別に許されたような幸せな気分を味わいながら夢から醒めるが、一度彼女の夢を見ると、その後何度も似たような夢を見るようになる。


 ※アン女王に例えるのは主流ではない。様々な漫画・アニメのキャラクターの他、実在のアイドルなどにも例えられている。おそらくほとんどは噂に付いた尾びれではないか。


 この夢は男子も見るが、圧倒的に女子が多い。

 夢の中に登場する巫女のような女性に名前はないが、夢を見たものは一様に「女王」と表現する。


 女王の相貌について。大半は美醜について語られないが、能面のようなすっきりした顔・狐のような顔という説もあった。

「目覚めると女王の顔は忘れている」というケースも山梨・青森からそれぞれ一件ずつ。


 実はこの夢を見るものは近々死ぬ定めなのだ、という結末。

 女王の夢を見た小中高生が実際に亡くなったと確認できたケースはなく、あくまで噂の域を出ない学校の七不思議的な怪談と推察する。

 どのようにしてこの都市伝説が生まれたのかルーツを調査し、いずれ記事にまとめたい。



  ※ ※ ※



追記メモ


 そういえば、女王を「美しい」と表現しているのは先日お会いした森田さんだけのように思う。

 以前に父が森田さんから話を聞いたときも、やはり「ウシオさん」について一貫して美しかったと語っている。


 森田さんに、この都市伝説について寄せられた情報の中から気になるものがあったかと聞いたら「女王は街のどこへ行きたがるのか知りたい」との返答。取材ノート参照のこと。

 死をもたらす女王の目的や目指す場所を探るのは面白そうだと思ったが、関連性探しは面倒なので、もうしない。


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