第42話 中夜の秘密


少年は恋を知らなかった


誰かを好きになれることを知らず


同じ年頃の少女を見ても何も思わなかった


ただあるのはあの人への


歪んだ想いの欠片だけだった


あの人があの人ならば


少年は少年として何を思うのだろう


夜は温かく冷たかった


夜は人知れずこそばゆかった


少年は夜に旅をすることに決めた



いつまでも夜の世界へと旅をしたい


それが少年の夢になった


夜に秘密を探るとき


少年はたいてい褥で雫を流した


火照るような身体の熱さに


悶えながら思うのだった


母さんはどうして、僕を憎むのだろう、と



少年に朝は来ない


永遠に夜が少年を襲うのだ、と

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る